良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『ファイナルカウントダウン』(1980)あまり覚えている人はいないのでしょうが結構良いですよ。

 『ファイナルカウントダウン』というとかつて人気があったへヴィ・メタル・パンド、ヨーロッパの代表曲を思い出す人が多いかもしれません。しかし今回取り上げるのはエスエフ映画の『ファイナルカウントダウン』です。  個人的には70年代後半から80年代に掛かる時期に製作されたSF映画の中では『カプリコン・1』『ブラジルから来た少年』などとともに思い出に残る作品でもあります。とくに『ブラジルから来た少年』はわが国では劇場公開されずに土曜ゴールデン洋画劇場ではじめて日本に流れたと記憶していますが、未見の方には是非見て欲しいSF遺伝子科学スリラーです。  さて『ファイナルカウントダウン』ですが、内容はというと現在の米軍空母ニミッツが演習中にタイムスリップして、第二次大戦直前の1941年12月6日のハワイ沖にいってしまい、翌7日に皇軍と局地戦に入るという奇想天外な物語です。  我が国では軍隊のタイムスリップ物といえば『戦国自衛隊』がありましたが、あれは陸自の小隊が戦国時代にいってしまいました。それがアメリカ版では移動基地といえる空母ごと時代を越える。  ドラマ的な見所は何といっても捕まえた零戦パイロットを尋問するシーンである。米軍中尉が合言葉「ニイタカヤマノボレ」や赤城、加賀、飛龍、蒼龍、翔鶴、瑞鶴からなる真珠湾攻撃用に出陣してきた日本海連合艦隊空母陣をすべていい当てた時に見せる零戦パイロットの驚きの表情は必見である。  彼(片言の日本語を妙なイントネーションで話すし、しかも「トリックはダメだ!」などと非国民的な外来語を平気で使っている)はその後、ヒロインが飼っていた犬(コリーかなあ。ラッシーと同じ犬種です。)が騒いだ隙を突き、機関銃を奪い、三人の兵士を射殺した後に自らも射殺されてしまう。彼らはまさに「犬」死でした。  そして実写で見る零戦(米国機を改造したものであろう)とトム・キャットとの空中戦は軍事オタクには堪らない至福の時であろう。圧倒的な性能の差をわざわざ見せつける必要があるのかどうか疑問ではあるが、米軍機の爆音と零戦のいかにもプロペラ機らしい飛行音はどこか味わいがある。音を聞き比べて楽しんで欲しい。  昭和版『戦国自衛隊』での武田騎馬軍団と自衛隊戦車との戦闘なども興奮しましたが、時代が微妙に被っている40年代と80年代の兵器がぶつかる様子も仮想シュミレーションとしては興味深い。昔のボクシングの試合やヴァラエティ・ショーがラジオから入ってくるシーンもタイムスリップしてしまった現状を音で表現していて、小道具として機能させている。  さすがにお金が掛かるためか連合艦隊及び米国太平洋艦隊の全貌を映し出すことはなく、レーダー映像や資料写真で誤魔化していましたが、B級作品としては設定もしっかりしている。マーティン・シーンを雇った、冒頭に影だけ出演する謎の資本家の正体が明らかになるラスト・シークエンスは見所のひとつであろう。  マーティン・シーンという人は『地獄の黙示録』に出ていたし、カーク・ダグラスは『突撃』に出ていたので、二人で三度(第一次及び第二次大戦、ベトナム戦争)の戦争を体験したことになる?マーティンが艦内の自室で鏡を睨みつけるシーンがあるのですが、ぜひともそのまま拳で割って欲しかった。  ラストで、1941年12月7日という過去のハワイに置き去りにされた二人(乗組員と議員秘書)と彼女が飼っていた犬との現在での再会するシーンは印象に残る。チャップマン上院議員(生きていれば民主党の44年の大統領候補だったので、ルーズベルトが死んだ後に大統領になっていた可能性のある人物だが開戦する前に行方不明になった。)など死ぬべきはずの人々を助けたことで微妙に変わる歴史のあやも興味深い。  タイムスリップに巻き込まれていく時に発生する青白い奇妙な嵐とその瞬間に生じる歪みを表現した映像は分かりやすく好感が持てました。『宇宙戦艦ヤマト』のワープする時の映像を思い出しました。  最後にあまり良い印象を持っていない問題点をひとつ。この映画には、ある綺麗なインストゥルメンタル曲がサントラとして使用されているのです。そしてその曲はとても有名な歌謡曲として一般の音楽ファンの耳に残っているのです。  明らかにパクリと思えるその楽曲は確か火曜日に放送されていた2時間ドラマの主題歌だったので、覚えている方も多いかと思います。岩崎宏美が歌っていた、あの名曲『聖母たちのララバイ』がまさかパクリだったとはその当時は気がつきませんでした。歌手には問題はありませんが、作曲者には問題があるのではないだろうか。  1984年に中森明菜が『北ウィング』を歌っていたとき、明らかにYESの『オーナー・オブ・ア・ロンリー・ハート』を、アルフィーが『メリー・アン』を発表した時にはジャーニーの『セパレート・ウェイズ』を思い出しましたが、影響とパクリは違うので作曲者にはオリジナルで勝負して欲しいなあと当時は感じていました。  総合評価 72点 ファイナル・カウントダウン
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