『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3』(1990)いよいよ完結する第三弾!期待するぜ第四弾
オリジナル版『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が公開されたのが1985年、続編である『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2』が満を持して公開されたのは1989年。そして完結編となる第三作目『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3』が公開されたのは1990年になります。
ということは撮影自体は2も3も同時進行だったのか、それとも脚本を書いていくと物語を終わらせるには四時間以上がどうしても必要であり、ユニヴァーサルが遊園地であるユニヴァーサル・スタジオの目玉としてもできるだけ来場見込み客の興味を引っ張ることが不可欠だったために第二作目だけではなく、完結編が必要だったのだろう。
平凡な作品ならば第三作目まで持たないでしょうが、完璧な1985年のオリジナルと続く第二作目の奇跡的なレベルの高さがあったので、映画ファンもワクワクしながら一年間を待ち続けたに違いない。
さすがに物語にケリをつけねばならないので強引な纏め方もありでしょうが、完結編ではクリストファー・ロイドのラブコメSFにもなっていて、エキセントリックだったクリストファー・ロイドの人物像に膨らみを与えています。
今回、DVDでの視聴だったためにちょっと気になったのが対訳でした。マイケルが19世紀末のアメリカ西部にタイムトリップした直後に襲撃されたと勘違いするシーンがあります。そのとき彼は「インディアンだ!」と英語で叫びますが、邦訳では「ネイティブ・アメリカンだ!」とやってしまう。
差別用語になっているのは分からないでもないですが、あの状況でインディアンだと叫ぶ彼が長ったらしくネイティブなんちゃらだと言うわけがないし、実際に言ってない。
楽しいシーンをあえてつまらなくするのは邦訳の責任が重く、某有名な字幕翻訳をつける女史ともどもただ仕事が舞い込んだから、配慮して和訳をつけていますというような型にはまった和訳はやめて欲しい。
この映画で印象的なのはクライマックスでの蒸気機関車での落下事故とタイムワープ時間のサスペンス、冒頭の馬車からのクララ救出によって変わってしまう未来と恋の行方、マイケルの荒野の決闘シーンでしょう。
そして個人的にはお祭りシークエンスでのZZトップがぶちかますちょっとイイ感じのカントリー&ウェスタン風のライブです。このライヴ・シーンは本当に大好きなシーンです。
トレードマークの一度見たら忘れられない長いひげとサングラスで人気があったZZトップの出演は第一作目にバンドの審査員として出てきたヒューイ・ルイスのカメオ出演と対になっていて、かなり楽しく見ていました。
C&Wの名曲と共に楽しく奏でられる『ダブルバック』のカントリー・ヴァージョンは感涙モノです。楽しそうな村祭りシーンで演奏されるこの曲とクリストファー・ロイドのダンスを見るだけでも十分に価値があります。
映画とは関係はないのですが、1980年代後半から90年代初頭にかけて大好きだったインスト曲がいくつかあり、ジプシー・キングス『インスピレーション(ドラマ鬼平犯科帳のエンディングで流れるギター曲。)』、ジョージ・ウィンストン『あこがれ/愛』、東京スカパラダイス・オーケストラの『君と僕』などともにこの『ダブルバック』が大好きでした。
ジプシー・キングスは大学生のころ、1989年の夏休みに来日していたのを福岡サンパレスだったと思いますが、実際にライヴで観ました。
事前にアルバム『ジプシー・キングス』で勉強していましたが、生演奏で聴く『ジョビ・ジョバ』『バンボレオ』『マイウェイ』『インスピレーション』はただただ圧倒的でライブ後の長浜ラーメンとともに夢のような時間が過ぎていったのを覚えています。
ジョージ・ウィンストンの『あこがれ/愛』は今でもCMで耳にすることがあります。80年代当時に設立されたウィンダム・ヒルの代表的な作品だったと記憶しています。
たぶん一番売れたのもこの曲が入っているアルバム『オータム』でしょう。大昔に買ったCD(何度か再発されているようです。)を今でもたまに聴くこともあります。
東京スカパラダイス・オーケストラの『君と僕』は1989年にメジャー・デビューした彼らのファースト・アルバムのラストを飾る楽曲でアコーディオンと口笛のみで奏でられるどこか哀愁が漂う名曲で、その頃のオールナイト・ニッポンのジングルだったり、テレビ番組の挿入曲だったり、CMでもたまに耳にする機会があります。
今でも彼ら東京スカパラダイス・オーケストラのデビュー盤『スカパラ登場』を持っていて、ちょくちょく『君と僕』を聴いています。YouTubeにはオリジナルの他にライブでの演奏シーンがアップされています。
その中でもスポットライトを一身に浴びて、口笛とアコーディオンのみで大観衆を魅了する映像があり、思わず鳥肌が立ちます。リンクはそちらのライブ映像を貼っていますので是非お聴きください。嬉しくなりますよ。
話は逸れましたが、音楽や音響が映画に与える影響は思っている以上に大きく、このシリーズでのアラン・シルヴェストリの貢献も非常に大きい。
それ以外にも第二弾での『荒野の用心棒』を見るシーンが伏線になっている西部劇の決闘シーンでのマイケル・J・フォックスが腹に仕込む鉄の防弾チョッキが楽しいですし、マイケルとクリストファーがシリーズの重要なアイコンである時計台に使われる大きな時計の前で撮る記念写真の印象も深い。
なんだかんだいっても5年に渡ってぼくらを楽しませてくれたロバート・ゼメキス監督、クリストファー・ロイド、そして後にパーキンソン病を患い、キャリアを伸ばせずに制限を受けたマイケル・J・フォックスに感謝したい。
「未来は白紙だ!」とクリストファー・ロイドは最後にマイケルにエールを送りましたが、いつか遠くない未来にパーキンソン病の特効薬が出来たら、すぐにマイケルを治療してもらい、2015年かさらにそれほど遠くはない未来に戻ってきてもらうような『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の第四弾を映画館で観たい。
ただ問題はマイケル・J・フォックスの健康上の問題にも増して、1938年生まれのクリストファー・ロイドの年齢が80歳を迎えようとしていることかもしれない。二人そろってはじめて楽しめるのが僕らが大好きな『バック・トゥ・ザ・フューチャー』なのです。
総合評価 75点