良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『イエロー・サブマリン』(1968)本人達は嫌っていたエプスタイン最後の企画。

 たしか1985年と1987年に見たきりだったのが、25年位前の『ビートルズ・アンソロジー』が放映されて、ブートでしか聴けなかったものがCDで正式に聴けるようになり、これらをまた買いなおした折に、ついでに見てからでも10年近くが経ちました。

 今回は初めてDVDでの視聴だったのですが、音のよさに驚きました。ただ昔レコードで聴いていたものを今のコンポで再生すると音がスカスカで呆然とするように、良すぎる音には反って閉口しました。

 もともとオリジナルのこの作品はモノラルだったので、2度目に再生する時にはモノラル音声で見直しました。こっちの方が好きです。

 作品としては当時アニメーションといえばディズニーの独占市場であり、子供の見るものという偏見が強かったでしょうから、この作品には世界中が驚いたことでしょう。奇抜なコラージュやシュールな映像、抜群の中期ビートルズのナンバーの数々。

 ポップ・アートやグラフィックデザインの先駆けを当時の音楽の最先端かつ最も人気のあった彼らが、無名だった監督の好きなようにやらせたことはとても意義のあることです。ビートルズの曲がただ突っ込まれているのではなく、意味を持たされて映像と共に生きています。

 映画に必要なものは映像、音響、そしてストーリーです。ここではそのうちの2つの面で、つまり音響と映像で当時の最高のものを堪能出来ます。

 選曲としてはメンバーが当初この企画に対して「漫画になるのは嫌だ」という意見が多かったので、残念ながら『ラバー・ソウル』、『リヴォルヴァー』、『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』と録音時期がバラバラです。

 そしてシングル盤の『愛こそはすべて』からの借用で済まされてしまい、そして残りの曲はそれらのセッション時にボツになっていた曲が新曲として用いられるという状態でした。

 この作品のサントラ盤も更に酷いものでプロデューサーのジョージ・マーティンが作ったインスト集をレコードのB面全てに配置するという最悪のLP盤で、僕の持っていたLPもA面は何度も聴きましたが、B面は友達にコピーする時のみでしたのでほとんど新品状態でした。

 過去のサントラ盤のようにビートルズナンバーとマーティンのインストが交互に来れば、より聴かれる機会も多かったでしょう。佳曲揃いなのでもったいない気がします。

 音楽で敵と戦うという発想はフラワームーヴメントが真っ盛りだった60年代後半らしいものであり、今見た場合にはファンタジー物のような現実性の無さを感じます。当時はまだ若者の間では、音楽で世界を変えられると信じられていました。

 笑うのは簡単ですが素晴らしい時代だったのでしょう。個人的にはこういう感覚で見る作品は大好きです。

 難を言えば、この時の声優が本人達ではないことと前述したとおりこの作品のために真剣に作られた曲がまったく無いことです。それでももともと捨てられていた『ヘイ・ブルドッグ』、『オール・トゥゲザー・ナウ』などは高水準の曲たちです。

総合評価 82点

 

イエロー・サブマリン [Blu-ray]

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  • 発売日: 2012/06/06
  • メディア: Blu-ray
 

 

 

イエロー・サブマリン~ソングトラック~

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