良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『チア☆ダン~』(2017)明るく、楽しく、美しく!すずちゃん主演

 正式タイトルは『チア☆ダン ~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』で相棒劇場版と同じく異常に長い。  先日の日本アカデミー賞の発表では最優秀助演女優賞と最優秀主演女優賞にノミネートされたものの惜しくも落選した広瀬すずちゃん主演のこの『チア☆ダン』が来年の日本アカデミー賞で作品賞と最優秀主演女優賞をもし取れれば、蒼井優が『フラダンス』で一気にブレイクしたように彼女にとってはターニング・ポイントになるでしょう。  可愛らしさばかりではない演技の幅は昨年出演した鬼コーチで有名な李相日監督の『怒り』で広がりましたので、少しは期待できるでしょう。  ただこの映画ではすずちゃんよりも部長役の中条あやみの美しさが際立っており、存在感も圧倒的でした。すずちゃん目当てで観に行った人もおそらく「あの可愛い娘は誰?」とググるでしょう。
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 NTTドコモ、GU、ハーゲンダッツのCMなどでおなじみのモデルさん兼女優です。じつは関西出身だったのを知り、こんなかわいい娘が大阪にいるかなあと思いながら見ていました。  まあ、映画界の話題としてはのんちゃんとして復活した能年玲奈が実写映画の主演を務め、その映画が大ヒットすれば、すべて持って行かれてしまい、広瀬すずの話題は消えてしまうでしょうが、若い人たちには可能性と時間がありますのでゆっくりと階段を上ってほしいものです。じっさい、のんちゃんにはCMが何本も入ってきているようですし、映画のオファーもあるようです。  さて、先日の日本アカデミー賞での最大のサプライズはなんといっても我らがヒーローであるゴジラがとうとう『シン・ゴジラ』で最優秀作品賞を含めて七冠を達成するという快挙でしょう。放送を見ていて、一瞬何が起こったのか分かりませんでしたが、本家の発表と違い、ジョークではなかったので嬉しくなりました。  特撮やコメディ、アニメ映画の受賞には批判的な方もいるでしょうし、興行成績が良かったのだから賞取りレースは譲れよというプレッシャーがあったでしょうが、映画表現やジャンルに貴賤はないはずなのでファンとしては素直に喜びたい。
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 ただこれによって、ゴジラ映画のハードルはとんでもなく高くなってしまったのも事実なので善し悪しはまだ分かりません。またあれだけ大ヒットした『君の名は。』がすべての賞レースでほぼ無視された格好になってしまっているのは気の毒に思えます。『この世界の片隅に』や『聲の形』(まだ見ていないので5月にDVDが出てから確認します)というライバルが強すぎたことも原因でしょう。  それはともかく、とりあえず今年度映画もボチボチと公開されはじめていますので、洋画・邦画の別なく、興味を持った作品を追いかけていきたい。  今月気になっているのはこの『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』『SING』とキングコング映画の『キングコング/髑髏島の巨神』です。キングコングに関しては『進撃の巨人』がハリウッドで実写化されたらこんな感じなのかなという興味があります。
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 映画館まで広瀬すず主演の映画を見に行くのははじめてなので周りの目は気になりますが、上映が始まれば一本の映画と向き合えます。とは言うもののスクリーンにアップで映し出される、シミひとつないすずちゃんのアップは圧倒的に可愛いですね。  初回ということもあり、チケットを買い求める観客はまばらでした。座席指定をするべくスタッフのおねえちゃんが示すPC画面に目をやるとすでに埋まっているのはわずか一名分だけでほぼフリーでした。  160人入るキャパのスクリーンでしたが、最終的に観客は総勢15人と奈良の朝の上映一回目としてはまあまあの状況でした。奈良って、こんなもんだよというのは分かっていますが、宣伝しているのにここまで少ないのは寂しいが徐々にお客さんも増えてくるでしょう。  まあ、ハリポタや『20世紀少年』でも一人独占上映はありましたので驚くほどでもない。映像として興味深かったのはダンスのセンスは光るが自閉症ぎみでコミュニケーション能力に問題を抱えた少女と解り合うためにすずちゃんと中条あやみが鏡越しにダンスに加わり、心の壁を取り去っていくシーンでした。
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 個人的にはここは映画になっていると感じながら見ていました。また学生たちには各々に家庭があり、問題を抱えている娘がいて、裕福な家庭の娘がいて、母子家庭の娘がいて、すずちゃんみたいにお母さんが亡くなってしまった家庭の娘がいます。  それらの設定のほとんどはさらっとした会話で示したり、台詞でなく弁当のおかずや菓子パンの映像だけで家庭環境を表現したりしているのは素晴らしい。  そもそもチアダンスというのがどういうものかが分かりませんでしたが、ポンダンス、ジャズ、ヒップホップ、ラインダンスの四つの要素でダンスを構成し、演技時間も3分弱に決まっているのをはじめて知りました。  ダンスの前に明るく、楽しく、美しくの掛け声のルーティンをするシーンは可愛らしい。すずちゃんが興味本意でチアダンス部に入るところから始まり、怪我や失恋、部長役の中条あやみ(可愛いすずちゃんと彼女が持つ凛とした美しさの対比があって良いです)ら仲間内のいざこざを乗り越えていきます。
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 廃部にしたい教頭と生徒を守りたい顧問の天海祐希との対決、大人である天海と子供の心が残るすずちゃんらとの葛藤も乗り越えて見事に全米王者に輝くまでの軌跡を『がんばれ!ベアーズ』のように時にコミカルに時にホロリと描いた佳作です。  時折コミカルすぎる演出と不自然でオーバーな演技が少々鼻につきますが、総論としてはベタな王道青春映画の枠を越えた作品です。ストーリー展開がテンポ良く、季節の変わり目もヒグラシの声や桜の花で表現していて良い感じで端折っています。青春モノ映画の王道を踏襲し、ちょっとの成功と大きな挫折、再始動と栄光の軌跡を描いていきます。  すずちゃんには色々とゴシップなどの悪評もあるようですが、それらも含めての人気なので押し潰されないように頑張ってほしい。今回は公開すぐに観に行きましたが、客席は残念ながらまばらで厳しさを実感する鑑賞でした。  それでもさすがに内容は十分に見る価値がありますので、うちの地元映画館で昨年あった、西内まりや主演『キューティハニー』のようなまさかの一週間での上映打ち切りの惨敗にはならないでしょう。
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 じっさいの話に基づいた展開なので説得力があり、今回の映画の公開が始まる前の週末に彼女たちの母校である福井高校がアメリカで行われたチアダンス団体部門で今年も優勝し、前人未到の五連覇を成し遂げています。  映画のエンディングではおそらく最後に急遽追加されたであろう祝五連覇優勝テロップが流れていました。土曜日の上映会ではまだ決まっていなかったでしょうから、優勝決定後と優勝前では違うエンディングが流れたということでしょうか。  とすれば、初日や試写会を観に行った人はぼくらと違うバージョンを見ていたでしょうし、かなりレアです。話題にはならないでしょうが、こういうのも映画ファンには嬉しいものです。  音楽には懐かしい『ゴナ・メイク・ユー・スウェット』(残念ながらカバーですが、“エビバデダンスナウ!”は一度は聴いたことがあるでしょう)、すずちゃんがカラオケで熱唱する『リンダ・リンダ』(めちゃ下手くそで微笑ましい)、アウル・シティ『グッド・タイム』(よくCMで掛かっているのはこれです!)は印象深い。 総合評価 74点