良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『ガメラ対大悪獣ギロン』(1969)大悪獣って、いったい?肥後の守が飛んできた~!

 『ガメラ対大悪獣ギロン』をはじめて見たのは幼稚園の年少さんの時でした。30年以上前ということになります。勿論リアルタイムでは無理だったのですが、ブラウン管の馬鹿でかいTV(たしか、扉がついていて、見る時に開けるという仏壇みたいなやつでした)で、集中して見ていました。  筋も何も関係なく、ただガメラの活躍が見られれば、もうそれで十分だったのです。クルクル回りながら空の彼方や宇宙まで飛び出していくガメラはとても魅力的な怪獣スターでした。僕個人の中での大映スター・№1は勝新太郎ではなく、ガメラで決まりです。  ゴジラの戦いはどっしりと腰を落ち着けた、猪木式ストロング・スタイルのプロレスのようでしたが、ガメラの戦闘スタイルはメキシカン・スタイル(ウーーー!テキーーーラ! カラムーチョ!)のルチャリブレを髣髴とさせる派手な空中戦が魅力でした。  敵役としてガメラが対戦したのはギャオス、ジャイガー、バイラス、ギロンなど変なマスク・マンみたいな奴ばかりでしたが、それはそれとして楽しめました。大映怪獣達は生物であるというコンセプトのもと、ディティールが無意味に細かく設定されていて、怪獣図鑑にも解剖図などがよく掲載されていました。  片方の怪獣映画の老舗、東宝ゴジラ物ではこうしたことは一切描かれませんでしたので、大映なりに区別しようとしたのでしょう。神秘的に怪獣を描いた東宝か、生物として具体的に描いた大映かという感じでしょうか。もちろん結果は東宝の圧勝でした。  この作品ではガメラの怪獣の中では印象の深かったギャオスがまず宇宙ギャオス(ストロング・マシン・2号みたいだ)として復活し、宇宙都市(リング?)で大暴れしています。彼と戦い、ガメラとの挑戦権を得るべく、ギャオスとまずはシングル・マッチをするのが、この映画の悪役スター、ギロンでした。  で、このギロンなのですが、あまりにもいい加減なデザインで、見ていない方のために説明しますと、ずん胴のナイフに目と手足を無理やりつけたような(まるで、YGマークに無理やり目や口をつけたジャビット君みたいなイメージ)シュールな造形なのです。  幼少時にみた時にも、彼の造形のインパクトはかなり強烈で、名前は覚えていなくとも、姿形は意識下に確実にインプットされていました。ジャビット君もかなり強烈ですが、彼の目の奥の黒い部分は骸骨なんでしょうか。  名前も凄いですね。「大悪獣」ですよ。「大怪獣」でも「大巨獣」でもない「大悪獣」とはいったいどういう表現なんだ。多分今でも彼が「大怪獣」だと思っている人がいるに違いない。僕がそうでした。肩書きに恥じないだけの活躍をやってのけたのは、映画の前半でした。  名前の通り、彼の戦闘スタイルはかなり残酷で、頭というかナイフを前面にフューチャーした戦いぶりで、ギャオスをバラバラに切り刻みます。殺されゆくギャオスが哀れなことに、自分自身が斬られていき、首だけになってもすぐには死ねずに徐々に息を引き取っていくのを映し続ける残酷描写は今見てもきつ過ぎるかなという印象です。怪獣映画史上、最も過激な描写を見ることになると思います。  もしこの星に新聞があったら、見出しは東スポなら「宇宙にいた!切り裂きジャック!」か「鳥料理屋?ギロン! ギャオスをつぶす!」、4大紙なら「無残、ギャオスさん、バラバラにされる。 犯人は悪びれず。愉快犯か?」でしょうし、ワイドショーなら、一週間はこのネタで引っ張るであろう衝撃的な戦いです。  最終的にガメラとは2回戦い、一戦目はリング・アウトでガメラが敗れ、2戦目でガメラのパイルドライバーと凶器攻撃により、ギロンをKOするという内容でした。ギロンは結構やる奴だったのです。ガメラ相手に一勝一敗なら、悪役としては本望だったろうと思います。ギロンの形は、まさに当時、中学生や高校生の人が持っていた肥後の守という、ナイフそっくりでした。  ギロン見たさにまた10年くらい経ったら見てしまいそうです。物語どうのこうのではなく、ただギロンのあの造形を見るのも、おつな楽しみ方だと思いますが、誰も理解してくれそうもないですね。端役で、大村昆やイーデス・ハンソンが出ているのは昔のTVファンにはたまらないおまけです。物語自体には目をつぶりましょう。 総合評価 62点 ガメラ対大悪獣ギロン
ガメラ対大悪獣ギロン [VHS]