良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『ポスレンは魅力的だろうか?』クラシック映画ファンにとってポスレンは素晴らしいとは思えない。

 レンタルの新形態として去年あたりからポスレンが話題になることが多い。「在庫40000タイトル!」とか聞くとたいそう多く感じるわけではありますが、普通レンタル屋さんでは10000以上は置いているようなので、この40000という数が多いとは思えません。

 僕のようなクラシック映画のファンが見たいと思うタイトルは案外少ないのが現実です。40000の洋画タイトルの在庫があるわけではないからです。すべてのジャンルを含めた在庫数が40000だったら、マニアックな作品までには手が届かないのは当然といえば当然であり、回転数も期待できないクラシック作品はさらにタイトルも在庫も少ないのも仕方がない。

 また月額料金がだいたい2000円前後という価格設定にも、あまり魅力を感じない。借り放題といいつつも、2枚毎に配達され、1ヶ月で8枚から10枚前後のDVDが届くようですが、ただでも少ないクラシック作品のなかで、さらに見たこともない巨匠たちの初期作品などマニアックな作品を見つけるのは容易ではありません。

 最近のツタヤはDVDコーナーが充実していて、『バスター・キートン短編集1~9』『ロスト・ワールド』やロッセリーニ監督、デ・シーカ監督、ゴダール監督らの作品がクラシックコーナーに並びだしている。いつ来るか分からないポスレンを待っているよりもよほど早く、しかも大量に借りられるようになっています。

 その中にインドの巨匠サタジット・レイ監督の三部作『大地のうた』『大河のうた』『大樹のうた』までも並んでいたのにはかなり驚きました。ハリーハウゼンのシンドバッド三部作もありましたし、DVD化の波はここ数年で一気にレンタルショップに押し寄せました。

 田舎に多くあった旧来のビデオ中心の小さいところではやっていけないところまで進んできています。僕の住む奈良でも個人経営店は見かけなくなりました。80年代後半に筍のように乱立した小さい店には、こだわりのある映画ファンのおじさんがいたりして、いろいろと映画の話をしたりもしましたが、ツタヤをはじめとする大型店には質量ともに圧倒されてしまい、90年代半ばにはほとんど見なくなりました。

 サム・ペキンパー監督『わらの犬』、ブライアン・デ・パルマ監督『ミッドナイト・クロス』、アレハンドロ・ホドロフスキー監督『エルトポ』などを店のおじさんと語り合っていた頃が懐かしい。バイトのお兄さんたちも多分、今でいうフリーターの人たちが多く、朝から晩までビデオを見ていた人が沢山いて、結構鋭い目で作品を分析している人もいました。

 一方で、ツタヤなどの大型店では品揃えが良く、膨大な作品のなかからお目当ての映画を探して回れるという狩猟本能を満たしてくれる楽しみがあります。行ったことのないツタヤを検索し、実際に行ってから古い映画を探す楽しみは、中古レコード店でのドーナツ盤やLP盤を買い求めていた頃の感覚を思い出させてくれます。

 周りの人に言うと呆れられますが、個人的にはとても楽しい時間でもあります。大阪、京都、奈良、兵庫のツタヤを行き来しながら探すのはとても面倒ではあります。しかし行く先々でラーメン屋さんを巡ったり、いろいろしながら探すので、結構楽しい。

 職場でもどこかに大きなレンタル店はないかとリサーチしたりすることもあります。ただ最近はスカパー、WOWOWなどのおかげもあり、よほどの作品でなければビデオで借りることはなくなりました。

 僕が見たいような作品はほとんどが古いものなので、テープに傷があり、まともに再生できない場合もあるからです。せっかく借りてきて品質不良ではガッカリさせられます。マニアックな映画もすべてDVD化させ、レンタルで借りてみたい。

 見たい映画すべてをDVDで購入することは不可能なので、どうしても頼りはスカパー、レンタルになっているのが現状です。よりマニアックな作品を揃えて欲しいものです。

 今見たいのは『大閲兵』『アルジェの戦い』『糧なき大地』『銀嶺の果て』などのDVDです。『大閲兵』はビデオもなく、DVD化の予定もないようです。『銀嶺の果て』はDVDにはなっているので買おうと思えば買えるのですが、日本映画専門チャンネルでやってくれるにこしたことはない。

 ポスレン関連の検索で調べて「ブレッソン」と人名で入れても、ヒットなしと出てくるのは哀しい。ブニュエルも『昼顔』と『熱狂はエルパオに達す』のみでした。

 おそらく加入しても三か月くらいで見たいものが無くなってしまいそうですし、ツタヤ巡りの楽しみもなくなるので当面は見守ろうと思っています。

 利点があるとすれば、ツタヤのない地方や山村などに住まれている方、そしてさまざまな理由で店舗まで足を運べない方にとっては、これまで目にすることもなかった古今東西の名作をダイレクトに届けてくれる素晴らしい試みをツタヤが実施しているということではないでしょうか。問題点もあるようですが、まだまだ伸びしろがありそうなポスレンに期待したい。