良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『ゴジラVSキングギドラ』(1991)微妙になってきた平成第2弾!それでも黄金に輝くギドラは別格!

 平成版ゴジラ映画の第一弾だった『ゴジラVSビオランテ』(1989)の好評を受けて、東宝が自信を持って送り出したのが昭和シリーズ最強の悪役キングギドラでした。  本多猪四郎が多くの作品を手がけた昭和シリーズにおいて、じつはゴジラキングギドラとの直接のタイマン対決は一度もなかったのがはじめてのマッチメイクとなりました。猪木対前田日明のような組み合わせに昔からのゴジラ・ファンとしては期待して、同じくG党(巨人ではない!)の友達と一緒に初日の映画館へ見に行きました。
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 当然のように、ぼくらの周りは子どもたちと親たちばかりという完全アウェイでしたが、スクリーンの大画面に集中しました。そのときは福岡の映画館で観たのですが、作品の舞台がなんと福岡で、キングギドラに破壊される天神の街並みと中洲界隈の様子をニヤニヤしながら観ていました。  前回の大阪と同様で、自分に縁のある街が舞台になると、なんだかテンションが上がるものです。あちこちに綻びのあるストーリー展開にはげんなりしてしまいますが、キングギドラが最初に飛来してくるとき、まずは海面にそのシルエットが映し出される。
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 まさにこの瞬間こそがゾクゾクとくる刹那で、ゴジラ映画ファンで良かったと思いました。けっこう広い劇場で、大画面で反重力光線を三つ首から撒き散らしながら迫ってくるキングギドラの飛翔シーンは歌舞伎の様式美を見るようで、興奮してしまいました。  ストーリーは再びグダグダになりつつあり、ハウマッチで活躍していたチャック・ウィルソンが演じた未来人リーダーはかなり痛々しく、アンドロイドという設定の外人さんM11(ロバート・スコット・フィールド)の動きとセリフがあまりにもぎこちなかった。
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 偶然かどうかは分かりませんが、この年の夏に『ターミネーター2』の鮮烈なCG映像のイメージを大画面で観た後のぼくらにとってはお正月前に観た『ゴジラキングギドラ』はそのチープさにけっこう辛かったのを覚えています。  現代人側のヒーローには豊原功補が起用されていましたが、『ダーティハリー』の名台詞「Make My Day!」を使ってみたり、『ターミネーター』のパロディを挿入したりと製作者側からの“面白いでしょ!ぼくたち”的な白々しい演出に萎えました。
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 さらに酷いパロディがもうひとつありました。第二次大戦の時代に未来人のタイムマシン的飛行艇に乗って、ゴジラ前史を見せられるのですが、アメリカ軍戦艦にはスピルバーグの父親が少佐役で乗船している。  UFOのような高速で飛行する未来人のマシンの話をいつか息子に伝えるとケント・ギルバート(そういやあ、このひともハウマッチに出ていたなあ…)に話す場面がある。つまり『未知との遭遇』のパロディなんでしょうね。  製作者のおふざけのつもりかもしれないが、上滑りしがちなオヤジギャグのようで、ちっとも面白くないぞと思いながら、このシーンを見ている自分を思い出したのは20年ぶり以上でした。
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 ヒロイン役の中川安奈がいったん惨敗したキングギドラをメカニカルに補強したメカギドラのパイロットとしてゴジラと対峙する。つまりギドラには自由意志はない。しかも三つ首を駆使しての攻撃を仕掛けるのですが、慣れていないのがモロに分かるぎこちなさでガッカリする。  いくつもの攻撃手段を一気に行うのであれば、エルメスララァのようなサイキックが必要なわけですから、せっかく現代人側には小高恵美というサイキックがいたので、ぜひともコラボして戦って欲しかった。
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 ただそうは言っても、伊福部昭がついに復活して音楽をつけてくれたのは大きい。彼の音楽が付けば、少々の話の破綻の無理は誤魔化せる。  また、せっかくキングギドラを復活させたのだから、できれば未来人のユニフォームはX星人のそれを採用して欲しかった。長老役で土屋嘉男を起用してくれていれば、なお感情移入できたはずです。ゴジラザウルスに助けられたと勘違いしている財閥会長の役というのはなんだかやり切れませんでした。
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 しかも本人は命の恩怪獣のつもりでも、ゴジラはそんなこと覚えているわけはないので、睨みつけられた後にすぐさま放射能光線で焼き殺される。吉本新喜劇だったら、「なんでやねん!」と激しく突っ込みを入れられてしまう演出でした。  脚本も不景気と震災で苦しむ今となっては夢物語で、23世紀では日本は世界唯一の超大国になっていて、この世の春を謳歌しているという設定で、そんな生意気な日本を叩き潰すためにテロリストがゴジラキングギドラを使って、攻撃を仕掛けてくるというあらすじなのでした。
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 ダメだなあと感じたシーンがいくつかあり、そのなかの二つを挙げます。まずひとつは第二次大戦中に米軍に壊滅させられる寸前だった日本軍小隊がゴジラ・サウルス(?)に助けられる。   ゴジラを生み出さないように別の場所にテレポーテーションさせるものの、当たり前のように、このゴジラ・サウルスが北極だったかどこだったか忘れましたが、別の場所でも核エネルギーを吸収して、予想通りにゴジラとなる。
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 また戦中は激戦の地だったが、今度は原爆実験の場所となってしまった島にはベビー・ギドラのようなペットロボットのドラッドが三体置いてけぼりにされて、原爆実験によってどういう理屈と仕組みでそうなるのかは誰にも説明できないが、予想通りにキングギドラに変化する。  あまりにも適当でご都合主義のシナリオにはがっかりさせられる。『ゴジラビオランテ』で大人の観客を呼び戻したのにまた期待を大きく裏切ってしまいました。
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 完成したばかりの東京都庁の建造物にキングギドラゴジラへ飛びかかって、押し付ける画面やラドンと同じく福岡中洲を破壊し尽くすキングギドラの雄姿など見所はありますので、本編さえしっかりしてくれていれば、もっと良い評価を受けたのではないかと思うと複雑です。  しかしまあ、何度見ても、キングギドラの造形って悪趣味だなあ。でも一番好きな怪獣ですし、小さい頃に買ってもらったソフビ人形の中ではバルタン星人とともにお気に入りでした。
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 今になって、冷静に見ていくと不満はたしかにありますが、特撮娯楽作品として割り切って見ていると十分に楽しめる。本来、理屈抜きに楽しむのが特撮映画なのですから、純粋にキングギドラの飛翔と三つ首の攻撃を楽しみたい。何度聞いてもあのギドラの「きゅるきゅる!」というあの泣き声は印象的です。 総合評価 67点
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