良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『ブラザーズ・グリム』(2005)老いたり!テリーと見るか、仕方ないよ今回はと見るか?

 監督の名前や前宣伝だけを信じたら、劇場に行った時にとんでもない目に合わされるので気をつけましょうという典型的な作品が、この『ブラザーズ・グリム』という作品ではないだろうか。今でも読み応えのある、せっかくのエピソードの宝庫であるはずのグリム童話を全く活かしきれていません。  何やっているんだ!テリー!このテリーはテリー・ギリアム監督のことであり、テリー・ファンクではありません。皮肉もなく、セルフ・パロディもなく、バロック趣味に走るでもなく、キャラクターの作り込み、話の展開、ファンタジーにも徹し切れていない甘さ、そしてCGの雑な出来栄えと何を評価してよいのやら分からない作品でした。  テリー・ギリアム監督というと『未来世紀ブラジル』『12モンキーズ』などを思い浮かべますが、なんといっても『誰がドンキホーテを殺したか?』(のちにドキュメンタリー『ロスト・イン・ラマンチャ』として発表)の失敗が尾を引いていたのは間違いありません。そのためか思い切ったことはまったく出来ない立場でも、渋々ながら監督を引き受けたというのが今回の実情ではないでしょうか。  作りたいものは別にあるが、大コケのあとだから言いたいことは何も言えずに淡々と作らねば自分の将来は閉ざされてしまう。そんな哀愁が漂いかねない撮影現場だったのではなかろうか。しかしあくまでも出来上がったものに責任を持たねばならないのも監督の定めなのです。受ける栄光が大きい分、受ける批判もまた大きいのです。  この作品をDVDで鑑賞したのはかなり前なのですが、あまりに酷い内容のスカスカさにどう書いて良いのか迷い続けていました。ではどうすればこの作品はもっと良くなったのでしょうか。  まずはグリム童話の特徴である残酷さを美しく映像化することでしょう。美しさと残酷さは矛盾せずに映像の中に表現できるはずです。中世から近代にかけての不気味な世界観を貫いていけば、平均的なホラー映画を質的に簡単に超えていくことも可能な題材が沢山あったと思います。  次に必要なのは作品をブラック・コメディにするのか、ファンタジー冒険物にするか、ゴシック・ホラーとして製作するのかという観客の絞り込みではないだろうか。どっちつかずが酷くなったために何を言いたいのか、言い換えれば何がテーマなのかが分からないものになってしまった感がある。  これらを改善するだけでも見応えある映画になっていたはずです。せっかくの予算を掛けるのですから良いものを観たい。今回はDVDだから許せますが、劇場の大スクリーンでこのような粗だらけの代物を観ていたならば、エンディングの途中で立ち去り、一日気分が悪くなっていたかもしれません。  ただこのまま終わるようなテリー・ギリアムではないと信じております。言ってあげたい。 「テリー!フォーエヴァー!」と。 総合評価 48点 ブラザーズ・グリム DTS スタンダード・エディション
ブラザーズ・グリム DTS スタンダード・エディション [DVD]