良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘』(1966)東宝は一体何が撮りたかったんだ?

 興行収入を抜きに考えた時、はたしてこの作品にゴジラモスラが登場しなければいけない必要性を認めることが出来ません。ゴジラとエビラの戦いはまったく噛み合わず、モスラに至っては友情出演程度のものであり、タイトルに出てくるような「決闘」シーンは皆無です。

 監督は福田純、音楽は佐藤勝、そして極め付けが小美人もザ・ピーナッツではなく、ペアバンビ?という謎の女性二人組(可愛くない!)に交代しているのです。しかも物語のスタートが恐山から始まるという訳の分からなさも重なり、ゴジラ映画ファンにとってはまさに違和感のオンパレードとなってしまったのがこの『ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘』なのです。

 特撮も円谷英二の名がクレジットされてはいるものの明らかに名前を貸しているだけという感が否めない。実際にこの作品での合成画面の貧弱さは救いようがない。特に酷いのが小美人の出演するシーンです。

 背景と人物の周りの色彩と色調がまったく合っていない別々のフィルムの一方の端の部分を円形にくり貫ぬき、もう一方のフィルムを重ね合わせ、あたかも同位置空間上にいるように合成しているのですが、あまりにも幼稚でチャチな仕上がりに幻滅してしまいます。

 小美人たちと人間が話す会話シーンはほとんどが別々に撮られて、それをカットバックで繋いでいます。彼らが共に映るシーンでは小美人たちを合成ではなく、人形を使って撮影するような貧弱さでした。一方が話すともう一方は無口になってしまうのです。

 せめてハリーハウゼンが『ガリバーの大冒険』で用いたような遠近感を利用して撮影するような方法を採るべきでした。お金がなくとも、ある程度の手間ひまと愛情を注げば、温かいファンの鑑賞に耐える作品には仕上げられるはずなのです。

 あまりにも安易過ぎる。こんなに酷いものにゴジラの看板を掛けてしまった東宝にも大きな責任があります。もともとキングコングを使用して撮るはずだったという事情があったにせよ、出来は悪く、投げやりな印象があります。

 内容も壊滅的で、ゴジラ加山雄三の真似をさせたり、体育座りをさせたりと悪夢のような映像が次々に出てきます。ゴジラとエビラのドッジボールやサッカーを見たかった人がいるのだろうか。

 そもそもエビラの造形と設定がひどすぎる。最初の登場時に大嵐の中で、ハサミだけを突き出し、人間を襲うまでは良かったのですが、同じネタを二度三度と繰り返す様は売れない芸人か必殺技のないレスラーみたいで見苦しい。

 海から一度も陸に上がらず、ただ石の投げあいに終始するというチャレンジャー精神もサービス精神も全く無いエビラにゴジラと戦う資格はない。リングに上がってこない奴と試合は出来ません。

 業を煮やしたゴジラがリング外に(海中)飛び降り、エビラの誘いに乗っていきますが、ここでもエビラの出来る事は切れ味のひどく悪いハサミでゴジラをつまむ程度でした。しかもあっけなくハサミを両方とも引き千切られ、ゴジラの餌になってしまう体たらくです。せっかく今回のゴジラは別名「海ゴジラ」と呼ばれる特殊仕様のスーツだったのに白熱の戦いもなく終わってしまい、なんとも勿体無い限りです。

 ハサミの部分の肉って、タラバ蟹などでは結構いけますので、さぞ美味しかったのでしょう。本体は逃げてしまったのでイセエビの活け作りに舌鼓を打つシーンは幻に終わりました。ここまでゴジラのイメージをぶち壊したのですから、やっても良かったのではないだろうか。

 今回はもう一匹というかもう一羽の敵が現れます。それは大鷲で、生意気にもゴジラを突きにきますが、あっけなく放射能火炎を浴びせられ、フライドチキンになってしまいました。この作品でのゴジラはご馳走ばかりの御もてなしに満足したことでしょう。まるで「ゴジラの食いしん坊万歳」の収録を見る思いでした。

 この映画の中のゴジラは寝ていたのを無理やり電気ショックの目覚ましで起こされ、相手にもならない、餌と言っても良い奴らと戦うだけという不完全燃焼状態で、最後に出てきたモスラとも戦えない。モスラはただ人間を運ぶだけのエアバスという役割を嫌がりもせず、淡々とこなしていました。

 唯一嬉しいのは水野久美の南国衣装姿、そして宝田明平田昭彦の共演くらいでしょうか。南海の孤島という設定ならば、複雑な街並みのミニチュア模型も必要ないのでリアリティの追求を考えなくて良いので、さぞ楽なお仕事だったと思います。

 ああ寒い。つぎはいよいよミニラの登場か....。エド・ウッド監督の域にどんどん近づいていくのはつらい。

総合評価 35点

ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