『複製(クローン)人間ブルース・リー/怒りのスリー・ドラゴン』(1982)大きな心でパロディを楽しむのも映画ファンです!
先日、『燃えよドラゴン』を自宅で見た後に劇場で『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』を見ました。タランティーノ作品に実名でブルース・リー役が出ていたこともあり、今回は『燃えよドラゴン』でも書こうかと思っていましたが、ついつい自宅ライブラリーから選んでしまったのは『複製(クローン)人間ブルース・リー/怒りのスリー・ドラゴン』でした。
なんとも荒唐無稽なタイトルがついていますが、実際に企画が通ってしまうところに当時の香港のハチャメチャさを感じられるのは楽しい。まるでフランケンシュタイン博士の実験のコントを見ているように冒頭で三体のブルース・リーが複製人間として復活します。
なんだか素人参加のブルース・リーそっくりさんコンテストみたいなノリになりそうですが、そっくりさんたちは真面目にブルース・リーを演じています。彼らは香港ではそっくりさんスターとして活躍していたのでしょうか。さすがに香港芸能界事情は分からないので、なんとも言えない。
悪の組織を探るため、三人のブルース・リーたちは筋肉モリモリの師範(名前は知りませんが、香港映画によく出てきたマッチョな人です!)に鍛えられ、悪の組織の隠れ蓑となっている映画会社のスタジオ(お金掛からないもんね!)に潜入調査(警官ではないので、捜査とは言えない)を実行し、暗闘が始まっていく。
途中、何故かビーチでオッパイ丸出しで戯れる大勢の綺麗どころが出演してきます。キレイなオッパイ、小ぶりなオッパイ(チッパイか?)、大きなオッパイなど昔のテレ朝の土曜日のワイドで当たり前だったようなレベルのお色気シーンが唐突に挿入されてくるのがなんとも無意味だが微笑ましい。硬いことは言わずに無邪気に楽しみましょう。ゴダール大先生も映画は女と暴力だと断定していますので、僕らはそれを楽しめば良い。
主役を務める三人の役者名がなんともテキトーでドラゴン・リー(1号)、ブルース・リ(2号)、ブルース・ライ(3号)となっており、日本人の感覚だとアントニオ猪木のモノマネ芸人たちがみんなで集まるイメージですので、似ているか似てないかで言うと各々が微妙ですが、なりきり振りはしっかりしているため、説得力はそこそこあります。
かつて本物が出演した映画『燃えよドラゴン』『ドラゴンへの道』『死亡遊戯』などのパロディ(本気?)をあちこちに挿入するため、微笑ましくなってきます。ここはあのシーンだなとかを思い浮かべながら、再限度が低いなあとか突っ込みながら見るのが正しいのかもしれない。
生みの親のマッド・サイエンティストの博士の洗脳によって、何でも言いなりになるように教育された筈なのに、若くて助手のオネエチャンが指示を出すマイクのコンセントを抜き、三人のブー、フー、ウーに話しかけるだけで素直に言う事を聞いてしまう。
狂ったようなことを言い出したからという理由で恩人であるはずの博士をやっつけに行き、本拠地の部屋に辿り着く前に控えているブルース・リーとも戦ったヤン・スエや奇妙な拳法の使い手を死亡遊戯風に倒していくものの、ブルース三人衆のうち、一人は電気攻撃によって生命を失う。最終的には博士を警察に引き渡して、オネエチャンたちとのこれからのお楽しみが暗示されて終わる。
まあ、オネエチャンの数と複製人間リーの数は一緒だから、喧嘩せずに末永く暮らしていくことでしょう。何も考えず、硬いことは言わず、休みの昼間か深夜にダラダラ見るのが正解かもしれません。現地で公開されたときはどれくらい動員されたのだろうか。
外国で販売されるソフトになるくらいだから、そこそこには現地ファンの心にも残っているのだろうか。レンタルビデオ屋さんがあちこちに出来ていた頃にビデオが並んでいましたが、DVD化はされていません。
今後、この作品がDVD化されるかは分かりませんが、案外子供のころに見たこういう脱力する作品の方が記憶の奥底に眠っているものなので、ノンビリソフト化を待とうと思います。
総合評価 55点