良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『ビートルズのアルバムがとうとうデジタル・リマスターで発売!』うーむ…。うれしさ半分ですかねえ…。

 ビートルズのCDすべてがデジタル・リマスターでとうとう発売されます。いつか発売される、そろそろ出るぞ、と言われ続けて10年以上が経ちました。その間、『イエロー・サブマリン・ソング・ブック』やら『1』やらを出しながら、マーケティングを続けていたアップルがようやくイギリス・オリジナル盤のデジタル・リマスター化に踏み切りました。  注目の発売日は2009年9月9日となったようです。あと3ヶ月ちょっとですね。しかしどうにも嬉しさが込み上げてこないのは何故だろう。たぶんリマスターによって、従来のというよりはアナログ時代の良さが消されてしまうのではないだろうかという危惧です。  1980年代後半のCD化の際も、音の聴こえ方や楽器の位置などのバランスを崩してしまい、なにか聴き慣れないサウンドになってしまったアルバムがいくつかあり、『ヘルプ!』『ラバー・ソウル』『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』などはその代表でした。  たしかにもともとのアナログ・レコードの音の配置自体がステレオ黎明期ということもあり、かなり極端に左右にセパレートされていたので、それを嫌ったジョージ・マーティンがリミックスした気持ちも分からないではありません。それにビートルズが欧米市場で重視していたのはモノラル盤だったわけで、ステレオ盤はあまり注意が払われていませんでした。実際、アメリカでは7対3の割合で、モノラル盤のほうが多かったそうです。

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 モノラルとステレオならば、ステレオの方が良い音だろうと思うのは大間違いで、キャピトルのアメリカ盤にしろ、パーロフォンのイギリス盤にしろ、テイクやミックスの違うものが山ほどあり、当時の家庭オーディオもモノラル主体でしたので、モノラル盤のほうが音に神経が払われているのです。  1980年代にCD化された際、デビュー盤の『プリーズ・プリーズ・ミー』から『ビートルズ・フォー・セール』までの4作品は全世界共通でモノラルで統一されました。言い換えると、ここまでのステレオ盤よりもモノラル盤のほうが優れていると、アップル・サイドも思っていた証拠でしょう。  ぼくが聴きだした80年代初頭は店頭に並んでいたのはほとんどステレオ盤でしたので、リアルタイム世代で聴いていた方とは音源がかなり違っていて、そういえば「『プリーズ・プリーズ・ミー』でのジョンの笑い声とか楽しいですね!」と言っても、モノラルで『ミート・ザ・ビートルズ』を聴いていた世代には「そんなのあったっけ?」となりました。  『ヘルプ!』より後のアルバムはすべてステレオ・フォーマットで発売されましたが、それでもジョージ・マーティンはそれらに再編集を施しました。その作業は難しかったでしょうが、アナログ・レコードに慣れたファンには聴きにくかったのではないでしょうか。しかも、そのリミックスする相手はビートルズなのです。  さらに前回は本来欧州ファンが聴いてきたモノラル盤を無かったことにしてしまいました。『リヴォルヴァー』『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』『ザ・ビートルズ』などはモノラル盤のほうが明らかにステレオ盤よりも迫力があります。またサウンド・エフェクトやテイクやミックス自体が違っているものが多く、聴いた印象が全く変わるはずなのです。  前回のリミックスはジョンというメインのメンバーがすでに他界しているなかで行われました。今回はさらにジョージまで亡くなってしまった後なのです。いったいどんな音にされてしまっているのだろう。  なぜ2009年9月9日なのかは全く不明ですが、今回はステレオ盤すべての単品及びボックス・セットの発売、そしてついにモノラル盤すべてのボックス・セットも出るようです。しかしこれが厄介で、マニアのほとんどの人はもうブートCDやアナログ・レコードで、すでにモノラルの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』も『ザ・ビートルズ(ホワイト・アルバム)』も所有しているのではないでしょうか。  また『リヴォルヴァー』にしても、ジョンの書いた『トゥモロー・ネヴァー・ノウズ』が通常のモノラル盤とはミックスが違い、一時は10万円以上の値段が付いて、超貴重盤だったはずの「MATRIX XEX 606-1」がブートCDで出回っている状況なので、それほど大騒ぎするほどの価値はない。

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 むしろキャピトル・レコードによる1966年のボックス・セット、つまりブッチャー・カヴァーの『イエスタデイ・アンド・トゥデイ』が出るのかどうかに興味があるマニアの方が多いであろう。三年くらいキャピトルのセットが出なかったのはアップル待ちだったのでしょうか。  しかし、おそらく、ぼくは3万円以上はするのであろうモノラルのボックスはもちろん、ステレオ盤のボックスも買ってしまうであろう。ずっと無視され続けたモノラル盤は正規版で出ること自体に大きな意味があります。海賊盤市場ではモノラル盤のほうが高値が付いたりしてましたので、それらの市場を駆逐する意味でも今回のリリースは正解でしょう。ただキャピトル・ボックスのときみたいに、ミックスし損ねて大失敗及び、回収騒ぎという流れにはならないよう期待したい。  また、おっかなびっくりではありますが、再度リミックスが施されているステレオ盤もじっくりと聴いてみたい。たしかに1980年代のミックスでは音がこもるような感じがありましたので、オリジナルの原音を損なわない処理がされているのか、そして「音」だけが良くなっただけで、音楽になっているのかに興味があります。