良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『スカイライン-征服-』(2010)低予算なのに、おもいきり広げた大風呂敷をどうするのだろうか?

 一昨日に『X-MEN ファースト・ジェネレーション』を観たばかりなのですが、気の向くままに今週2本目の鑑賞になったのが『スカイライン/征服』でした。  『もしドラ』を掛けていた映画館での予告編を見たのみで他に何も情報を得ないで、チケットを購入するという衝動買いの鑑賞でした。エイリアンが侵攻してくる第一日目から始まり、二日目、三日目と物語が進んで行くにつれ、上映時間が90分を超えてしまいました。  一時間半が過ぎた頃、こじんまりとした本編部分と本来見せるべき特撮シーンのバランスの悪さを思い出し、広げすぎた大風呂敷をどうやって閉じるのかと思っていましたら、三日目の途中で画面が暗転し、急にディレクテッド・バイとなり、あっけなく終了しました。  そのときになって、はじめて続きモノ(というか続けたい?)だったことに気づかされました。最近のハリウッド作品の終わり方はほとんどが続編に含みを持たせるような感じになっていて、モヤモヤした気分で劇場をあとにすることが多い。  資金回収のためにあわよくば続編を作り、もっと儲けたいという欲深さが臭ってきて、なんだか微妙な気持ちになります。この作品も続きモノだったので、やれやれまたかという感じで困りはてました。  最初の作品を観てしまうと、最後まで付き合わなければ気が済まなくなるので、もらい事故に巻き込まれてしまったような感じになりました。今となってはあそこまで大きく風呂敷を広げてしまうと、どうやって着地点に持っていくのかに興味がいってしまいます。  そもそも大きい作品とは言っていますが、この物語はいったい全世界規模で起こっているパニックを扱っているのか、ロサンゼルスという局地的なそれを扱っているのかの情報が観ていた限りではまったくありませんでした。
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 またエヴァ使徒と同じく、襲来してくるエイリアンの目的も分からない。地球を圧倒する科学力を持っているが、彼らに知性を感じなませんし、彼らの会話シーンは皆無なのです。  エイリアン側の心理描写が皆無なのでむしろ気味が悪い。理解不能な敵としてしか今のところ登場していません。大量の人間を拉致して、人体実験をしているようなのですが、そんなことをしなければならない理由も分からない。  映画のストーリーを転がしていくはずの主人公グループが妊婦を除いて、皆が拉致されて殺害されてしまい、彼女の恋人は脳を摘出され、移植された醜いエイリアンの姿に改造させられる。  彼女の恋人は変わり果てた姿になるものの記憶が残っていて、お互いを認識して、なんとか彼女を救おうとしたところで唐突にエンディングを迎える。なんだこりゃとしか言えませんでした。  もっとも観客が感情移入出来そうだった可愛い女の子が真っ先にエイリアンに殺されてしまい、しかも死に様を描かれることもなく、あっけなく舞台から去っていった時点で期待度はどんどん下がっていきました。 
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 特撮シーンについては大画面で観るには良い出来でしたし、低予算でもここまで出来るのだという良い見本にはなったでしょう。ただどれもどこかで観たことのあるシーンばかりでした。『宇宙戦争』『クローバー・フィールド』『エイリアン』『第9地区』『トランスフォーマー』、それと敵によって改造人間になるというのは『仮面ライダー』でもあり、理由なく攻めてくるのはヱヴァと同じです。  本編シーン、しかも高級マンションの一室から一歩も出ずに映画の半分を費やすのは特撮シーンとのバランスの悪さを感じるが、低予算という事情があったからこその苦肉の策であることを考慮に入れると問題なしとしましょう。  そりゃあ、彼らだって、たくさんロケに行って、いろんな室外シーンや派手な特撮シーンを撮りたかったでしょう。しかしこれは何十億ものバジェットのついたスピルバーグやエメリッヒ製作ではなく、総予算10億円のハリウッドにしたら低予算作品なのです。  そんな作品が海を越えたアジアの田舎の映画館で掛かっているだけでも快挙なのではないでしょうか。大昔のB級ホラーやSFを見るようなあたたかい目で観るべきでしょう。ストーリー展開やアイデアは破綻していますが、特撮はけっこうがんばっています。  まあ、逆に言えば、もう少し話にひねりを効かせて、批評家筋やオタクファンの心を掴む作品にも出来たのではないかと思うと残念です。
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 最後の暗転場面で「TO BE CONTINUED」ではなく、「DERECTED BY」としたのは続編製作の願望と無理かもしれないという自信のなさの表れだったのでしょうか。なんか切ないですね。  続編が製作されるのかは観客動員数しだいなのでしょうが、おそらく第七日目までは描くでしょうから、パート3までは行きそうな感じに見えました。チャンスがあるかどうかは微妙なので、このまま終わり、何十年か経った後にカルト映画の続編として続編が作られたら、かえって楽しいのかもしれません。  もの好きなぼくはおそらく最後を見届けることでしょう。収拾できるのか、グダグダになってしまうのか。期待しても良いのだろうか。  期待はそんなにしていませんから、製作者側には一発狙いで間違っても3Dとかにはしないで欲しい。お金が掛かる割にはインパクトはなく、常に不満が残る。費用対効果で判断するとマイナスでしょう。さあ、カルト映画になるか、すぐに忘れ去られる一本になるかはみんなが映画館に行くか、ツタヤで異常に借りまくられるか次第です。 総合評価 52点