良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『機動戦士ガンダムⅡ 哀戦士』(1981)夏休みに観に行った思い出の映画。

 四十年間以上前、まだ幼稚園に通っていた頃、リアルタイムで毎週よく見ていたのは『宇宙戦艦ヤマト』で、当時はデスラー総統率いるガミラス側の戦闘空母、三段空母、反射衛星砲、ガミラス艦などのデザインやデスラー総統の声(伊部雅刀。スネークマン・ショウや『子供たちを責めないで』もヒットしました。)が大好きでした。  そして小学生になってもヤマトは依然高い人気を誇り、プラモデルもたくさん買いまくり、緑色の三段空母を三組買って、三色に塗り分けていました。あの戦いって、なんだかミッドウェイみたいです。  冬休みや夏休みになると劇場版が繰り返しテレビ放映され、1979年の劇場版『さらば宇宙戦艦ヤマト』と沢田研二のテーマソングが大ヒットしたころには頂点を迎えていました。しかし小5に上がる冬に異変が起こりました。
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 それが『機動戦士ガンダム』の再放送だったのです。初回放送ではなく再放送版が関東地方の夕方に始まり、こどもたちを熱狂させていきました。  なぜ、名古屋を中心とする中京エリアでは支持されていたガンダムが他の地方で受け入れられなかったのかは分かりませんが、ぼくらが小5の時に爆発的な人気アニメとなり、バンダイが発売した1/72と1/144スケールが主力だったプラモデルがあちこちの模型店やオモチャ屋さんで品切が続く異常な状況になり、新作プラモの発売日には小学生が学校をズル休みして買いに行くなどしてかなり問題になっていきました。  ガンダムシャア専用ザク、量産型ザク、強化新型グフ、そして1/72のドム辺りまではまあまあ普通に発売日を過ぎても買えましたが、それ以降のものは予約しないと買えなくなっていきましたし、予約してもなかなかぼくらの町の小さな模型店には商品も入荷しなくなって、大きなディスカウント店にしかガンダムは在庫がなくなりました。
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 それでも子供たちのネットワークは幅広く、他の学校の野球仲間とかとも連係して、お互いに欲しいものがどこにあるかをやり取りしていき、ゲルググやらジオングモビルスーツ、ビグロやビグザムなどのモビルアーマーを手に入れていきました。  『プラモ狂四郎』などの漫画の影響からか、水陸両用ゴックの肩を削り、可動するようにしたり、シャア専用ゲルググの色を塗り替えて、量産型ゲルググにしたり(ズゴックも赤を緑にしたり、緑を赤にしてました。)して楽しんでいました。  プラモは関節の動きや武器の長さなども決まっているので、ヤスリで削ったり、固定したり、ドムのヒート剣を背中から抜くためにドライヤーの熱で曲げたりと色々改造を楽しみながらコレクションしていきました。
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 そんなぼくらが楽しみにしていたのが映画版機動戦士ガンダムで、小5の春休み(小6になる手前です。)くらいにやしきたかじんが静かに歌う『砂の十字架』が主題歌だった『機動戦士ガンダム』が上映され、小6の夏休みには『機動戦士ガンダムⅡ 哀戦士』が公開されました。  もちろん初日に観に行きましたが、さすがに立ち見だったので、二回ほど見たあとにパンフレットを購入してから帰りました。劇場版公開のおまけの特典でセル画をもらえました。ちなみにオスカーとマーカーのオペレーターだったのであまり嬉しくはなかったのを覚えています。  しかも友人はシャアが写っているセル画をもらっていて、羨ましかったのを思い出しました。映画館は当然ながら、子供ばかりでしたが、当時は大学生などもいたのだろうか。
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 物語的にはアムロニュータイプとして超人化する前の人間らしさや挫折しながら成長していく過程を描いている中盤だったこともあり、青春群像でもある。ハモンやマチルダに惹かれるアムロ、ミハルに惚れるカイのエピソードがあったり、テレビ版ではセイラさんやミライさん(この劇場版にもあり。)、フラウの入浴シーンが出てくるのも思春期の彼らを描くうえで必要だったのかもしれない。  またシリーズでも特に人気があるキャラクターで永遠のライバルといえるシャア・アズナブル職業軍人の鏡で中年の星であることがこの年齢になってはじめて解るランバ・ラル大尉と内縁(なんかエロい!!)の妻クラウレ・ハモン(なんか画像を見るとE-GirlsのAmiちゃんに似ている気がします。)の甘いも酸いも知り尽くした妖艶さ。
