良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『バブルへGO!! タイムマシンはドラム式』(2006)よく仕上がっていて、バブル世代は感涙!

 亀山千広製作、君塚良一脚本という『踊る大捜査線』コンビによって送り出された、久しぶりのホイチョイ・プロダクションズ作品が、この『バブルへGO!! タイムマシンはドラム式』です。主演級には広末涼子阿部寛、そして薬師丸ひろ子を迎え、脇役にも小木茂光劇団ひとり森口博子吹石一恵伊武雅刀伊藤裕子を起用しています。 <ネタバレ多いので、観に行く方はご注意!>  カメオ出演も豪華で、小野ヤスシ露木茂八木亜希子飯島愛飯島直子ラモス瑠偉が本人役で出演し、オーロラ・ヴィジョンでは『DIAMONDS』のプロモで歌うプリンセス・プリンセス奥居香資生堂のCMに出ている今井美樹、『鉄骨飲料』のCM(そーれ、そーれ、てっこついんりょー♪やがてちとなる!ほねとなる!~♪)での鷲尾いさこなどバブル時代を懐かしむ映像がテンコ盛りです。  当然ディスコ(今はクラブかぁ。)で掛かるナンバーも懐かしのものばかり。MCハマー『ユー・キャント・タッチ・ディス(ハマーさん、破産したあとどうなったんだろう?MC小宮で『遣唐使です』というのもありました)』、C+Cミュージック・ファクトリー『ゴナ・メイク・ユー・スウェット(最初聴いたときはティナ・ターナーの新曲だと思っていました。エヴィ!バデエ!ダンス!ナウ!♪)』、ボーイズ・タウン・ギャング『君の瞳に恋してる(たしかトミー・フェブラリーもカヴァーしていたような)』が懐かしい。  音楽の選曲は素晴らしかったと思います。まさにあの時代に流行っていた人たちでした。個人的には彼らに加えてガンズ&ローゼスなども好きでしたが、ディスコにはへヴィメタは掛かりませんから仕方ないか。  話の筋は2007年に住む未来の財務省の窓際の役人、阿部寛が現在の危機的な経済状況を変え、日本の安定と成長をさらに進めるべく、崩壊の一因になったとされる不動産融資の総量規制の通達(土地の短期的投機から利益を稼ぐ従来の銀行のあり方を改め、転売を禁止する通達)を大蔵省が宣言する前の日々に未来人を送り込み、この通達を止めさせるというSFチックなストーリー展開です。  実際に株価や円が暴落したのはイラクフセインクウェートに侵攻した後だったような記憶があります。あのときドルを買っていた人は大金持ちになったんでしょうね。今も昔も日本の政治家は無能でした。  役者と脚本を変えれば、シリアスな作品になったかもしれませんが、これはこれで十分に見応えのある娯楽作品に仕上げられています。楽しい画面が沢山出てきます。  現在という時代設定で演じられたロケシーン(借金を抱えた広末を追いかける借金取りの劇団ひとり)がまず冒頭にあり、タイムスリップした後にもう一度同じロケーションで追いかけっこがあり、そこでの設定は広末をナンパするために彼女を追いかける長銀!に就職する劇団ひとりという風に変わっていきます。こういった同人物・同位置・異シチュエーションという画面は随所に出てきます。  遊び感覚がフィルムに散りばめられています。君塚・亀山コンビはともすると「リンク」ばかりが先行してあざとくなりがちなのですが、今回は控えめにやっているので、かなり楽しめました。そもそもドラム式洗濯機タイム・マシンになってしまったという段階から既に壊れ始めています。天才バカボン的ワールドが炸裂しているような気がしました。  しかもこのタイムマシンは日立製なのです。大画面に映し出されたタイムマシンを観た時には思わず笑ってしまいました。時代ネタだけではなく、細かいところにクスクス笑いを仕込んでありますので、見逃さないようにしてください。  化粧やファッションも今見ると笑えます。バブル期に多く棲息していた「ワンレン・ボディコン・爪長・ハイヒール」な女たち、「渋カジ、DC、ドンペリ、ポルポル(ポルシェのことです)」な男たち。確かにあの頃あんなヤツらが大勢いました。眉毛が異常に太いのも当時は当たり前でしたが、今になってみると結構変ですね。  ユーロ・ビート(カイリー・ミノーグとかも使って欲しかったですね)で盛り上がるマハラジャ、ジュリアナ(ちょっとあとかな?)、トゥーリアなどディスコのお立ち台ギャルクルーザーでのパーティなど傍目にも異常なほど狂喜乱舞な一時代だったと言えましょう。昭和元禄などという言葉もありました。   