良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『ギルダ』(1946)セックス・シンボルだった、リタ・ヘイワースの魅力を前面に押し出した代表作。

 チャールズ・ヴィダー監督、1946年製作作品であるだけではなく、マリリン・モンロー以前のセックス・シンボルであった、リタ・ヘイワースの代表作でもあります。彼女の魅力が前面にフューチャーされているこの作品はまた、彼女が輝いていられたモノクロ・フィルムとの相性の良さが出ているフィルム・ノワールでもあります。
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 彼女の名前は1994年になってから、映画ファンにとっては不滅の人気を誇る『ショーシャンクの空に』の原題である『ショーシャンク刑務所のリタ・ヘイワース』でも用いられ、劇中劇として最初の登場シーンと、彼女が歌う『Put the blame on Mame』が使われていました。  『上海から来た女』、そしてこの『ギルダ』でのリタ・ヘイワースの美しさは尋常ではない。またモノクロでは魅力があふれ出ていたリタが、何故カラーになった途端にあの妖艶な匂いが消えてしまったのか。モノクロが映える女優もいたとしか言いようがありません。同じ監督が撮った、カラー映画『カルメン』ではたいして魅力を感じないのです。不思議ですが事実です。
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 モノクロが好きな人間としては、マレーネ・ディートリッヒと並び、大好きな女優さんの一人です。本当に眩しい女優さんです。彼女は歌も素晴らしく、演技もきちんと出来ている。しかも綺麗。実際に歌っていたかどうかは不明ですが、歌っていたのならば、更に素晴らしい。  1998年に製作された『ゴダールの映画史』でも、最後の歌のシーンと彼女のクロース・アップが挿入されていて、ゴダール監督も彼女が好みであったことがわかります。ちなみにマリリン・モンローは映画史には一度も登場しませんでした。実際、モンローは演技、歌もいまいちです。でも彼女の魅力はそんなものでは測れません。彼女については違う機会に書き込みます。  リタ・ヘイワース演じるギルダの歌う『Put the blame on Mame』はとても魅力的であり、劇中で二回使われるこのナンバーは彼女の魅力を存分にアピールしています。一回目は弾き語りで爪弾かれ、二回目はゴージャスなダンスと共に歌われます。フェロモンが画面すべてに充満している二回目のこの歌のシーンを見るだけで、彼女が如何に魅力的かが理解できることでしょう。
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 このカジノでのショーのシークエンスは、この映画でのクライマックスであり、「誰かファスナーを外して」と観客を挑発するリタの様子は、いかがわしさよりも可愛らしさが出ている良いシーンでした。いかがわしさを出そうとしても、不器用な可愛らしさが出てしまうリタの表情と本性がご愛嬌です。また現状の生活に失望して、素に戻った時のリタの表情は、むしろ着飾った時のリタよりも美しく思いました。  映画自体は、男女3人の複雑な三角関係の縺れとその顛末を、第二次大戦後のナチス残党との争いを出汁に使って、スパイ物の味わいを出しています。グレン・フォード演じるギルダ(リタ)の元愛人とギルダは元恋人同士だったが、別れた後にお互いは全く知らないうちにアルゼンチンに流れ着く。アルゼンチンと言えば、ナチス幹部や戦犯が多く隠れて潜伏生活を送った場所としても有名だったので、この地を作品の舞台に選んだのは順当だと思います。  かつての恋人ギルダは、今では自分のボスの妻の座に納まり、自分は部下として彼女に接しなくてはならない。こういったことは現実世界でもありそうなことです。お互いに忘れられないが、ストレートに感情を表せない二人は、その裏返しとしてお互いに憎しみ合うようになる。  かつて恋人だったとしても、別れた後は別々の道を歩んでいくのが人生です。何かのきっかけでまた出会うことになっても、立場はまるでそれまでとは違うものになっていることも多い。かつて同等だったとしても、時間を経過した後では、人間関係は決して元には戻らない。また戻ったとしても、それにはとてつもない痛みが伴う。  しかも彼女の夫は犯罪者であり、詐欺や殺人などなんとも思わない。彼はギルダら二人の関係に疑念を持ち、嫉妬してゆく。最終的に彼が二人を殺そうとした瞬間になってはじめて、お互いが必要な存在であることに気付く。とまあ、これが主な筋書きでありますが、まあありふれたものではあります。
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 この映画はストーリーがどうとかいうものではなく、ハリウッド・スター女優のリタ・ヘイワースの魅力を出し切ることに焦点が置かれた作品なのです。この目論見は見事に成功して、彼女の代表作として語り継がれるようになっています。ブエノスアイレス(アルゼンチン)、モンテビデオウルグアイ)など南米大陸の地名が頻繁に出てくるのも、この作品の持つ異国情緒と流れ者の物語のイメージをより一層強めています。 総合評価 76点 ギルダ
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