良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『僕の町から映画館が消える…。』20年以上、通っている劇場が閉館します…。

 今年第一本目の記事がまさか地元の映画館の閉館からになってしまうのは大変残念であり、寂しさが新年始まったばかりのちょっと期待する気持ちを完全に萎えさせてしまっている。自宅からバイクを飛ばすと、10分で行けた劇場が無くなるのです。毎月最低一本以上は観に行っていたし、去年は月に二回は行っていたのに、よもやの閉館のニュースに絶句してしまいました。

 これからどうしよう、新作を観るために他都市にまで行かねばならないのかと思うと、呆然としてしまいます。関西なので電車に乗って、ちょっと足を伸ばせば、一時間以内に行ける所はたくさんありますが、そういう問題ではなく、身近であるべき娯楽のひとつである映画を観られる環境が奪われてしまうのが本当に残念なのです。

 しかも奈良市はもうすぐ映画祭を開催しようといっている街なのに、繁華街に肝心の映画館がまったくないなどというのは失態ではないだろうか。盛り上がる訳のない状況に陥っているのがつらい。先月、『イングロリアス・バスターズ』を観たのが最後の思い出になってしまうのだろうか。

 ぼくがこの街に引っ越してきてから、すでにもう20年以上経っていて、この街で最初に観た映画はスピルバーグ監督の『太陽の帝国』でした。この頃はまだシネコンに改装される前で、昔ながらのだだっ広い映画館でした。それがいつのまにか最新型のシネコンとなり、10スクリーン以上を抱える大きな施設に変貌しました。

 ただ地方館の寂しさか、いつも満杯とは行かずに、入っても七分入りというのが最高でした。例外としてはスターウォーズ新三部作の第一本目である『スターウォーズ ファントム・メナス』と『踊る大捜査線2』がフル・ハウスになったくらいでした。また新作でも、公開から三日も過ぎれば、ほとんどの作品が三分も入らない有様で、去年の大ヒット作品であるハリー・ポッター・シリーズの続編も、20世紀少年の最終作品も観客は僕一人というのが何回かありました。始まってから一週間も経っていないうちからこんな感じだったので、心配はしていたのですが、まさかの閉館には驚きました。

 昔、ピーター・ボグダノビッチ監督の『ラスト・ショー』を観たときに、「ああ、映画館がなくなってしまうのはつらいだろうなあ…。」と他人事のように感じて見ていましたが、まさか自分の街でもこんなことが起こってしまう日が来るとは夢にも思いませんでした。

 友達と一緒に観に来たり、当時の彼女と手をつないで観に行ったり、甥っ子たちを連れて観に行ったりした思い出のある劇場がなくなるのは非常に寂しい。

 ぼくはいったい何本の映画をここで観たのだろうか。数えたこともなかったが、二十年以上の長きに渡った奈良での生活で、年間平均にしたら、月一で通っていたであろうから、少なくとも二百回以上は新作と呼ばれる映画を観てきたことになる。

 去年は特に月二本を目標にしていたので、合計二十回以上も通った劇場でした。いざ閉まるとなると、なんだか感慨深い。いつもスキスキで、スクリーンに二人とかも頻繁にありましたので、正直大丈夫かなあと心配しておりましたが、とうとう現実になってしまいました。

 映画館のない街とは、なんて夢のない場所でしょう。ゆったりと現実の生活で付いてしまった世知辛い垢を落としてくれる空間が無くなるのかと思うと心のダメージが大きすぎる。電車に乗れば、一時間以内で大阪にも、京都にも行けるし、奈良の他都市にも出かければ良いのでしょうが、なかなか割り切れないし、移動代に往復千円以上支払うのも癪に障る。

 年明け早々、映画ファンにとってはかなりショッキングな現実を突きつけられてしまいました。せっかく劇場に通う習慣を取り戻したにもかかわらず、また逆戻りしてしまいそうな年明けになりました。まだ地元に劇場のある皆さんはぜひとも劇場に通い、映画の灯を消さないようにしてください。