『トップをねらえ!』(1989)庵野秀明の初期傑作!ヱヴァに通じるアイデアが満載!
庵野秀明が1980年代後半に手掛けた初期の傑作アニメがこの『トップをねらえ!』であり、このシリーズには後の代表作『新世紀ヱヴァンゲリヲン』の原型と思える数多くの設定やイメージを見ることが出来る。
軍艦内の標識の数々や書式にはヱヴァのファンならば、思わず笑ってしまいます。地上での移動手段として、普通に新幹線に乗っているレベルなのに、その一方では宇宙空間対応の高速攻撃型ロボットのガンバスターで未知のエイリアンと戦っている。
なぜ彼らと戦っているのか、どういう相手でどんな姿なのかという記述は一切ないのも使徒と酷似しています。宇宙人と互角に渡り合い、ワープも使えるなど宇宙開発が異常に進んでいるのはレトロ趣味と未来文明のアンバランスを狙っていたのでしょう。
またテレビ・シリーズでは全6話のうち、前半部はこれまでのロボット物のパロディ的な要素がかなり濃く、『宇宙戦艦ヤマト』のような艦隊戦、『伝説巨人イデオン』を彷彿とさせる攻撃や『コンバトラーV』などのロボットアニメでよく見た合体シーンがふんだんに盛り込まれていて、狙いがあざといのだがなんだか楽しい。
突然、最終回(第6話)がモノクロ画面のみで構成され、そのまま最後まで押し切った力業には驚かされました。途中には絵コンテかコミック雑誌を読んでいるような錯覚に陥りますが、最初からモノクロなので、それほど違和感がない。
これものちにヱヴァの予告編などで趣向を変えて、再現される。敵を殲滅するものの、自ら作り出したブラックホールに飲み込まれてしまう主人公たちが地球に帰還するときには12000年後の未来になってしまうのは『猿の惑星』のようです。
12000年後というキーワードだけを取れば、平成の人気アニメのひとつ、『創聖のアクエリオン』を思い出します。この感じだと好評だった『序』と『破』の後を受ける『Q』と『完』を残す、来るべきヱヴァの完結編のエンディングも突然のフラッシュ・フォワードからの初号機や弍号機の残骸が映し出されて、刹那にエンディング曲が流れていくという風になるのかなあと読んでしまいました。
もしくは地球に辿り着こうとすると、「オカエリナサイ」ではなく、「オメデトウ」と出るのかもしれない。映画シリーズの最後で「キモチワルイ」というのもなんだかイヤですが、どうなるのだろうか。
無意味なおっぱいポロリももちろんありますし、シャワー・シーンも押さえています。12000年後の世界にタイム・スリップしてしまい、絶望の淵に落とされるも、夜の街に照らし出されるメッセージは希望に溢れていて、とても良いエンディングのひとつだと思います。
あまり知られてはいないこの作品ですが、観る価値は十分にありますし、ヱヴァのファンであるならば、その原点のひとつであり、可能性のひとつでもあるかもしれないので、ぜひとも押さえておきたい。
総合評価 80点