良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『サマーウォーズ』(2009)楽しく見れるが、なんとも形容しがたいアニメ。

 観に行こうかなあと思っているうちにいつの間にか公開が終わっていたアニメ映画でした。その年の日本アカデミー賞で色々な賞を取っていたので、その週にツタヤに行ったときに借りました。  結論としては楽しく見れたのですが、なんとも書きようのない作品だなあという思いの強い作品でした。キャラクターがみな良い人過ぎるのとステレオタイプ的な描写が多すぎるように感じました。
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 擬人化したアバターを使って、ネット世界で色々と行動するという発想は楽しい。大昔に見た『トロン』は実写でした。これも実写で良かったのではないか。  アニメでやる必要のあるのはネット上での場面くらいで、そのほかであれば、ほとんど実写で十分だったと正直思いました。この点がクリアされていれば、さらに楽しめたのではないだろうか。
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 ネット世界と現実世界はかなりリンクしてきていて、たとえば書店に行く機会よりもアマゾンで検索して本を探すことの方が増えてきている。毎月の給与明細もネットで確認するようになってから数年が過ぎる。スカパーのチャンネル変更も10年前は電話の先にオペレーターがいて、逐一応対しながら変更していたが、今ではネットでログインして、好きなチャンネルの変更をするだけで、1時間もすればそのチャンネルを見ることが出来る。  株式を買うのもネットで出来るし、為替すらFX投資が広まり、一夜でかなりの額を稼ぐ人もいるようです。十年前は現実離れしていたでろう話が今ではごく普通に行われている。
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 こういう状況になっている現状ではこのアニメでの話はすでに古臭く思えてしまうのです。暗算で解読できるようなパスワードなど80年代の『ウォー・ゲーム』じゃあるまいし、考えにくいし、嘘くさい。SF的なコンピューターの幻想がなくなり、家電のひとつになってきている今でははっきりいって通用しない脚本ではないか。  物語としては高校野球の県大会、ペンタゴンを巻き込むネット世界の大惨事未遂、ネットゲームの英雄とハッキングAIとの戦いを信州の大家族のかかわりにリンクさせるという荒業をやってのけている。
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 このへんから冷静に考えると無茶苦茶で、信州の片田舎の一軒家の屋根の下にハッキングAIの開発者、ネットゲームの英雄、天才数学少年、日本の政財界の大物と互角に渡り合う隠居のばあちゃんがいるという。この一家は只者ではないが、結局のところ、一部の人間の意向で国の命運が決まってしまうという現実も生々しく見える。  しかしながら、なんというご都合主義だろう。「アニメだから、まあイイや。」という免罪符がなければ、ただのコントでしかない。アニメだからこそ、きっちりと作って欲しい。アニメ好きはこういうご都合主義を嫌っている。ぼくらはアニメ・ファンといっても、ヤマトやガンダム、宮崎アニメの黎明期から散々大人たちやインテリたちに「たかがマンガじゃねえか!」とバカにされてきたわけなので、こういうアニメが文化だと言われ始めた時代の流れに乗っかっている作品はあまり評価できない。
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 もちろんこの映画は楽しいし、エンターテインメントとしては合格点をあげられると思います。実際ぼくも今年に入ってからでも、スカパーや地上波で三回ほど見ました。特に一気に大団円に持っていく後半の怒涛の展開は飽きさせません。でも評価はしづらい。なぜ花札を選択するのか?なぜ四光や五光がバンバン出てくるのか(出ねえよ!)?  この映画で実は楽しいのはおばあちゃんが生きているうちで、亡くなってからは大家族ドラマのようになってしまい、まるで『寺内貫太郎一家』とたいして変わりがなくなってしまう。小林亜星西城秀樹がいないだけです。
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 なんか勿体ないなあ、という印象が終始付きまとう。楽しいのに何かが違う。楽しかったはずなのに書いていくとなんか物足りない。不思議な虚無感とでも言いましょうか、昔風に言うと“クリープのない”コーヒーというか、山椒の入ってない鰻重みたいな感じでした。  そしていつも思うのですが、なぜわざわざ本職の声優ではない女優やら俳優を使うのか。この映画についてのことではありませんが、俳優の癖に台詞に感情を込められないような輩はアニメに来るなと言いたい。映画会社も誰々が声の出演をしています的な無意味な宣伝を止めてほしい。アニメファンは俳優や女優が声の出演をしているからといって、観に行くようなアホではありません。 総合評価 68点