良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『年間ベスト10企画』について思うこと。ベストは毎年10本もないでしょ?

 もうすぐ年の瀬を迎える今頃から12月になると、映画雑誌は毎年恒例で「年間ベスト10」などと称して、お抱えのライター陣や有名人の映画ファンから彼らが観た映画年間ベスト10を列挙してもらい、それらの集計を掲載することが多い。楽な企画ではあるが、毎年ベスト10に入れても良いほどの作品が10本も生まれるはずはない。

 「RATHER 10」、つまり「ましな10本」とかにしたほうが実情にはあっているのではないだろうか。邦画と洋画を分けるのも滑稽である。便宜上とも取れますが最初から負けているのを前提にしたようなやり方はおかしい。映画は作品が素晴らしければ、世界中で観客を魅了するはずなのです。

 どうしてもやらなければならないのならばそれで良い。ただベスト10を選ぶライター陣紹介欄には、せめて各々が大切に思う「オールタイム・ベスト10」を併せて掲載して欲しい。そうすれば、その人がどんな映画を観てきたのか、どんな嗜好を持つ人なのかが解るのでこの手の雑誌を観る時の参考になるのではないだろうか。

 映画専門誌でも、やっつけ仕事のような文章を見ることが一度や二度ではないので、キネ旬あたりには詳細なオールタイム本などを企画していただきたい。映画検定で儲かるのだから、次はこれから映画を観ていこうと思っている人たちの道標となるような評価基準のしっかりした映画本を製作して欲しい。

 話は戻りますが、全国の書店に並ぶ本や雑誌に自分の批評を掲載するからには、自分の中に基準があるはずですので、「自分の基準に照らし合わせるとこれは40点しかないが、この年は不作であるために最高点でも50点だから、この作品は今年の2位」とか書いてくれると、とても良心的で解りやすい。ただ「今年の一位はこれ!」などと言われるよりはよほど信頼が持てる文章になると思います。

 またこのようなベスト10というのは公開年度だけで簡単に絞ってしまいますが、全ての映画を観ている人など一人もいないわけですから、10年前の映画でも今年観た人にとっては新作だと言うことも出来ます。

 今年公開の何十本の映画よりも、今年観た何十年も前に公開された名作映画のリヴァイヴァル上映での10本の方が圧倒的に優れていると感じた人にとっては、このような年度のみの作品だけで判断する年末恒例企画はまったく無意味なものであるといえます。

 商売上、どうしてもやらなければならないのは分かりますが、毎年このような企画を読むにつれ、無意味さを感じてしまいます。

 そのために必要になってくるのが各々の基準映画になってきます。それがオールタイム・ベスト10なのです。執筆者の誰かにとって、今年公開された作品の中にもしベスト10に入ってくる作品があったとすれば、その人にとっては最高の年になったといえます。

 褒める時の書き方も変わってきます。「ベスト10」のなかでも第三位に入る作品などになってくれば、そのひとが引っくり返るほど衝撃を受けた作品をその年の監督が生み出したことになるのです。

 評価基準もなにもなしに百家争鳴状態になっているのが映画批評の現実でしょうし、誰も理解できない文章を崇めるような風潮のないことを祈るばかりです。難しい文章よりも簡単な文章を書くほうがより難しいのです。

 オールタイムベスト10基準の批評に是非期待したい。でも結局はまたベスト10企画ばっかりなんだろうなあ。つまんないなあ。

 ちなみに個人的なオールタイム・ベスト10を記載しておきます。順不同でどれが一番というのではなく、映画芸術として「素晴らしい」10本として捉えてください。本当はベスト100くらいまでは書いていきたいのですが....。

 オーソン・ウェルズ監督の『市民ケーン』、コッポラ監督の『ゴッド・ファーザー』、黒澤明監督の『七人の侍』と『天国と地獄』、溝口健二監督の『近松物語』、フェデリコ・フェリーニ監督の『8 1/2』、D・W・グリフィス監督の『イントレランス』、アルフレッド・ヒッチコック監督の『北北西に進路を取れ』、フランソワ・トリュフフォー監督の『大人は判ってくれない』そしてスタンリー・キューブリック監督の『2001年 宇宙の旅』です。

 次に個人的に「大好きな」10本です。スティーブン・スピルバーグ監督の『激突!』、リチャード・レスター監督の『ア・ハード・デイズ・ナイト』、黒澤明監督の『用心棒』、セルゲイ・エイゼンシュテイン監督の『戦艦ポチョムキン』、小津安二郎監督の『晩春』、アルフレッド・ヒッチコック監督の『疑惑の影』、ジョン・ヒューストン監督の『マルタの鷹』、本多猪四郎監督の『ゴジラ』、溝口健二監督の『山椒大夫』、そしてスタンリー・キューブリック監督の『現金に体を張れ!』の10本で、これらの作品は年一回は必ず観たい作品群です。

 ついでに「魅力的な」10本です。アレハンドロ・ホドロフスキー監督の『エルトポ』、セルゲイ・エイゼンシュテイン監督の『アレクサンドル・ネフスキー』、アンドレイ・タルコフスキー監督の『惑星ソラリス』と『鏡』、スティーブン・スピルバーグ監督の『ジョーズ』と『太陽の帝国』、フリッツ・ラング監督の『メトロポリス』、チャールズ・ロートン監督の『狩人の夜』、チャールズ・ヴィダー監督の『ギルダ』、そしてジャン=リュック・ゴダール監督の『ウィークエンド』と少々癖のある作品が並んできます。観る人によって、好き嫌いがはっきりと分かれる作風を持つ監督ばかりではありますが、各々魅力に溢れる作品群です。

 最後にオールタイム・ワースト・10です。出来るだけ観ないようにしている作品群なのですが、何かの拍子に観てしまう事もあります。というか年々増え続ける一方なので困ってしまいます。すぐに忘れてしまうので10本がなかなか思い浮かびませんでした。

 『デビルマン』『ピンチランナー』『アダムス・ファミリー』『ランボー3』『ロッキー5』『ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣総進撃』『ガメラマッハ文朱が出てるヤツ)』『いつか誰かが殺される』『プラン9・フロム・アウタースペース』『ピンク・フラミンゴ』....。

 那須博之が二本、シルヴェスター・スタローンが二本入っています。ある意味で快挙かもしれません。予算、宣伝と中身が一致しないことが良く解ります。