良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『ターミネーター 3』(2003)無意味な映画製作、その一。続編。

 2003年に公開された、ジェームス・キャメロン原作、ジョナサン・モストゥ監督による、大ヒットシリーズの完結編が、まさか、このような酷い出来栄えになろうとは、思ってもいませんでした。いくら、キャメロンとハミルトンが離婚してしまい、両者の手から離れてしまって製作されたとはいえ、ここまで期待を裏切る完結編に対して、ファンとしてどう接してよいのか未だにわかりません。  個人的には『T1』(1985)、そして『T2』(1991)ともに劇場で見ました。両方共に、それぞれの良さがあり、コケることの多い続編物の中では、異彩を放っていたものです。そのために、当然ながら、思い入れのある『T』シリーズの完結編である『T3』も行くべきだったのですが、どうしても気がすすまずに、とうとうレンタルで見ることにした作品でした。  その理由の第一に、TVか何かの画像で、T-850(シュワ)とT-X(クリスタナ・ローケン)がお互いに便器で殴り合っている映像を見てしまい、僕の頭では理解することの出来ない「バカボン・ワールド」が思いっきりに展開されているように見えてしまったからです。『時計仕掛けのオレンジ』で、マルコムがペニス型のオブジェで老人を殴り殺すのとは訳が違います。  さらに見ないでいる事の幸せを選んだ理由のひとつが、大人に成長した、僕らのヒーロー、ジョン・コナーを、何故かニック・スタールが演じていたからです。救世主ジョン・コナーがあそこまでかっこ悪いのが、長年のファンとしては、全く許せませんでした。地球の未来を、しょって立つスーパー・ヒーローとなる彼があんな間抜け面では、おそらく誰も味方にはつかないのは確実ではないでしょうか。  そしてなによりも「かあちゃん」が出てこないことが解った瞬間に、このターミネーターという作品世界の意味は、ほとんどなくなっているのです。サラ・コナーが、未来のために戦い抜く「細腕?繁盛記」という設定そのものが、このシリーズの良さと太い軸だったはずなのです。  普通の「ねえちゃん」だった一作目での「戸惑いと覚醒」、「シングル・マザー」になった二作目の「成長と凶暴化」のあとが、栄光の完結編になって、まさか一度も映る事も無く、既に死んでいるなんて、ナンセンスとしか言いようがありません。  しかも、彼女の墓まで荒らすなんて、なんて罰当たりなんでしょう。彼女の不在は、縦軸の不在であり、いつまでも出てくるシュワルツェネガーは、拡がらない横軸です。  リンダ・ハミルトンの不在は、ジェームス・キャメロンと離婚したことが原因とは聞いていますが、後世に残すべき『T』シリーズのラストに、彼女が出てこないのは、あまりにも悲しく、ファンとしては割り切れませんでした。  一本の太い線が繋がっていないと、いくら「しゅわ」が出てきても、奴はロボットにすぎませんのでストーリーが寸断されてしまうのです。そもそも第一作目の「彼」も、第二作目の「彼」も、そして第三作目の「彼」も、全員別人?なわけですから、いくら形が「しゅわ」でも、意味が無いのです。   まさに金儲けのためだけの駄作です。女ターミネーターT-Xの出てくる必然性もまったくありませんし、ただ映画館に、男性客を動員するためだけにキャスティングされてしまった感があります。あの作品世界にとって、そして『T』シリーズを見守り続けたファンにとって、必要な女は、リンダ・ハミルトンただ一人です。   『T1』と『T2』の良さと教訓が全くいかされずに、ただ悪い部分のみが量産されていて、しかも不良品だったのです。こんなに寂しい完結編を見たのは、『ロッキー5』以来でした。出来の悪さでは、続き物の中で、この二つがダントツです。  ストーリー自体は、結局、未来は違う形であったとしても、避けたかった結果が起こってしまうという、ありがちな展開にはなりましたが、SFというジャンル自体が、荒唐無稽な世界を埋め尽くすリアリズムがあれば、リアリティが出てくるものなので、全く問題ないのです。  音楽面でも特筆すべき事は何も無く、メインテーマや、『T2』でのガンズ・アンド・ローゼズが演奏していて、とても印象的だった『You Could Be Mine』のようなナンバーもなく、寂しい限りでした。  しかし、キャスティングとリンダの「死」のシークエンスを、きちんと作品に盛り込んでいれば、ファンというか、『T』マニアの反応も全く違いが出ていたのではないでしょうか。惜しまれるポイントではあります。ここさえクリアしていてくれれば、3本続けて見る楽しみもあったのですが、個人的には『T』は『T2』が完結編です。『ロッキー』シリーズの最後が『ロッキー4』であるように。 総合評価 43点 ターミネーター 3 プレミアム・エディション
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