『ザ・ビーズ/殺人蜜蜂大襲来・アメリカ大陸壊滅の日』(1978)蜂と人間で共存しようじゃないか!?
ヒッチコックの『鳥』、スピルバーグの『ジョーズ』、そして『ウィラード』『ベン』など動物パニック映画はホラーの中で一つのジャンルとして定着しています。その流れで鳥やサメ以外に他の動物に目をつけた者がいました。
蜂の大群が人間に襲い掛かり、町中がパニックになる映画は数多く存在し、『キラー・ビー』(1976)『キラー・ビーズ/殺人蜜蜂軍団の支配する町』(1974)『キラー・ビー2/殺人蜂ミサイルタウン大襲撃』などが代表例のようで、僕も小学生の頃に何本か見ました。
しかしながら、上記のように似通ったタイトルが多く、自分がいったいどの蜂軍団映画を見ていたか分かりにくい。おぼろげに覚えているのはアメリカのアストロ・ドームの中に蜂軍団を誘導し、クーラーをギンギンに効かせて寒くして、蜂軍団の動きを封じるという内容だったと記憶していました。
レンタルであまり人気がなく、ほとんど借りられていないVHS『ザ・キラー・ビーズ』をビデオ時代に見つけ出したときには「おおっ!!あるやん!」と嬉しくなって、借りてきました。
たった今『ザ・キラー・ビーズ』と書きましたが、ビデオタイトルとテレビ放映時のタイトルが違うことはしょっちゅうで、この作品もテレビのときは『ビーズ殺人蜂大襲来』だったり、『ザ・ビーズ/殺人蜜蜂大襲来・アメリカ大陸壊滅の日』だったりで正直訳が分からない。
多分これに違いない、合っていて欲しいとドキドキワクワクしながら見ていきましたが、なんだか様子が違う。オカルトチックというか、SFチックというか蜂軍団対人間の知恵の対決の構図でさまざまな対抗策が講じられていたのが、後半になると急に暗闇の奥深くに位置するショッカー本部のような蜂の巣が意思を持っているような撮り方が多くなってくる。
ショッカー的な蜂の巣からの指示を受けた攻撃的な蜂軍団には高度な知性があり、自分たちの言語を持つと同時に人間たちの言葉を理解している。
まるで『フェイズⅣ 戦慄の昆虫パニック』のような展開になっていく。クライマックスでは主人公の科学者が蜂のスポークスマン的な役割になってしまい、蜂と共存するか、戦って破滅するかの二者択一を迫ってくるに至っては意味が分からなくなります。
なんだこいつは?そうだ!ブルース・リーの『燃えよドラゴン』に出ていた格闘家役のアイツ、ジョン・サクソンではないか。ウルトラマンのシリーズで宇宙人に支配されて、言いなりに動かされる眼が光る人間みたいです。
昔だったら、こうしたシチュエーションだと共産主義への恐怖か病めるアメリカを表現したものだなどと水野晴男や荻昌弘らに解説されていましたが、今だと何て言うのだろうか。
緊張感を生み出す音楽が雰囲気を盛り上げてくれますが、SFの臭いが充満するにつれて、なんだかパニック映画の枠組みから離れてしまい、集中力もなくなってしまうのは残念でした。
SFは好きなジャンルなのですが、パニック映画として見ていたので、突然すぎるSFへの変換には戸惑います。しかも主人公が「われわれ人間と蜂が共存できる社会を目指そうではありませんか!」というあまりにも唐突過ぎるエキセントリックな演説が終了するとともに作品も終わる。
何が言いたいのかよく分かりません。その後、物好きなので『キラー・ビー2 戦慄の蜂軍団』も見ましたが、これにもアストロ・ドームは出てきません。
どうやら、ぼくが見るべきだったのは『キラー・ビー』のようです。また見つけにくそうな作品を探す旅が始まります。古いVHSを探すのは年々難しくなってきていますが、DVD化されるのを期待しているうちに数十年経ってしまう可能性もあるのでヤフオクに参戦して、マニアとの戦いに勝利せねばなるまい。
というかそもそもVHS自体が発売されていたのかも分かりません。『マッド・ボンバー』『傷だらけのアイドル』『パニック・イン・テキサスタワー』『夜叉ヶ池』など見たい作品は数ありますが、ソフト化されていなければどうしようもない。
総合評価 46点