『マジック・クリスチャン』(1969)拝金主義を皮肉った作品だが、クセが強すぎるので、見る人を選ぶ風刺コメディ。
週末はラグビー・ワールドカップ日本代表の第三戦が行われたため、すべての用事を夕方までに終えなければいけませんでした。結果はご存知の通り、見事に三連勝を飾りましたが、スコアの差ほどに実力の差はなく、終始緊張を強いられる一戦でした。
今回のラグビーのワールドカップを見ていて、思ったのは痛みに耐えて弱音を吐かずにすぐに守備位置に戻る姿勢と観客の温かさ、マスコット・キッズたちや盛り上げようと奮闘するサポーターとボランティアの頑張りでしょう。
特に会場を盛り上げようと他国の国歌やアンセムを歌い上げる日本サポーターの様子はサッカーではありえない光景です。ブラジル対アルゼンチンなどはお互いの国歌に罵声を浴びせるのが常で、いつか見たワールドカップ予選かコパ・アメリカではアルゼンチンの主将が国歌吹奏を拒否する場面も見ました。
サッカー・ファンとしてはすぐに大げさに倒れて、主審にアピールばかりする選手たちが情けなく思えてきますし、これを機に日本国内リーグにお客さんが行くようになれば、飾らない姿勢やスピリットの潔さを知ったサッカーファンも雪崩を打つようにラグビーに流れて行くのではないかということを予想しています。
子供たちが大活躍している大会で、先日のニュージーランド対ナミビアの試合ではナミビアの選手たちに混じって、彼らの国歌を何も見ずに全力で歌い上げる少年の姿を見て、良いなあとじーんときましたし、オール・ブラックスが試合前に披露するハカに合わせて、スタンドから、パパに抱っこされながら、ハカに呼応する少女の姿はとても可愛らしく、心温まるものでした。
もちろん、ラグビーにもシックス・ネーションとかティア1などのいわば階級が厳然として存在し、上から目線で弱小国を見下しているのは承知していますし、来日している外国チームが日本の良い点ばかりを強調しているのも違和感があります。まあ、敵地に来て、わざわざホスト国を見下すような言動を取れば、試合会場でどんな雰囲気を作られるか理解しての言動でしょう。
ただ分かってはいても、サッカー選手であれば、必ず愚か者が混じっていて、ホスト国の悪口を叩くものですが、そうはならないのがラグビー代表選手たちの知性なのでしょう。
各会場の声援も徐々に変わってきていて、連日繰り返される熱戦を実況するテレビ放送を見て、啓蒙する元代表の解説者のおかげもあって、だんだん楽しみ方が分かるようになってきていると感じています。サッカーもそうでしたが、シュートがゴールに入る前にすでに総立ちになっているのが今のサッカーファン、ぼくらラグビーのにわかファンは主審の様子や選手たちが最後列に向かわない動きを見て、トライが成立したのだと分かるようになってきています。
細かいルールが分からないのは当たり前ですが、選手たちの祭りを楽しむような肉弾戦は迫力があり、スクラムの押し合いやモールの押し込み、アドバンテージ・ルールによってもたらされるチャレンジ精神あふれる攻撃性などサッカーが失ってしまった要素がたくさんあることに喜びを感じています。
今週末にもっとも重要な決戦が控えていて、次で勝つか負けるかで、今後10年くらいの繁栄が約束されるか、一過性のブームで終わってしまうかの天王山なので、全力で応援したいものです。とりあえずぼくは近くのホームチームである近鉄の年間パスを購入しようかなあと考えています。
それはさておき、最近どうもというか、ここ十年くらいずっと痛い腰と肩が痛く、目肩腰のケアのために通っている整体治療院がある駅前にせかせかと向かっていると、近所の中学校から聴こえてきたのは聞き覚えのあるメロディと掛け声。
それはかつて誰もが一度は踊り狂ったであろう『マイムマイム』でした!あのメロディと「ま〜いむ ま〜いむ ま〜いむ ま〜いむ」。なんだか気持ちだけが数十年前にタイムスリップした感じになりました。まだ昔からある曲で踊りを踊っているんですね。
整体に着いて、いつも施術をしてもらっているスタッフの方に「首筋、肩周り、腰が重だるい感じです!」と告げると、「いつもやん!」と返されました。ここは気持ちいい施術ではなく、後々体調が楽になるために行う、めちゃくちゃ痛いので評判の施設なので、毎回来るときは修行に入る気持ちで来店します。
本日の修行タイムが終わり、ちょこちょこ休みの日に通うレコード屋さんに足を運びました。前回に訪店した時にオーナーさんに依頼していた赤盤の『ザ・ビートルズ』を受け取りに行くためです。
残念ながら、未入荷でしたが、USアップル盤(1972年製造)があり、聴かせてもらうと日本盤より音の分離が良く、アコースティックギターは深みがあり、メロディアスなベースとメリハリのあるハイハットやドラムが響いてくる、かなり状態が良い盤でした。
