良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『チャイナ・シンドローム』(1979)まさか自国でこのような事態になるとは…。

  まずは今回の地震で大きな被害に遭われた方々に心よりお見舞い申し上げます。ぼくらの住む関西でも多くの人が我がこととして今回の地震を受け止めていて、自分が出来ることをやっていこうという雰囲気になっています。長期的にサポートすることが必要になるので、一度募金したからそれでいいという感覚にはならないようにしたい。  うちの会社のスタッフにも秋田出身者がいて、今月末から地元に帰り、しばらくボランティアとして活動する予定ですので、彼に色んな物資を渡して配って貰おうとも思いましたが、かえって荷物を増やしては意味がないので、お見舞い金の形で役立ててもらうつもりです。  もともとわが国では第二次大戦時、広島と長崎でニ発の原子爆弾が投下され、多くの人命が失われたこともあり、原子力には今でもかなり強いアレルギーがあります。自衛隊へのアレルギーも神戸の地震の時には残っていましたが、当時の実績から信用も大きくなり、今回の震災でも大活躍してくれているようです。
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 1979年に、この映画が公開されてすぐのタイミングで、スリーマイル島での事故が起こり、そして25年前にはチェルノブイリの事故があってから、世論では反原発の動きがさらに強まってきてはいました。  その一方、現在原発を抱えている地方では都市への人口流出と過疎化が一段と進み、基盤産業であった農業・漁業など第一次産業が衰亡しつつある状態でもあったため、背に腹は替えられない自治体は怖くても新しい産業である原発を受け入れざるを得ない状況でした。  ぼくがこの映画をレンタル・ビデオで見たのは1980年代の高校生か大学生の頃で、ブルー・ハーツはまだ片面収録のセンセーショナルなアナログ・シングル盤『チェルノブイリ』をまだ発表してはいませんでした。
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 日本語吹き替え版をテレビで見た記憶とレンタルで字幕版を見た記憶とがあり、どちらが先だったかは覚えてはいません。最初にチャイナ・シンドロームという言葉を知ったのはいつだったかは覚えてはいませんが、映画よりは先だったのは間違いない。  その内容はアメリカの原発でメルト・ダウンが起こると、それが溶けきらずに地球の反対側の中国まで届くというブラック・ジョークでしたが、今この現状ではとても笑えません。  映画の内容は事故(トラブル)を隠蔽しようとする権力者(マスコミの上層部も含む。)及び資本側に対し、真実を知らせようと決死の行動を取る原発の現場技術責任者やマスコミの現場スタッフとの戦いの顛末を描いていく。
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 出演はマイケル・ダグラス、マスコミのリポーターにジェーン・フォンダ原発技術スタッフにジャック・レモンを起用していて、メジャー映画としても気合いが入っています。ジャック・レモンの印象がとても強かった社会派サスペンス映画でしたが、ただただ堅苦しいわけではなく、十分に引き込まれていく映画でした。  もちろん国家・メディア・資本家という中枢を叩こうとする内容なので、かなりソフトに改変せざるを得なかったでしょうから、製作者には不満があったでしょうが、それでも伝えたいであろうエッセンスはしっかりと残っている。  前述したように、とりわけ強く印象に残るのはジャック・レモンでした。暗めの映像が現実的で、シビアで良い雰囲気を出していました。最近の映画にしろ、テレビドラマにしろ、撮影機材の性能向上のためか、すべての情報を受け取ってしまう。
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 本来映らなくても良いような細かいディティールまで切り取って、見せたいであろう製作者の意図する映像に邪魔をしているのではないかと思うこともあります。つまり明るく鮮明に見えすぎるように思えるのです。  それはともかく、何よりもまさかこの国でここまで大きな事故と災害が起きるとは思いませんでした。この事故により多くの人々の運命と将来が大きく変わってしまうのは避けられませんが、一日も早く良い方向に進んでいくことを望みます。
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 しかしあと10年以上はこの映画を地上波で見ることはないでしょうし、地震津波などの恐怖を売りにするようなディザスター映画はわが国では製作されにくいでしょう。CS放送のアニメ・チャンネルでも『未来少年コナン』を放送していましたが、『大津波』などのエピソードや地盤沈下のある『サルベージ船』などがあるためか、予告もなく急に中止になりました。  被災者への配慮などでしょうか。当然あるべき配慮なのかもしれませんが、本物の自然災害の猛威と恐怖を経験している者には映画が作り出すCG映像などはしょせん現実ではなく、チャチに見えるからかもしれません。 総合評価 75点