脚本についてはタイムスリップものではタブーと言ってよい同時間に同一人物が二人存在するという暴挙を犯してはいますが、コメディなんだからそう肩肘張って観る必要もないでしょう。二人存在することから起こる楽しい場面も多数あります。  広末を当初はナンパの対象としてしか見ていなかった阿部は、彼女が実は自分の娘であると解った瞬間から、誰かれ無く口説きまくるナンパ師から、厳格なお父さんに変わってしまうところはたまらなく可笑しい。  ラスト・シーンでのハッピーエンドは予想できましたが、あそこまで超ハッピーになっているのには笑うしかありませんでした。映画の終わる最後のテロップにはさすがにくどさを感じましたが、あれは君塚・亀山コンビのお約束だから良しとしよう。  演技面では阿部寛が上手くシチュエーションの違う三つの役(観ればどういうことか解ります。)を演じ分けていたように思いました。コミカルな部分もあり、それがリアルではないという意見が出てくるかもしれませんが、あれはれで成立しているのではないでしょうか。  広末も頑張っていたのではないでしょうか。彼女は確か現在は一児の母であり、歳も20代中盤から後半にかけてという歳だった筈ですから、競泳用水着やらへそ出しファッションはかなりきつかったのではないだろうか。あまり違和感なく溶け込んでいたのが不思議でした。芸者姿で現れる場面の方が綺麗だったような気がしました。  悪役を務めた伊武はこの映画を引き締めた貢献者でした。彼のずる賢い高級官僚が登場しなかったならば、気の抜けた作品に成り下がっていたのではないか。特に現在の老け役の彼が放っていた異様な悪臭(所作動作や目つき)は政治家やら経済界の大物と呼ばれる人々が放つ悪臭にとてもよく似ていた。  ほかに演者で良かったのはまずは伊藤裕子。彼女は何故あんなにバブル期のファッションが似合っているのでしょう。吹石の太い眉には笑いが出ましたが、伊藤の精悍なトサカヘアとボディコンはリアルすぎて笑えない境地に到達していた。また小木茂光の官僚役もしっくりしました。あのサスペンダーは彼が一世風靡セピアのリーダーだったことを知る者には郷愁を感じさせる演出です。(そいや!そいや!そ~れそれ!『前略、道の上より』)  CGで再現された東京の様子がまた懐かしい。レインボー・ブリッジを建設している最中の映像、架空未来で3本掛かっているレインボー・ブリッジたちの映像はCGならではのものでした。ビル群が徐々になくなっていくことで表現した時間の経過も楽しめました。  バブル期らしい小道具の使い方も素晴らしく、ついつい演技だけでなく、映し出される鉄骨飲料、はちみつレモン、ロフト風高級マンション、イーグルスのLPジャケット『ホテル・カリフォルニア』を飾っている部屋、ファジーという言葉などに目が行きました。  中でも笑えるのは携帯電話の馬鹿でかさ!トランシーバーよりでかい!僕がはじめて携帯電話を数多く見たのは香港でした。あの当時はあれだけ馬鹿でかかった携帯でも、「うわあ!歩きながら電話が出来るなんて凄いなあ!」などと素直に感心していました。  まさか写真が撮れる、メールが送れる、動画も撮れる、財布代わりになる、TV電話もオッケーな時代になるなんて思いもしませんでした。TV電話なんかウルトラ警備隊しか持っていませんでした。いまじゃ女子高生は当然のように持っているし、小学生ですら持っている時代です。  ただ残念だったのは観に来ていた観客たちが20代の人ばかりだったので、僕が笑えるところでも全く反応できていないことでした。彼らはバブルの時代を生きていなかった人なので、画面に出てくる様々なギミックがまるで分かっていなかったのです。  そのため仕掛けが解らず、退屈したのかマナーに反する行為(携帯を開く馬鹿男、しゃべる馬鹿カップル、豚のようにポップコーンを食べ続ける馬鹿カップル)で溢れていました。静かに観れないのならば、そんなに寒くないのだから、外で遊べと言いたい。  いつも思うのですが、なぜ映画館にポップ・コーンや音の鳴るお菓子が売っているのであろう。そんなに喰いたきゃ、外で食えと言いたい。映画館に来ているから映画ファンとは限らないという当たり前の現実にあらためて気付きました。  バブルへゴーというのはバブル時代とバブル、つまり洗濯機で行くというのを掛けているんですかねえ?しかしまあ、「タイムマシンはドラえもん」じゃなくて良かった? 総合評価 85点 バブルへGO!! タイムマシンはドラム式 スタンダード・エディション
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