良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『ジェット・ローラー・コースター』(1977)あまり知られていませんでしょうが、なつかしの作品です!

 先週の日曜日、近所のレンタル屋さんのパニック映画コーナーでふと目にしたのがこの『ジェット・ローラー・コースター』のタイトルが印刷された背ラベルでした。  大型化が進む一方のレンタル屋さんの膨大なタイトルの中から、お目当ての作品をピン・ポイントで探すのは難しいが、背ラベルの雰囲気で古いものと比較的まだ最近のものであろう作品とが見分けられることが結構ある。  これがルール1なのです。つまり背ラベルの字体が黒地に白抜きのシンプルなものだったり、邦画タイトルの古臭さで判別出来ることが多い。この次にルール2があり、それは同じく背ラベルに貼っていることが多い“吹き替えなし”のシールです。この二つが重なると結構七十年代以前の作品であることが多い。
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 小学生のときに近所の駄菓子屋の外壁には公開中の映画のポスターが入れ替わり、立ち替わりペタペタと貼られている掲示板があって、この映画のポスターもそこに貼られていました。  映画のジャンルはバラバラで、『ジョーズ』『13日の金曜日』『がんばれ!タブチクン』『ET』『ダーティ・ハリー』などさまざまなポスターが貼られていたのを覚えていますが、さすがに小5か小6のときに『ウォーター・パワー』『ミス・ジョーンズの背徳』『鬼龍院花子の生涯』『白蛇抄』が貼られたときにはドキッとしましたし、驚きがありました。  『ジェット・ローラー・コースター』もポスターが貼られていたなかの一枚でした。とくに何の変哲もないデザインでしたし、映画館まで見に行った訳でもなかったので、長い間すっかりと忘れていました。
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 それがタイトルを見た瞬間に急に思い出して、懐かしくなってしまい、すぐに借りてきてしまいました。ポスターをはじめて見てから、すでに30年以上経っている作品の記憶がなぜ蘇ったのか分かりませんでしたが、これも何かの縁なのでしょう。  当時の扱いはけっこう厚遇されていたようですが、今回作品を見た感じではいわゆるB級なのですが、名優ヘンリー・フォンダなどが出ていて、ヘレン・ハントもジョージ・シーガルの娘役で出演しています。撮影やロケーションもB級臭があり、これが逆にリアルで、アメリカン・ニュー・シネマ時代の色合いの名残があるように思う。  今回はじめて見ましたが、ポスターにあるようにパニック映画というわけではなく、サスペンス映画でした。そもそも世界最大のジェット・コースターが爆破されるとのキャッチフレーズがありますが、ポスターの画のコースターは破壊されません。  冒頭の田舎の遊園地のジェット・コースターを爆破する場面を見たときにはパニック映画的展開を予想できましたので、大いに期待して見ていましたが、派手な爆破シーンはここだけで、あとは犯人を追い詰めていく映画に変わっていきます。
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 つかみはオッケーなのですが、最初に派手なシーンを見せつけておいて、あとはひたすら地味な展開に持っていくのは確信犯的な詐欺師にも思えるがシナリオの持って行き方、そして映画の盛り上げ方としては失敗していると言わざるを得ない。  最後のほうで、もう一度ジェット・コースターがらみのハラハラさせる場面が出てきますが、爆破は一切なく、犯人を追いかけて、追い詰めるもののコースターに轢かれて死んでしまうという終わり方でした。  このクライマックスは残念ながら、冒頭のコースター破壊シーンで受けた期待度を100とすると50くらいしかありません。ここをどう判断するかで作品への評価が変わるかもしれません。個人的にはこのバランスの悪さから、竜頭蛇尾の印象がどうしても拭えない。  また犯人がなぜローラー・コースターばかりを狙うのかとかの犯行動機や犯人の心情などの犯人側の情報は一切語られず、捕まえる側のみの視点で語られていく。作品の上映時間は118分とけっこう長い尺です。サスペンス映画として、警察側の行動や追い詰めるプロセスを丁寧に描いている。
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 現在の感覚でこの映画を見るとなんだかかったるい印象を受けるでしょうが、1970年代当時の映画は普通にこれくらいの上映時間を持つ作品がほとんどでしたし、撮影等に監督の遊び感覚もありました。効率一辺倒ではない時代の名残を楽しみましょう。  カメラワークとしてはループするジェット・コースターからの観客視点で描かれているのは楽しく、まるで一緒にこれに乗っているような体感が得られます。  ただ字幕に大きな問題があり、セリフによって付いたり、付かなかったりで変に端折っていたりで、まるで一貫性がない。まあ、単純な映画なので、ある程度の英語力があれば、なけりゃないでも十分なので安心して見られます。
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 最近はDVDも過去の有名作品はあらかたリリースされてしまっているので、発売されるのもマニアックなカルト映画が増えてきているように思います。  『変態殺人鬼 鉄の爪野郎』『悪魔の凶暴パニック』『悪魔の調教師』『日本暗殺秘録』『犬神の悪霊』『ラストハウス・オン・ザ・デッドエンド・ストリート』『スナッフ』『絞殺魔』などタブー扱いだったり、ビデオ時代ならば、発売数量が見込めなかったようなタイトルがどんどんリリースされてきている。  つまりホラー映画マニアにはたいへんありがたい状況が生まれている。幻の作品『シェラデコブレの幽霊』なども著作権がそろそろ切れるでしょうから、ぜひとも安価版で発売してほしい。  カルト映画マニアとしてはホラーだけではなく、『ゴンドラ』『博徒七人』『徳川一族の崩壊』『ガキ帝国 悪たれ戦争』『きつね』『夕映えに明日は消えた』など大昔の邦画のマイナー系やメジャーでも現在のぬるい放送コードには引っかかってしまう問題作品をもっと見たい。  タイトル名の言い換えや問題シーンのみをちょっとカットしただけであとは問題がない作品もけっこうあるので、ここは各社の英断を待ちたい。  見せておくれよ! 総合評価 60点