良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『ドリトル先生 不思議な旅』(1967)たしか昔、TVシリーズがあったような記憶もあるのですが。

 ドリトル先生という響きがとても懐かしく、たまたまBS2で放送があったようなので、久しぶりに見ようと思い、録画しておいたのを今日見ました。イメージではモノクロだったのですが、実はカラーだった事にまずは驚きました。

 30年以上前のおぼろげな記憶ではTVシリーズがあり、かたつむりや漂流島など印象的なキャラクター?は覚えてはいたのですが、細部は全く忘れていました、というか見れていなかったというほうが正解なのかもしれません。

 当時モノクロだった事もあり、桃色カタツムリを総天然色ではじめて見たのに感慨がありました。大月蛾(モスラみたい)やらオシツオサレツが登場するのも楽しく、160分以上の作品だったのに、あっという間に時間が過ぎていきました。ファンタジーの強みでしょうね。

 「もし動物と話せたら、楽しいだろうなあ」というペット好きな人たちにとっては本当に夢のような能力を持つドリトル先生には当時から羨望の眼差しを送っていました。家で飼ったのは犬、猫(ずっと切らしたことはありません。)、カブトムシ、クワガタ、金魚、ザリガニなど王道的なペット達でしたが、友人宅にはイグアナを飼っている人もいました。

 実際に彼らと話が出来たとすれば、人間達にはよりストレスが掛かってくるかもしれません。おそらく対等の立場を主張してくるでしょうから、餌代やら住宅環境への費用が莫大になってくるでしょう。

 犬なら冷暖房完備の犬小屋、一日三度以上の散歩、放し飼いの要求をしてくるでしょうし、「犬」を使ったいろいろな蔑称はすべて放送禁止用語に指定されるかもしれません。

 猫ならマグロの刺身やミルクの給餌、落ち着ける住環境と気安く触られない権利を主張するでしょう。またブラッシングを受ける権利、気に食わない飼い主を訴える権利を行使するでしょう。

 鳥ならば、4LDK以上の鳥小屋と一日3時間以上の飛ぶ権利を求めるのは確実です。また環境破壊への法的闘争も頻繁になり、気軽に山の開拓などはできなくなるでしょう。熊も夏場の餌を求め、生存権の確保を人間に求め、山に入るのには入山料が必要になるかもしれません。

 食肉も制限され、ベジタリアン化していくので、マクドなどの外食産業も成り立たなくなってくるでしょう。人間も動物の一種にすぎないという思想があるようです。

 つまり強者が弱者を敬う環境を作らなければ、星として駄目になってしまうということです。教育の基本とは本来はお互いの生存権を脅かさないという事ではないでしょうか。ファンタジー・ミュージカルという構成の為に、見えづらくなっていますが、自分達が世界を支配しているという立場で、何をしても良いと思っている人間達を皮肉る内容に思えます。

 作者にとってはそんな意図などないのかもしれませんが、動物以下になってしまった人間が多い昨今では、より深刻に考えなければならないテーマも多い作品でした。

 理想主義者のドリトルが精神障害施設に収容されかけたり、友達がアイルランド人と女子供だけ、そして仲良くなる異国の人々はすべて黒人というのは偶然とは思えません。

 虐げられてきた人間達と冷遇され続けた動物達が仲良くなり、現実世界から逃避して、冒険に出るという物語からは平和、融和への希望と現実への嫌悪感が画面を通して見えてくるような気がします。

 時代はベトナム戦争真っ盛り、国内も人種問題がくすぶり続けている。こういった中で製作されたので、このようなファンタジーにも暗い影を落としているように思える。

 まあ、気難しい事はこれくらいにして、どっぷりと動物ファンタジーワールドに浸るのも楽しい。クジラが島を押してくれたり、桃色カタツムリに乗って、大西洋を横断し、イギリスに帰るって言うのは本当に夢の世界ならではの面白さなのです。桃色カタツムリの特撮が良く出来ていて、見応えもあります。

 ドリトル先生の自宅にいる動物達が黙って撮影されている様子が興味深く、おそらく何時間も掛けて、ワンカットずつ撮影しているのだろうなあとか考えているだけでもニコニコしてきます。演技している動物達にもニコニコします。楽しい特撮作品もあるのです。

総合評価 80点

ドリトル先生不思議な旅