良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『X‐MEN ファースト・ジェネレーション』(2011)過去作品を見ていなくても十分に楽しめます!

 ここ一週間で過去作品シリーズとなる4本のDVDを近所のTSUTAYAで借りまくり、仕事の合間を縫い、なんとか短期間ですべて見終えてから、休日に劇場まで観に行ったのが『X-MEN ファースト・ジェネレーション』でした。  10年来の長年のファンがこれを観たら、あちらこちらのちょっとしたシーンや設定にニヤニヤと反応できるのでしょうが、なにせ一夜漬けなので、難しい部分や気付かなかった部分もありますので、そこはご勘弁いただきたい。
画像
 試作機のセレブロを使って、チャールズがテレパシーを飛ばし、子供時代のハル・ベリー(ストーム)を探し出したり、ミュータント軍団に入る前のウルヴァリンヒュー・ジャックマンがワン・シーンのみのカメオ出演。)に会いに行って、門前払いされたりするのも妙に可笑しい。  サイクロプスになる前の能力をコントロール出来ないダメ超能力者だったアレックスに稽古をつけるシーンはかなり楽しく見ました。俳優さんは時代が違うのでもちろん違いますが、特徴を捉えた若い俳優を抜擢しています。
画像
 もともとはチャールズの妹分だったミスティークがさまざまな葛藤の後にマグ二ートーについてゆくシーンを見ると、過去作品群で何度か倒すチャンスがあったのに、マグニートーやミスティークなどの相手を絶対に殺さないチャールズが何故そうしないかの、というよりどうしても出来ない理由が分かります。  この作品ではチャールズとエリック(マグニートー)が敵同士になるきっかけとなるエピソードが詳細に語られる。散りばめられたエピソードの中にはエリックの数回に渡る説得により、ついにミスティークがマグニートー側につく過程やなぜチャールズが車椅子生活を送らなければならなかったかの秘話もあって、シリーズのファンには興味深かったでしょう。
画像
 マグニートーはシリーズでずっと悪役として描かれてきたが、彼も人類による人体実験の犠牲者であり、人間への根強い不信感が芽生える原因となるナチスによるユダヤ人虐殺が示される。人間を信じない彼が到達する結論はミュータントによる支配であり、憎悪を剥き出しにしてくるが、やろうとしていることはナチスの人種優位論と変わらないのはなんとも皮肉です。  人種への差別意識の根深さや不信感を消し去ることとすべてを受け入れた上での諦観と希望が深刻になりすぎない程度に、表現が直接的過ぎないように、そして観客がやんわりとオブラートに包み込んだ作者の怒りを受け入れやすいように仄めかしている。  ミュータントによる公民権運動を描いているこの作品は肌の色や能力、障害に対して観客がどう取るかの踏み絵になるのかもしれません。青い肌を持つミスティークやビースト(もともとはさえない科学者だったのですね。)が自らに言い聞かすようにミュータントでいることは誇りだと宣言するシーンには色々な意味があるのでしょう。
画像
 共存か支配かを常にディベートしているチャールズとエリックはコインの裏表であり、どちらかの要素が強く出るか弱いかのバランスの違いでしかない。この映画ではコインの裏表を使う演出がオープニングとクライマックスで二度繰り返されるが、加害者と被害者が交代するだけになるのは皮肉でした。  ユダヤの民であるエリックはオープニングでは弱い立場で、母親を目前で殺害されてもショウの言いなりにならざるを得ないミュータントにすぎませんでした。それが力を覚醒されて、実力を持つと親の敵である彼を殺すために執拗に付け狙い、ついに追い詰める。この瞬間、彼は憎んでいたはずの立場、加害者になってしまう。  絶対的な善はそこには存在せず、絶対的な悪もまた存在しない。すべてのミュータントに悲劇的な過去と孤独な生き様があり、その能力の凄まじさの影には哀愁がつきまとう。マイノリティには心の平静はないのでしょう。
画像
 悲劇的な方向に進みそうではあるが、善の心がまだマグニートーの深層心理に残っていることを読めるチャールズは『スター・ウォーズ』のオビワンの役どころのようであり、最終的にはミュータント軍団同士のハルマゲドン後に敵同士だった彼らがお互いに解りあっての大団円という流れなのでしょうか。  今回は監督が交代しましたが、ブライアン・シンガーは脚本に関わっていて、映像にはブライアン・シンガー風味が効いていて、60年代の作り込みが秀でていて、どこかノスタルジックな印象を与える。  アメリカには住んだことはないのだけれど、こういう感じだったのだろうという感覚です。音楽も聞き覚えのある名曲がいくつもあり、『ラ・ヴィアン・ローズ』『グリーン・オニオン』『ヒッピー・ヒッピー・シェイク』などが掛かっていました。
画像
 監督はマシュー・ヴォーンが務めています。ミュータントたちが若い頃の作品なので、キャストも大幅に変わっていて、ジェームズ・マカヴォイ(チャールズ)、マイケル・ファスベンダーマグニートー)、ニコラス・ホルト(ビースト)、ジェニファー・ローレンス(ミスティーク)、ケヴィン・ベーコン(ショウ)、そしてジェイソン・フレミング(アザゼル)らが出演しています。  ケヴィン・ベーコンの存在感が特に大きく、他を圧倒しています。アザゼルのルックスがまるでACミランの赤鬼サポーターかダース・モールのようであり、見ていて楽しい。尻尾の針で刺すシーンはギャグでした。 総合評価 78点
Soundtrack
Masterworks
2011-06-28
X-Men: First Class

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by Soundtrack の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル