良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『宇宙水爆戦』(1955)誰もが一度は見たことがある有名キャラクター登場!SFの誉れ!

 おそらくSF映画ファンでなくとも、ほとんどのかたが一度は見たこと、もしくは塩ビ人形で遊んだことがあるかもしれない超有名なキャラクター、それがこの映画『宇宙水爆戦』に登場する、メタルナ・ミュータントではないでしょうか。スピルバーグ監督が愛してやまない『金星人 地球を征服』に登場する金星蟹に勝るとも劣らない個性的な造型を持つメタルナ・ミュータントはSF映画スターの中でも人気ベスト10に入ってくるでしょう。  しかし不幸なことに、現在彼の姿をビデオやDVDで見ることは出来ません。なぜなら大昔にビデオ化されたもののいまだDVD化されていないからです。ぼくもAmazonやヤフオク、海外の動画サイト、その他のオークション・サイトなどをたまにチェックしてきましたが、DVD化された様子はありません。  そのためか、『宇宙水爆戦』の中古VHSビデオは異常に高騰していて、約15000円で取引されています。有名な作品なので、特撮ファンは廉価で出れば、買う人がいるでしょうから、リリースして欲しい作品の一つです。『ドクター・モローの島』や『イット・ケイム・フロム・アウタースペース』などとともに発売されたら、迷わず買ってしまいそうです。大人だけでなく、子どもも取り込めそうなので、発売権のある方は検討して欲しい。
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 そんなときに、というか昨日の夕刊を何気なく見ていて、おもわず目を疑い、そして狂喜しました。なんとBS放送の深夜枠で、この『宇宙水爆戦』が放送されるというではありませんか!ほんまかいな!嬉しすぎます。  諦めかけていた映画をBSで見られるなんて嘘みたいです。これをやってくれるのならば、ぜひともSF映画の不朽の名作と呼ばれている『イット・ケイム・フロム・アウタースペース』も何とか放送して欲しい。昔々にWOWOWで一度放送されたことがあったのですが、見事に忘れていて録画し損ねてしまった映画だったのです。国営放送の力を最大限に活かし、放映権を取って欲しい。
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 ストーリー的には見事にSFらしい物語設定になっていて、さまざまな工夫を凝らしております。まあ、今の目で見たならば、失笑を買うシーンばかりなのでしょうが、ぼくはSFや特撮をこよなく愛する人なので、何も気にはなりません。ご都合主義の何が悪いんだ!「映画は人生を凝縮したものである」とヒッチコック監督も言っていました。  SF映画に限らず、ほとんどすべての映画はフィクションなのですから、「結局、2時間経ったら、全部明らかになるのだろう?」とか「ハッピーエンドで終わるのだから、人生とは違うさ!」などという夢のない人の言葉は全く気にはならない。ゴジラガメラの怪獣スター、R2-D2やC3POに代表されるロボット・スター、マスター・ヨーダやこの映画に登場するメタルナ・ミュータントに代表されるエイリアンたちの素晴らしさが分からない人、つまりファンタジーを理解できない人は映画の楽しみをかなり損しています。
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 シリアスな映画も見応えがあるでしょう。コメディ映画もたくさんあるでしょう。それらももちろん映画の一部でしょうが、もっとも映画らしい、映画でなければ醍醐味が伝わらない類の映画、それがSF特撮映画なのである。現実からかけ離れているようで、現実に題材をとった映画よりも深く人間性を抉り出す映画、それがSFであるべきでしょう。  お子ちゃま向けにしないで、大人が唸る映画を作ることこそ、もっとも肝要で、子供だましの映画は子どもも騙しきれないことに製作者サイドもいい加減気づくべきではないだろうか。子どもがもっと嫌うのは子ども扱いされることなのですから。何故、皆大人になると子どもの頃に持っていた大人への怒りや疑いを忘れるのであろうか(シリアスではない!旨い物食べてるとか、夜更かししてるとかです!)。  SF映画は子どもの感覚というか、柔軟性のある感性を保ち続けているか、老けてしまったかを測るリトマス紙なのではないだろうか。ちょっと大げさですが、非現実的な状況に没頭できるかどうかは結構大事なのではないかと思います。
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 最後になりますが、あれほど有名であるメタルナ・ミュータントの出番は恐ろしく少ないのに愕然としました。物語は科学者たちの葛藤や好奇心が主になって展開していくのです。つまりミュータントはほんの添え物でしかありません。しかも、さんざんじらしにじらして、ミュータントが登場するのは90分弱の作品中でも最後の15分のみです。  しかもなんだか鈍重で、バタバタしていて、魅力的とは言いがたい。製作途中でなかに入っていた俳優がチェンジしたといういい訳もあるようですが、それだけでは説明になりません。  スチール写真やポスターでは若い女性を拉致しているように抱えあげている様子がもっとも有名なのですが、そんなシーンはありませんでした。『ソドムの市』での電気椅子みたいなものでしょうか。『吸血の群れ』でも巨大なカエルが人間を飲み込むスチールがありましたが、そんなシーンはありません。インパクトこそが大切ということでしょう。 総合評価 80点