良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『マイ・ボディガード』(1980)地味だけど記憶に残っている青春映画の佳作!

 1980年製作の『マイ・ボディガード』をはじめて見たのは中学か高校の頃でした。当日の新聞や予告で確認していたものの、あまり期待していなかった作品でしたので、ビデオ録画もせずにダラダラと放送を見ていました。  扱いも当時大人気だったマット・ディロンジェニファー・ビールス(『フラッシュダンス』のヒロイン)が出てくる青春映画(二人とも脇役にすぎない!)という売り文句だった記憶があります。
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 実際、DVDのジャケットはいまだにマット・ディロンが一番デカデカと鎮座していますが、主役は後ろの目立たないバイク二人乗りコンビのアダム・ボールドウィン(でっかい方でリッキー・リンダマン役)とクリス・メイクピース(ジェレミーみたいなヒョロヒョロしたクリフォード役)です。  個人的に見ていて懐かしい顔だなあと思ったのは大酒呑みのお婆ちゃん役だったルース・ゴードンで、この人は『ローズマリーの赤ちゃん』や『ハロルドとモード』などでもきらりと光る印象的な演技を見せてくれていました。
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 放送が始まるとストーリー展開がイジメがらみの作品であることが分かってきました。いじめられっ子がイジメを回避するために一匹狼として一目置かれていた同級生に取り入り、いわば虎の威を借る狐、分かりやすく例えるとスネ夫くんの立ち位置につくことで周りのいじめっ子たちから身を守ることを思い付く。  最初は上手くやっていたが、孤独な一匹狼は自分がただ利用されている状況に嫌気がさしてか、そもそも興味がなかったからか、用心棒的な役割を拒絶する。
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 守ってくれる彼がいなくなると再びイジメが始まる。本当に友達を求めていた一匹狼といじめられっ子はオートバイの部品探し(大昔に見たときはバイクのシリンダーではなく、オーディオの真空管だと勘違いしていました。)から仲良くなり、次第に他のクラスメイトとも打ち解けていく。  しかしここはハリウッド映画らしく、そのままでは終わらない。ピンチ、チャンス、大ピンチ、そしてクライマックスという古典的なストーリーを展開させます。で、大ピンチ到来。
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 つまり、マット・ディロンの逆襲が始まり、より強そうなスキンヘッドの黒人用心棒を連れてきたディロン(かなり情けない。)は用心棒同士で戦わせようとするも(ガンプラかよ!)、なぜか一匹狼はやられるがままで抵抗しない。  調子に乗った彼らは二人で完成させた、友情の証である、大切なバイクを池に沈めてしまう。その日の夜に二人で意見をぶつけ合い、抵抗をしなかった理由を告白させる。
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 アダム・ボールドウィンは父親の拳銃をオモチャにして、兄弟でふざけているうちに暴発し、弟のあたまを撃ち抜いてしまい、亡くなってしまったことがトラウマになり、苦悩を誰にも言えずに、ケンカすら出来なくなっていた。彼のトラウマを聞き出すが、二人はなかば喧嘩別れをしてしまう。  翌日にバイクを池から引き揚げてきた彼らに再びちょっかいをかけるマット・ディロンたち(情けない!)はかなりしつこい。しかし我慢の限界を超えた主人公と一匹狼はついに反撃に転じ、ひょろひょろしたあまり目立たない主人公クリス・メイクピースはマット・ディロンの鼻を拳で狙い撃ちして、骨折させる。
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 マット・ディロンはクリスの情けない打撃にやられた挙げ句、鼻を折られて逃げ出してしまう。マット・ディロン目当てでこの映画を見た女の子たちはかなり失望したに違いない。  映画としてはありきたりかもしれませんが、過剰な演出がなく、現実的に起こりそうなことを盛り込んでいて、等身大なティーンエイジャーを描いている点に好感が持てます。
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 地味な作品なのになぜかずっと心に残っている素敵な作品です。『フット・ルース』や『フラッシュ・ダンス』、『愛と青春の旅立ち』と同年代に公開されたためか、あまり有名ではありませんし、覚えている人も少ない作品でしょうが、見た人ならば、じんわりとした爽快感をわかってくれるでしょう。  今回、30年近く経って、再び見る機会に恵まれましたが、すがすがしさや初々しさは色褪せていませんでした。派手な映画ばかりに気を取られていると見逃してしまうような小品の佳作です。こういうのがじんわりと沁みてくる良い映画なのでしょう。
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総合評価 75点