良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『白い恐怖』(1973)閉鎖空間でのサル・ヒト・チンパンジーの運命はどうなるのか?

 テレビ放送時のタイトルは『恐怖の酷寒地獄・雪山宇宙研究所の謎』という水曜スペシャルに出てくる川口探検隊がノリでつけたような酷いタイトルでしたが、別題『白い恐怖』を覚えていました。  Googleで『白い恐怖』を検索するとアルフレッド・ヒッチコック監督でサルヴァトーレ・ダリが協力した作品の関連記事が延々と出てきます。  しかし今回記事にしたのは1973年製作のテレ・フューチャーでオリジナルタイトルは『COLD NIGHT'S DEATH』、直訳すると寒い夜の死という身も蓋もない、そっけない題名です。
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 珍しく邦題『白い恐怖』のほうが作品の質を高めているし、内容にも関連してきます。お昼過ぎの12チャン洋画劇場で見たのが最初で最後だった作品です。  海外ではDVDも無事に発売されているようですが、日本版は発売されそうにもありません。地味すぎるし、もともとが低予算なので俳優も知らない人しか出ていません。  ビデオ時代もDVD時代になってからもわが国では一度もソフト化されていません。それでも世界中を探せば、この作品の独特な魅力を覚えていて、なおかつテレビ放送をビデオ録画した強者がいるはずだと思い、Googleでオリジナルタイトルを入力して、検索してみるとなんとYouTubeにフル動画がアップされていたので、すぐに再生しました。
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 もちろん英語による字幕なし放送でしたが、喜びが先に来ますし、なんとか根性で理解に努めました。まあ、見たことがある作品であり、しかも強烈な印象を残したヤツだったので、おぼろげに大筋は分かっています。  大筋では知っていたものの今回観ると意外にホラー映画のムードを漂わせていて、驚愕のラストまではいつ『遊星からの物体Ⅹ』のようなクリーチャーが飛び出してくるのか、もしくは異星人の侵略の一端が示されるかとも取れる描写が多いのに驚きました。
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 内容は豪雪が降り積もり、ブリザードが猛威を振るう高山地帯の研究所(タワー・マウンテン研究所)で、猿の極限状況下でのストレス研究を行っていた科学者が錯乱しながら、本部職員に無線で救助を求めながら、「だから言ったじゃないか!」「誰も聞かないからこうなってしまったんだ!」「アレキサンダー」「ナポレオン」「ジュリアス・シーザー」という意味不明な言葉を残して、音信不通になります。  彼の消息を求めて、男性二人の科学者、そして研究用のチンパンジーが現地に派遣される。実験用の4匹の猿たちは餌もないはずなのに檻の中で生きていました。
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 いざ、到着すると科学者はすぐに凍死体で見つかるが、彼は外傷を受けていないし、身体のどこにも不調が表れていないのに何故か気温がマイナス数十度にまで低下する扉の外で死んでいた。  捜索の当初から派遣された科学者二人は性格の違いからか意見の衝突を繰り返し、人間関係は良いとは言えない疑心暗鬼の状況に陥っていきます。援軍が誰もいない状況での味方同士の仲間割れは危険要素を増します。
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 捜索隊の二人は色々と調べてみるが原因は分からない。ただ不思議なのは研究用の外へ出ていくと独りでに扉が閉まり、科学者の一人を凍結した室外で殺害しようとする。  その日の夜には施設内が停電したり、夜が明けると今度は給湯システムが壊れてしまい、凍死の危険が迫ってくる。水がないと生きていけないので、室外作業によって氷を給湯施設に運び入れている途中、何者かの手により扉がロックされて、作業していた科学者は給湯室の窓からようやく入り込む。
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 また室内では連れてきたチンパンジーが刃物で惨殺されていた。お互いへの不信感が最高潮に達する頃、両者は自分以外に存在する他人である科学者をお互いに敵として認識した結果、生存のために殺し合いを始めて、室外作業をしていてやっとの思いで帰ってきたのに科学者は武装して待ち受けていたもう一方の手にかかり、あっけなく射殺されてしまう。  こういうときにメジャー作品であれば、お互いに理性を持って協力し、真犯人を探し出そうとするものですが、さすがはチェックが甘いテレビ映画製作では人間不信を描こうとする製作者の意図がそのまま通った結果なのか、人間性の闇の部分が露わになる。
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 しかしながら、射殺後に放心している暇もなく、残った唯一の科学者にとっては絶望的で意外な真相が明らかになる。発電室に向かい、ボーっとしていると、唯一の扉がス~っと閉まり、扉の窓の向こうに見えたのは実験用の猿であったというエンディングです。  ホラーSFテイストが満載の中、なんと高度な知性を獲得した猿が犯人だったというオチです。登場人物は男性無名俳優が二人きり、あとは猿とチンパンジー。ゴリラはいませんが、猿に出し抜かれるような人類はゴリラと変わりない。
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 全編通して印象深いのはギル・メレがつけたシンセサイザー全開の硬質で血が通わない冷たい音楽と常に吹き荒れる吹雪の音の凄味です。67分間と73分間バージョンがあるようですが、両方とも有名動画サイトにフル動画がアップされていました。  たぶんこれは日本ではソフト化されないのでしょうが、出来は素晴らしく、低予算でもアイデアと撮り方によっては十分に優秀な作品を製作できるという良い見本です。
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 総合評価 70点
メレ・プレイズ・プリミティヴ・モダン
ユニバーサル ミュージック クラシック
2013-08-21
ギル・メレ

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クアドラマ
ユニバーサル ミュージック
2014-03-19
ギル・メレ

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