良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『グランド・イリュージョン』(2013)楽しめなかったのはミスディレクションのせいか?

 女友達に誘われるままに仕事終わりにGODIVAのアイス・シェイクを飲んだ後に観に行くことになったのが『グランド・イリュージョン』でした。  内容をまったく知らない状態だったので、「イリュージョンって、ゲップせずにコーラを一気飲みしたり、手を使わずにジーパンをはいたりするやつかい?」などと軽口を叩きながら、夜の回を観てきました。
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 四人の天才マジシャンたち(ジェシー・アイゼンバーグウディ・ハレルソンアイラ・フィッシャーデイヴ・フランコ)が警察(マーク・ラファロメラニー・ロラン)や保険会社(マイケル・ケイン)、種暴きのモーガン・フリーマンを出し抜きながら、金庫破りを繰り返す義賊のような犯罪的トリックを仕掛けていく。  アイと呼ばれるマジック界の黒幕的な存在がいて、彼らをスターに押し上げ、利用しながら、さらに大きな犯罪トリックを仕掛けていきます。この映画には彼ら四人が仕掛けてくるマジック(イリュージョン)に翻弄される警察や銀行などの大企業との争い、そして彼らと敵対するマジックの種暴きを生業とするモーガン・フリーマンの動向を描いてくる。
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 そちらに目を奪われてしまうが、それこそが誤誘導であり、本筋はかつてモーガン・フリーマン、保険会社、金庫の製造会社によって破滅させられた有名マジシャンの息子による復讐劇のようです。息子だと分かった時点で黒幕候補はまだ見ぬ(出てきていない登場人物)かマーク・ラファロしかいなくなる。  作中あちこちに伏線が張られていて、後で思い出すと繋がっていきますが、伏線以上にお話の綻びが多く、まとまりがない。先ほども書いたように、黒幕候補は三人いて、主役の刑事(マーク・ラファロ)、モーガン・フリーマン、『イングロリアス・バスターズ』に出ていたヒロインでフランスから来たインターポールの捜査官役のメラニー・ロランです。
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 話が劇画のようでとっ散らかっていて、かなり解りづらい。この作品については話のテンポが良いという意見が多いようですが、繋がらない描写がいくつかあるので違和感が拭えず、個人的にはテンポが良いとは思えませんでした。  その最たるものが主人公の刑事とインターポールの捜査官が出会って、捜査方針について、かなりいがみ合っていた次の朝に彼女のベッドルームに刑事がいるという訳の分からない繋ぎに閉口しました。四人組がFBIに身柄拘束されても、簡単な取り調べが住むとすぐに釈放されてしまうのもなんだか唐突過ぎます。
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 クライマックスであるはずの黒幕と四人組がはじめて出会うメリーゴーランドでのくだりはいったい何がしたいのか、何が言いたいのかはっきりしません。またエンディングでのキス・シーンも酷すぎます。  捜査官が犯罪者と恋人同士で結ばれる結末には現実味が無さすぎて、見ている方が白けてしまう。ラスト・シーンというのは重要で、ここが普通に描けていれば、まあ観客は納得して席を立てるが、この一番最後にくる場面の出来が悪いと不満ばかりが思い出されてしまう。
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 じっさいエンディングでの観客の反応はポカーンとしていて、ぼくも彼女も「失敗したね!」「やらかしたね!」「明日にして、『悪の法則』(ブラピやキャメロン・ディアズの新作)にすれば良かったね。」という感想でした。  トリックの種暴きを扱っているモーガン・フリーマンが黒幕かと思いましたが、序盤からフードを被り、顔を見せない人物が謎の動きを見せている。彼はどうみても痩せていて、その時点で黒幕はマーク・ラファロメラニー・ロランに限定されてしまう。
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 途中からは彼らのどちらが非業の死を遂げた奇術師の子供なのだろうかという興味しか無くなってしまいました。何も考えずに見るにはショーのシーンの華やかさなど楽しめます。  カー・チェイスなどのアクションもアメリカ映画らしくしっかりしていますが、物語の二重構造にいち早く気付いた方はその穴だらけのストーリーや設定にゲンナリするでしょう。
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 良かった点はメラニー・ロランが映画館の大スクリーンをものともせずに、相変わらず綺麗だったことくらいでしょうか。マイケル・ケインが保険会社社長役で出ていますが、オイシイ役どころではなく、目立つパートはモーガン・フリーマンによって独占されています。  とは言っても、フリーマンの魅力がさほど出ているとも思えない。なんともとらえどころのない映画でそれこそが幻想のようでした。 総合評価 58点