良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『ブラック・レイン』(1989)カリスマ松田優作、39歳で病魔に倒れる。最後の勇姿を見て欲しい。

 リドリー・スコット監督、1989年製作作品にして、松田優作、初のハリウッド進出作品です。そして、これは松田優作の遺作でもあります。1989年というと、バブル全盛期の真っ只中であり、今ではもう17年以上前になってしまいました。

 当時、大学生であった僕は、公開された初日に福岡で観ました。かっこええ、という印象があまりにも強かった優作でした。健さんもよかったですし、島木譲二若山富三郎も良い味を出していました。

 しかし、彼らをなお、ひとりで圧倒する松田優作はかっこよすぎました。  迎え撃つアメリカ・ハリウッド俳優陣にも、その年の『ウォール街』でアカデミー賞に輝いた、マイケル・ダグラスがいて、結構渋かったのですが、アメリカ人の中で、もっとも印象に残ったのは、あっさり殺される「とほほ」なアンディ・ガルシアでした。

 『ゴッド・ファーザーⅢ』での演技が光っていた彼ですが、ここでの彼はただの殺され役でした。映画としてはキャスティングのバランスが、優作の大きすぎる存在の前で崩れています。

 それほどの迫力を、ガンとの闘病生活の中で出し切った優作は、この作品と共に、殉職する道を選んだようにも思えました。演技バカ一代として、作品に命を懸け、燃え尽きました。ファンにとっては悲しいことですが、優作が選んだ道なのだから、彼のやりたいようにすれば良いし、それでこそ彼らしいとも思います。

 見た後に、真っ先に思ったのは優作って、ハリウッドの連中よりも、ずっとかっこいいなあということでした。遺作になってしまったのが本当に残念です。この存在感を持ってすれば、一躍ハリウッドスターの仲間入りを容易に出来たかもしれないと思うと、早すぎた死を悔やみます。

 松田優作というと、僕ら30代後半の人間にとっては、『蘇る金狼』、『最も危険な遊戯』、『ア・ホーマンス』、そして『竜馬暗殺』で見せてくれた、どこか陰のある、力が全身からあふれ出て、気魄が画面に充満する圧倒的な存在感を思い出します。

 また『家族ゲーム』やTVシリーズ『探偵物語』、『太陽にほえろ!』でみせた憎めないユニークなキャラクターなど、他の俳優では持ち得ない独特な魅力を沢山持つ、不世出の俳優でもありました。

 公開当時はあまり深く考えずに見ていたため、もしかしたら劇中の指詰め場面において「なんじゃこりゃー!」を言ってくれるかも知れないとひそかに期待しました。

 そしてやってくれたならば、きっと笑えたのになあとも友人とともに語っていました。あれからもう十七年もたつんだなあ。優作が死んだ年齢に、だんだん近づいていく今日この頃です。

 彼が死んでから、息子さんの松田龍平君を見るたびに、彼の面影を残す龍平君の活躍を願いながら、彼の出演作も見ています。お父さんのプレッシャーに潰されずに、自分の味をどんどん出していって欲しいものです。

総合評価 82点 ブラック・レイン

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