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 アムロが憧れた年上の美女マチルダ・アジャン中尉、そしてキシリア・ザビが送り込んだルウム戦役の歴戦の勇士である黒い三連星(ガイア、マッシュ、マチルダを殺したオルテガ)など個性的な登場人物が物語を盛り上げます。  個人的にはなんといっても映画版主題歌『哀戦士』の印象が強く、これが入っているからというのが最大の理由で劇場版では中だるみ感もあるのは承知でこれが好きなのです。すでに亡くなった井上大輔が歌うこの主題歌『哀戦士』が大好きで、当時はシングルレコードも購入し、毎日聴いていました。  荒野を走る死神の列 黒く歪んで真っ赤に燃える  死にゆく男たちは守るべき女たちに  死にゆく女たちは愛する男たちへ  子供の頃に好きだったのはシャア少佐とセイラ・マスのダイクン兄妹、アムロ・レイでしたが、今ではミライ・ヤシマ、ドレン中尉、ランバ・ラル大尉、黒い三連星ハヤト・コバヤシドズル・ザビに変わっています。  まず女性キャラですが、主な女性キャラとしてはフラウ・ボウセイラ・マスミライ・ヤシマララァ・スンマチルダ・アジャン、クラウレ・ハモン、イセリナエッシェンバッハキシリア・ザビ、ミハル・ラトキエ、ドズルの妻ゼナらを挙げられます。
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 昔は凛とした美女のセイラ・マスや大人の色気が漂うマチルダ・アジャンに惹かれましたが、大人になるとフラウ・ボウの優しさやミライ・ヤシマの包容力、ハモンさんの愛情の深さにヤラレるようになってきています。  最愛の男を失ったハモンの悲痛な呼びかけに呼応し、隊の誇りとともに特攻を仕掛けて、見事に殉じて行くランバ・ラル隊の迫力に圧倒されます。
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 男性キャラでももともと好きなランバ・ラルにしても、部下思いで嫁を深く愛する男振りに痺れます。「わしの出世は部下たちの生活の安定に繋がる。お前のためでもある。」などという台詞はそれまでのロボットアニメでは考えられませんでした。  内縁の妻を最前線に帯同してくるラル大尉の感性は解りかねますが、ハモンは特攻前にはノーマルスーツに身を包んで出撃していますので、軍属扱いという感じなのでしょうか。  敵と刺し違えてでも一矢を報いようとするハモンの心意気には男としては惚れ直すでしょうし、愛情の深さではドズル中将とゼナとの関係と双璧でしょう。
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 黒い三連星の登場は中盤の24話『迫撃!トリプル・ドム』と25話『オデッサの激戦』のほんの2話だけでしたが、敵キャラではかなり思い出深い。テレビアニメ本編で何度も語られるルウム戦役のエピソードとはいったいどんなことなのだろうとか、レビル将軍との関係性など興味は尽きませんでした。  ガンダムに異常に詳しかった友人によるとじつはテレビ版オープニングでサイド落としによって地球に落下して大爆発を起こすカットがありますが、あれもジャブローに落とすはずのものが軌道が変えられてしまい、アメリカに落ちたのだと説明を受けました。  またこの三人の歴戦の勇士が繰り出すジェット・ストリーム・アタックの映像インパクトは衝撃的で、テレビ版でも興奮しましたが、映画館の大スクリーンで観るジェット・ストリーム・アタックも格別で何度見てもワクワクします。
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 のちに『もやしもん』『ガールズ&パンツァー』など多くのアニメ作品でオマージュ(パロディでしょうが。)が捧げられます。  何度も噂される実写版をもし作るのであれば、この哀戦士編のランバ・ラル黒い三連星に続いていく流れだけでファンは十分に納得してくれるのではないでしょうか。
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 ミハルとカイ・シデンとの悲恋やジャブローの攻防までの濃密な展開を2時間ちょっとに無理やりに詰め込んでしまったためにテレビアニメ版を全く知らずにこの三部作に突入してしまうといったい何を見ているのかさっぱりわからなくなり、楽しくないかもしれない。  それでも見どころは多く、ジャブロー攻防戦でのジオン軍モビルスーツ部隊が降下してくる一大スペクタクルシーン、量産型のジムを一撃で破壊するシャア専用ズゴックの戦い、三人のちびっ子たちの小さな防衛線での活躍やミハルとカイとの出会いなども好きなエピソードに挙げる人も多いでしょう。  スレッガー・ロウ中尉が加わってくるのもこの映画の後半です。連邦軍側のランバ・ラル的なキャラクターで、毛色は違いますが、男らしいキャラは子供心ながら、カッコいい奴だなあと思いながら、アニメを見ていました。
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 テレビアニメを何度も繰り返し見てきたぼくらは第一話『ガンダム大地に立つ!!』から第43話『脱出』までを暗記して言えるくらいになっていましたが、それを若い人に強要することは出来ません。実際、エピソードの繋がりが雑すぎて、訳がわからなくて当然だと思います。  ぼくはZガンダムの途中で脱落し、それ以降は付いていきませんでした。いわゆるこの“ファースト・ガンダム”しか知らないのでガンダムマニアではありません。ただ僕はガンダムが大好きでしたし、今でもガンダムシリーズが続いていることに驚いていますし、嬉しい気持ちもあります。  久しぶりに見ましたが、もちろん音響やアフレコなどを撮り直した悪名高い特別編とやらではなく、オリジナルのアナログ版です。良い悪いではなく、昔見たのはこのアナログ版なので、違和感なく楽しめました。 総合評価 70点