良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『獣人ゴリラ男』(1956)安すぎる!出オチ!エド・ウッドのレベルです。

 ずいぶん前からタイトルは知っているし、そこそこ気にはなるものの、わざわざ買ってまでも見たいとは思わない作品がけっこうあります。『獣人ゴリラ男』はそういう位置づけにあった作品で、特撮ファンのぼくへのアマゾンお薦め作品ではかなり上位にランクインしていました。  ジャケットのイメージが強烈なので、見たい衝動もありますが、得てしてこういうジャケットの作品というのは出オチ(お笑い用語で使われるもので、何かネタをやる前に登場するときの見た目のインパクトで笑わせ、内容に中身がないこと。)が多い。  昨晩もこれの映像がお薦めにありましたが、特に気にもせずにスルーしていました。今日になって久しぶりに近所のTSUTAYAに行ってみると、どどーんと『怪獣ゴルゴ』(伝説の怪獣映画。)『ドライブイン殺人事件』『スパルタの海』(戸塚ヨット・スクールを扱った、伊東四朗主演の青春映画!長いこと封印されていました。)『ファネラル・アサシン』(ビッグ・モローが主演した、アパルトヘイト下の南アフリカで撮影されたアクション)が置かれているではないですか。
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 さらに探していくと、『ミミズバーガー』(80年代レンタル黎明期にはホラー映画の片隅にけっこう置いている店が多かった!10年くらい前のTSUTAYA心斎橋店にボロボロになっても借りまくられているこの作品のVHSを見つけたときはなんか笑えました。)『人間ミンチ』(『ミミズバーガー』を撮った監督の代表作品。)『悪魔の植物人間』(タイトルがヤバいので、正直リリースされたのはビックリしました。)、そして『獣人ゴリラ男』がちょうど新入荷していたのです。  久しぶりの大漁で嬉しさのあまり、カゴにこれらをすべて放り込み、ついでに前田日明主催の『アウトサイダー19』を手に取り、店をあとにしました。しかしまあ、レンタルのラインナップも来るところまで来たなあと感慨深くなります。ずっと禁忌で、コレクターズ・アイテム状態だった作品をまさかTSUTAYAレンタルで見ることが可能になる日が来ようとは思いませんでした。この勢いだと『食人大統領アミン』『ホラー喰っちまったダ!』なども間違ってリリースされる日が来る日も近いかもしれません。  メキシコ映画というのも珍しいが、オープニングの感じはベラ・ルゴシボリス・カーロフが出てきそうなユニバーサル・ホラーのテイストがしていて、もしかすると楽しめるかなあと期待しましたが、期待はずれもいいところの散々な出来でした。イワン・コロフかバズ・ソイヤーみたいに筋骨隆々としたゴリラみたいなプロレスラーがマッド・サイエンティストの企みで殺害される。
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 ぼくはてっきり彼が甦って、ゴリラ男として大暴れするのだと思いました。ところが科学者の野望は成就することなく、彼は生き返りません。そもそも生き返らせるために、一回殺害して、ゴリラの脳を移植するというやり方自体が意味不明です。  じゃあ、誰がゴリなのかとゴリ探しをしていると、主人公のわりと二枚目っぽかったマスクマンが殺され、ゴリラ男にされてしまうではありませんか。しかもゴリラ男出現まで一時間以上を費やし、しかも被り物はモノマネで出てくる丹下段平に似ている。  仕上がりもドンキホーテ・レベルなので、のめり込むことも出来ずに何度も眠くなり、最後まで見るのに困りました。なんせ上出来だったオープニングの墓場シーン以降はずっとひたすら死体盗難騒ぎとメキシカン・プロレスの前座試合みたいのがゆるく続いていく。  空中殺法もドロップ・キックしかなく、退屈この上ない。満を持して登場するゴリラ男が丹下段平もどきでは嬉しくもない。またこのゴリラ男はかつての恋人の済むアパートに侵入し、彼女を拉致して、屋上に運び上げるもののそこで警官隊に銃撃され、屋上から路上に落下する。そう、『キングコング』の安過ぎるパロディーを見せられるのです。あまりにも痛々しい展開に気を失いそうになりました。タイトルは仰々しいがあまりにも中身のない作品でした。夜中に酔っ払って見るぶんにはそこそこ楽しめるでしょう。 総合評価 38点