良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『ゴースト/血のシャワー』(1978)当時はかなり怖かった思い出の映画。

 『デス・シップ』というビデオやDVDタイトルよりも、中学生の頃にゴールデン洋画劇場で紹介されたときのタイトル『ゴースト/血のシャワー』のほうがぼくら世代にはしっくりきます。  製作が1978年で、テレビで見たのがたぶん1983年か1984年なので、けっこう遅くにテレビに落ちてきたほうなのでしょう。オークションでDVDかVHSの媒体で探すときにキーワードを“ゴースト”で打ち込んでも、レスが返ってくるのはデミ・ムーア轆轤を回すヤツばかりでウンザリしてしまいました。
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 “血のシャワー”を入力して、ようやくなんとかこの作品にヒットしても、これがけっこう高額でDVDは6000円近くするものばかりです。さすがに思い出に残っているというだけで、B級ホラーにその金額はもったいないので、長期戦を覚悟して、限界額を2000円に決めて、何度もヤフオクに参戦しました。  半年くらい入札し続けましたが、いつも4000円~5000円が相場になり、あるときは7000円まで行くときもありました。先週もいつも通りの限界額で参加していましたが、3000円を越えてきました。
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 またダメかなと思っていましたが、すぐに1000円で出品されているVHSがあったので、気を取り直して再度アタックしたところ、終了まで4日あったもののぼく以外に物好きはいなかったようで、そのままの値段で落札できました。  ちょっとのタイミングのズレが今回は良いほうに作用していたようです。半年以上もかけて手に入れたVHSですが、肝心のストーリー展開は古き良き時代のロマンチックなお話と言えます。
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 ホラー映画の感想でロマンチックというのは奇異に思われるかも知れませんが、第二次大戦後、すでに数十年以上が経過している大西洋上にナチス・ドイツの拷問船が幽霊船と化し、いまだにさ迷い続け、新たな犠牲者を求めて攻撃を仕掛けてくるというのが大筋なのです。  現在の軍用原潜が海中海上をくまなくチェックし、宇宙からは軍事衛星が地上を監視している状況ではこのお話はもはや成立しなくなってしまったのです。
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 やるとすれば設定を大戦後すぐにしないと、製作本国のみで地味に公開されてから、ミラマックス経由で半年後にはレンタルに並ぶような間が抜けたクズ映画がまた一本加わるだけとなります。  この作品は幽霊船のロマンが通用したギリギリの時代に生み出されたと言えるのではないか。印象に残るのはアーネスト・ボーグナインとともにB級映画に数多く出演した、ぼくら世代には思い出深い、脇役俳優のジョージ・ケネディです。
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 この映画の彼はナチの亡霊に憑依された船長を怪演しています。映像として、かつて公開当時には強烈なインパクトを残したのは拷問室の様子で死体を冷凍保存して、大量にフックで吊ったままにしているシーンはやはり久々に見ても不気味でした。  勝手に鳴り続けるレコード・プレーヤー、食べたらオバサンの顔が崩れ出すクッキー、意志を持っているクレーンなどは気味が悪く、また邦題のサブ・タイトルにもなった血のシャワーも今見るとなんだか呆気ないもののかなり恐かったのを覚えています。
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 その他では憑依されたジョージ・ケネディが主人公たちを殺害するのに失敗してしまい、エンジン・ルームの機械に巻き込まれてしまうシーンや船内の網の中に落ちたのを引き揚げると、網の中は人骨で一杯だったというシーンなどが印象深い。  B級映画らしさも全開で、とにかくショットが繋がっていませんし、展開もいい加減で、ストーリー展開が訳が分からなくなっています。それでも怖がらせるという最低限のマナーは守っている。映画を見ているとそれがナチスプロパガンダに変わり、遭難者がスクリーンを破っても執拗に上映を繰り返す亡霊の“意志”は薄気味悪い。
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 意志と書いたのはこの映画には最後までゴーストが登場しないからです。実体を見せずに怖がらせることに成功しているのは素晴らしい。もしかすると特撮に割く予算が底をついたために見せ方で怖がらせるしかなかったのかもしれません。  幽霊船視点のショットが秀逸で、まるで船自体が生きているようななんともいえない恐ろしさを味わえます。どこかで見たなあと思っていると、この視点は『ジョーズ』、もしくは『激突!』だったのかもしれない。主人公たちに逃げられたあとも再び、別の標的を見つけて、懲りずに襲い掛かる幽霊船に業の深さを見ました。 総合評価 68点