良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『ライオン・キング』(1994)ジャングル大帝との類似点ばかりが騒がれましたが…。今は廃盤!

 ディズニー作品『ライオン・キング』は日本が世界に誇る、偉大なるクリエーターである故・手塚治虫の名作『ジャングル大帝』に酷似していたため、当初はパクリ疑惑などのダークなイメージがあり、興味本位なマスコミでかなり叩かれてました。ニュース等でも流れていましたので、覚えている方も多いでしょう。  それでも作品は在り来たりではありますが、主人公シンバの苦難と成長を描くなど、しっかりと正統派の物語展開で、傑作とまでは言えないものの公開当時から人気があり、ビデオ・レンタル及びDVDレンタルでも貸し出し中が多く、なかなか借りることが出来ませんでした。
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 その後、劇団四季のミュージカルでも採り上げられ、そのミュージカルが好評だったこともあり、『ライオン・キング』は安定した人気を保ち続けました。ぼくらの持つイメージもディズニーの映画よりも、劇団四季のシンバや動物たちのイメージの方が大きくなってきています。そのイメージをさらに決定的なものにしたのは“めちゃイケ”でのナインティナイン岡村隆史でした。  去年、久しぶりにこれが見たくなり、TSUTAYAに借りに行ったところ、OVA続編の『ライオン・キング2/シンバズ・プライド』と『ライオン・キング3/ハクナ・マタタ』はディズニー・コーナーにありましたが、最初の作品である劇場版『ライオン・キング』は置いていませんでした。
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 まあ、借りられすぎて磨耗してしまい、今は欠品しているのかなあと思い、近所のレンタル屋さんをくまなく回りましたが、どこへ行っても一本も見つかりませんでした。もしやと思い、Amazonで検索すると案の定、すでにDVDが生産中止になっていました。  ヤフオクで調べると、それほど高額にはなっていませんでしたが、定価以上で落札するのもなんだか癪なので、個人所有の美品のビデオをターゲットに落札して、久しぶりに自宅でこの作品を見ました。
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 どうしても『ジャングル大帝』と比べてしまう方もいるでしょうが、割り切って別物として見ていました。まあ、大昔に『ロボ・コップ』が出たときには「ギャバンじゃねえか(怒)」と毒づきましたが、輸出したのだと言い聞かせました。  よって、この『ライオン・キング』も手塚治虫の出汁を使った別の料理なのです。実際にこれしか知らなければ、特に問題なく映画を楽しめるでしょう。ただ気楽に見ることは出来るのですが、深みはないのは残念です。
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 また『ジャングル大帝』を知っていて、「レオ!レオ!パンジャの子!~♪」のオープニングが耳にこびりついたぼくでも楽しめました。そもそもアニメの大元になるのはミッキーマウスなのは誰もが認めるでしょうから、すべてのアニメにはディズニーのDNAが息づいているとも言える。  そう思えば、親に似るのはDNAや遺伝上は当たり前なので、さらに子どもが親の良いところを大いに見習っていれば、なんとなく見覚えのある優秀な子供が出来るでしょう(笑)
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 最近ワイドショーで中国のガンダムが酷評されたのはダサダサでグダグダだったからで、カッコ良かったら、もっと違う反応があったのかもしれません。  『ライオン・キング』に戻ります。画は今ではとんと見かけなくなってしまったセル・アニメなので、ぼくら世代にはCGよりも親しみやすい。
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 この映画が公開された翌年にCG作品『トイ・ストーリー』が大成功して、アニメ映画のスタンダードになるほんの手前の端境期の作品と言えるのがセル・アニメ全盛期、言い換えれば手塚治虫の全盛期だった『ジャングル大帝』との類似が指摘された『ライオン・キング』であったことはなんとなく個人的に興味深い。  作品の内容は結構ダークで、叔父の謀略などが描かれていて、大人でもけっこう素直に楽しめるのではないか。人間と動物との対立、つまり暗に人種問題を盛り込んだ『ジャングル大帝』に比べれば、どうしてもこじんまりとした印象を受けるが、物語そのものはきちんと纏まってはいる。
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 社会での差別や被差別の寓話である手塚治虫作品の方がテーマとしては深いが、今こういうテーマをディズニーがやるのは難しいのでしょう。『ダンボ』でコンプレックスを、『バンビ』で自然破壊を扱ったディズニーが今ではそういった深刻なテーマに挑まなくなってしまったのは昔から観てきた者とすると、なんだか歯がゆく思います。 総合評価 65点