雰囲気はベルサウンドの赤リンゴ盤『レット・イット・ビー』のような楽しさも好みでしたので即座に購入を決めました。会計に進む前に何気なくシングル盤が並べられているコーナーを見ると、なんとそこにはイギリス・パーロフォン・レーベルから発売されたEPコレクションに購入特典として入っていたEP盤(収録曲は『ジ・インナー・ライト』『ベイビー・ユー・アー・ア・リッチマン』『シーズ・ア・ウーマン』『ディス・ボーイ』)が単体で販売されていました。
非常に珍しい盤でまずは『ジ・インナー・ライト』はリアル・ステレオのテイク、『ベイビー・ユー・アー・ア・リッチマン』も同じくステレオテイクで明らかにジョンが弾いたクラヴィオラインが別のミックス、『シーズ・ア・ウーマン』がカウント・インするテイク、そして『ディス・ボーイ』もリアル・ステレオテイクという代物です。
最初にこれを聴かせてもらったときに衝撃を受け、イギリスのサイトで探したり、あちらに住んでいる知人に依頼しようかと本気で考えていたところでしたので、見た瞬間に手を出していました。
売り値は8000円超えでしたが、あちらのオークションサイトでも滅多に見かけないもので、あってもユーロを日本円で換算してみると12800円くらいが普通という状況、さらに追加に掛かってくるイギリスからの輸送代や破損リスクなどを考慮すると、決して高くはありません。
結局、今回はイギリス盤EPとUS盤2枚組を抱えて、帰路につきました。アメリカ盤を嫌う人が多いのは残念ですが、ぼくはアメリカ盤の音作りが好きなので意に介さない。いわゆる“ドンシャリ感”は独特な乾いたノリを生み出しています。こじんまりとまとまるのを良しとせず、楽器やメンバーのソウルを引き出すエンジニアの技に接して欲しい。
さて、色々と密度が濃かった日の夜に見たのはリンゴ・スターとピーター・セラーズが共演した『マジック・クリスチャン』でした。ビデオ時代に見たきりになっていましたが、録画していた分が残っていましたので、久しぶりに再生しました。
内容はイギリスの風刺センスが満載、つまりとっつきにくさが健在で、シェイクスピア劇をストリップにしたり、人種差別意識が強く、鼻持ちならないスノッブたちをバカにしまくります。マジック・クリスチャンとは後半に出てくる豪華客船の名前です。
白人男性と黒人男性によるストリップ演出、サザビーズに群がる金持ちたちを揶揄する場面、一流レストランで金にモノを言わせて、好き勝手にふるまう大金持ち、気取った紳士たちも一皮むけば、金の亡者に過ぎないと喝破するような糞尿まみれの高額紙幣掴みどり大会など日本人にはついて行けない部分も多々あります。
それでも見どころや聴きどころがある作品で、ラクエル・ウェルチが奴隷長として鞭を振り回しながら、人力で全裸の女奴隷たちを鼓舞したり、乗客の中年オヤジをSM女王のように鞭打つシーンは忘れがたい。女装したユル・ブリンナー、何故か突然吸血鬼役で現れるクリストファー・リー、ピーター・セラーズに買収されるボート部監督役でリチャード・アッテンボロー…。なんだ、こりゃ?
ハチャメチャな場面が延々と続き、はっきり言ってついていけない作品ではありますが、一瞬出てくるジョンとヨーコのそっくりさんにハッとしたり、ポール・マッカートニーが作曲してバッド・フィンガーが歌う『カム・アンド・ゲット・イット(マジック・クリスチャンのテーマ)』、バッド・フィンガー名義の『明日の風(キャリー・オン・ティル・トゥモロー)』は聴きどころです。
マジック・クリスチャン号に揺られて船に乗っていると思い込んでいた乗客がタワー・ブリッジにいることに驚くシーンのバックに流れる?『ア・デイ・イン・ザ・ライフ』の最後の「じゃ~~~~~~~ん」も楽しい。
ポールが作った『カム・アンド・ゲット・イット』は海賊盤でも多く収録されていたので聴いたことがあるナンバーですが、あまり出来が良いとは思えず、捨て曲を他人に与えただけのように映る。一方、バッド・フィンガーが作った『明日の風』は名曲で、歌詞の暗さが彼らの将来を暗示するような内容になっていて、薄気味悪い。
DVD化もされているので、レンタルに並んでいれば、借りてみましょう。演出ではモンティ・パイソンのメンバーが関わっているので、ファンの方ならば、見ておきたい作品でしょう。
ぼくはビートルズのコメディ『モンティ・パイソンのザ・ラットルズ』、アーサー王伝説を茶化した『モンティ・パイソンのホーリー・グレイル』、キリストを笑い飛ばした『モンティ・パイソン ライフ・オブ・ブライアン』を所有しています。
ラクエル・ウェルチのファンにとっても女王様姿が拝める映画なので、見る価値があるでしょう。リンゴ・スターもビートルズ在籍当時ですし、まだ彼らが活動していたころの貴重な資料かも知れない。
総合評価 55点