良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『キラー・ビー』(1976)数ある殺人蜂映画の中では最高峰の出来栄え。ただし哀しき低予算。

 今回は昆虫パニック・ホラー、「キラー・ビー」のことを書こうと思い、あやふやなままGoogleで探してみると大量の「キラー・ビー」や似たような殺人蜂映画タイトルが出てきて、どれだったのだか判断に迷ってしまいました。  本当に似たり寄ったりの題名ばかりなので、自分が見たのはいったいどの「キラー・ビー」なのか、そもそも「キラー・ビー」だったのかすら、さっぱり分からない。
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 まるで西部劇を見るときの「荒野の」「ジャンゴ」「皆殺しの」「ガンマン」「用心棒」のタイトルだけでは自分がどれを見たのか分からないというのと同じです。  それだけではなく、ハチ映画は『スウォーム』を筆頭にたくさんありますし、『キラー・ビー』のタイトルでリメイクまでされている。何本も見てきたので、記憶にある題名だけを覚えているだけでは目指す作品にたどり着かない。
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 何本か1970年代までのハチ映画を見ましたが、案の定、ごちゃごちゃになって覚えていました。しかしながらどれもお目当ての作品ではありませんでした。そのときふいに「たしか、ドーム野球場に誘導していたぞ!」と思い出し、調べていくとどうやらぼくが見たいのは『SAVAGE BEES』(邦題はキラー・ビー!!)らしいことが判明しました。  すぐにヤフオクAmazonで探しましたが、日本語字幕版ビデオもDVDも発売されていないことが明らかになりました。それでもどうしても見たかったので、深く探していくとアメリカのリージョン1のDVDならば800円程度で販売されているのを見つけて、『正午から三時まで』とともにお取り寄せしました。
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 リージョン1なので基本的には日本規格のリージョン2のプレイヤーでは再生出来ないと表示されていますが、実際には3~5割くらいはPC以外でも正常に動作します。  ここ数年では海外版DVDで起動しなかったのは『わが青春のマリアンヌ』『ハヌマーンと7人ライダー』、PAL版DVDくらいでした。たぶん免責事項として記載されているのでしょう。
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 同時に取り寄せた『正午から三時まで』が普通にパナソニック製DIGAで鑑賞できましたので、たぶん大丈夫かなあと期待しつつ、『SAVAGE BEES』、つまり『キラー・ビー』をデッキに放り込みました。  すると何の問題もなく、機嫌良さそうにリージョン1を再生してくれました。他に見たい方もいるでしょうから、迷わず辿り着けるようにあえて内容も書いていきます。 <あらすじ>
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 ブラジルからの貨物船が無線で「わあ!こっちへ来るな!」という意味不明(ブラジルからアメリカに来るくせに!?)の叫び声を残したのを最後に遭難する。  さ迷っている船に調査隊が駆けつけると甲板で無惨な亡骸を晒し、クルー全員が死に絶えていた。検死のために病院へ運ぶと口の中から蜂が出てきた。
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 まさか蜂に刺されて死亡したとは思われなかったが、その後も飼い犬が原因不明の毒で殺害(飼い主は地域の保安官ベン・ジョンソンだったので、ワンコの仇をとるため、かなりモチベーションが高い。)されていたり、幼女が蜂の大群に襲撃されて、刺し殺されてしまう。  近くの気の良い農夫も蜂の巣を刺激してしまい、川の中に逃げ込むも、上がってきたところを執拗に刺され続け、溺死する。
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 夜になって捜索隊が川を下っていると彼の溺死体が土左衛門となって浮かび上がってくるシーンはかなり気持ち悪く、初見から30年以上は経っていますが、おぼろ気ながらも覚えていました。一連の事件の原因はブラジルから来た少年ではなく、アフリカ蜂の仕業です。  なぜブラジルから来たのにアフリカなのかというと実験用に持ち込んだアフリカ蜂の大群を誤って拡散させてしまい、多くの死者を出したのだと現地の科学者が気まずそうに言う。
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 解決方法はないのかと詰め寄るアメリカ人科学者にたいし、彼は「アフリカ蜂は寒さに弱いから9月になれば大丈夫だと思うよ。」とさらに不安にさせる。町ではちょうどお祭り期間中で、絶好のパニック日和です。  もしそのパレードの人混みに蜂の大群が襲い掛かったら、大パニックになるのですが、B級映画の哀しさか、蜂も気を使って、五人以下の場所や、人気の少ない畑や町外れのホットドッグ屋さんなどを見計らって、比較的少数精鋭で襲撃してきます。
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 ホットドッグ屋さんを刺し殺した蜂たちはそこを根城にして、増殖していく。ついに本拠地を発見した男女の科学者コンビでしたが、バカなカップルが駆除の邪魔をしたあげくに科学者(ホルスト・ブッフホルツ)の蜂対策スーツを刃物で斬りつけて、科学者を道連れにして身体中を刺されてショック死する。  一人残された女科学者(グレッチェン・コーベット)は乗っていた真っ赤なフォルクスワーゲンの車体を蜂に覆い尽くされてしまう。この様は圧巻ではありますが、蜂も勢揃いしてこれだけしかいないので、だったら殺虫剤を振り掛けるか、近くの倉庫にでも誘導した方が狭いし、管理しやすいと思う。
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 しかしそんなことは誰も思い付かず、「そうだ!スーパー・ドームに連れていって、活動を抑制しよう!」となり、蜂だらけで虎柄模様になってしまったフォルクスワーゲンを運転し、繁華街を時速15キロメートルで練り歩く。アストロドームだとばっかり思い込んでいましたが、フットボールのスタジアムでした。  お祭りの最大の目玉が蜂まみれの赤いワーゲンになる。けっこうな距離を運転していきます。お金が掛かっている作品ならば、ここで見せ場を用意してきます。
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 例えば、イカれたバイク兄ちゃんや逃亡中の凶悪犯が運転する車両がワーゲンに激突して、結局は町中に蜂が襲いかかるとかのシーンを付け加えるはずですが何事もなく、スーパー・ドームの入り口まで着いてしまう。  着く寸前になって、エンストするものの仲間の科学者(マイケル・パークス)が後ろから車で押してくれるので何も起こらない。無事にグラウンドまで誘導すると始まるのがエアコンで華氏45度まで温度を下げる(アフリカ蜂が活動を停止する温度。)という科学的なんだかバカなんだかよく分からない作戦を実行していく。スタジアムなんて広すぎる。
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 電光掲示板の温度が徐々に下がっていく様子、管理室でグラウンドを眺める保安官と管理のオジサン、蜂に囲まれている科学者たちが乗っている車の三者をクロス・カッティングで写し出す。  数分すると予定通りに蜂たちは寒さにやられてしまい、バラバラと車から落ちていく。安全を確信した科学者たちは車外に出てきて抱き合って、めでたしめでたし。観客席には生き残った蜂が捲土重来を期して、あがき続ける様子を捉えてジ・エンドとなります。
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 低予算ならではの迫力の無さや肩透かし感は如何ともし難いが、スーパー・ドームに誘導するアイデアやサスペンスを盛り上げる脚本や撮影はよく練られているので飽きることなく90分間を集中させてくれます。  どう見ても本物の蜂の大群にフォルクスワーゲンをたからせています。どうやって、上手い具合に人間にたからせたのだろうか。アリンコを身体にたからせるために身体中に砂糖水を塗りたくった作品がありましたが、ハチミツでも塗りたくったのだろうか。
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総合評価 68点