良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『殺人ブルドーザー』(1974)これはSFと言っても良いのだろうか?ドリフみたいな…。

 昭和50年代、テレビ局は朝6時から深夜1時位までの放送枠を埋めるため、多くのバラエティ番組、ドラマ、スポーツ中継や映画を必要としました。  すべてに初回放送番組を組むことは出来ず、結果として再放送番組、アメリカのテレビドラマ、映画、お茶の間ショッピングがかなり多くなり、それらは学生やサラリーマンを送り出した後の午前中から夕方まで延々と続きました。
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 そのなかには映画の枠が数多く存在しました。ただし映画と言っても、誰もが知っているメジャーな作品群が午前中から並ぶわけではなく、ほとんどが聞いたこともないタイトルや聞いたこともない俳優ばかりで、大幅にカットされていて、俳優の口の動きとはまるで違っているのが子供ながらにも分かるお粗末な吹き替えでした。  送り手も適当で、見る側も適当なので、後々になってから、タイトルを覚えていない作品ばかりとなってしまいました。しかも初回放送時とは異なるタイトルをつけて、別の作品と思わせて、再度同じ映画を見せるという裏技を使うため、どれを見ていたのかがわからなくなっています。
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 『殺人ブルドーザー』はオリジナルタイトルが『KILLDOZER』でけっこう洒落たネーミングです。そういった流れの中、この作品は度々お茶の間に登場しました。  別題で『落下イン石の謎/キルドーザー・孤島の殺人機械』というタイトルが付けられたこともあります。なんとも怪しげなタイトルで観る前からいかがわしい。
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 けっして優れているとは言えない、というよりは駄作なんじゃないかと子供でも分かる作品なのに放送されていたら不思議にまた見てしまうのです。  さすがに送り手も出来映えを認識しているためか、これを見たのは深夜かお昼だったような気もしますが、もしかするとゴールデン枠で放送されたのだろうか。
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 内容は簡単に言うと、リゾートではない無人の小さな島に光の生命体が隕石とともに落下し、原発や軍事基地のコンピューターではなく、なぜかブルドーザーを乗っ取って、ぼちぼち作業中の6人の作業員に襲いかかる。  彼ら以外にはだだっ広いグラウンド(さら地?)と草むらしかない島には誰もいない。低予算映画を撮るには格好の舞台が揃っています。騒音で苦情を受ける可能性はなく、何か特別なセットを組む必要性もない。
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 エイリアンを待ち受ける現場監督がクリント・ウォーカー、ロバート・ユーリック(音波攻撃で死亡!)で、部下の作業員がネビル・ブランド(当然、死亡。)、ジェームズ・A・ワトソンJr(土管に逃げて潰されて死亡。)、ジェームズ・ウェインライト(ブルに轢き殺される。)、カール・べッツ(生き残る。)というB級な面々です。  エイリアンなのか霊的現象なのかもはっきりしない、敵の姿が見えない状況下、なぜ勝手に動いているのかには誰も気にせず、ブルドーザー対人間たちの戦いが地味に始まる。
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 一応は遠隔操作で動かしているに違いないのでそいつを探そうという案も出るが、誰も耳を貸さない。台本には宇宙人なのだと書いてあるのだから、パントマイムでいると仮定しながらの演技だったのだろうか。  そんなに高速では動けない建設用重機なのにギル・メレの音楽の呪いが掛かっているためなのか、光の生命体が操縦しているブルドーザーによって数人(ネビル・ブランド含む。)は仕留められる。人間たちはジープや普通車を運転しているので時速も早いはずである。
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 一方、ブルドーザーは戦車ではないのでそんなに高速には動けない。それなのに知恵が回る無人ブルドーザーは馬鹿な人間たちの浅知恵をあざ笑うかのようにいつも先回りしている。  ブルドーザーによる殺戮ショーが始まる前の晩、ブルの前で佇んでいる作業員をやろうと思えばやれる状況でも、シャベルをちょっと持ち上げただけでわざと後ろ向きの彼の手前で降ろすというドリフのコント(「しむら、うしろ~!」)を思い出させてくれる昭和の香りが素晴らしい。
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 しかしこれはアメリカ製作なので、向こうは昭和ではない。ということは全世界的に昭和だったのだろうか。この子供騙し感はいったい何なのだろうか。  作業員たちはどんどん殺害されるのですが、人殺しであるブルドーザーがすぐ近くにいるのに横で死者のお墓を立てていくシーンはむしろとても芸術的なシュールな作品意図でもあるのだろうかと勘繰ってしまう。
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 あれこれ子供レベルの知恵比べがあった末に光の生命体は最終的に人間に出し抜かれて、感電死するというアホみたいなお話です。  青白い光の生命体はまったくしゃべらないので、光の生命体の目的は最後まで明かされないまま、一応は退治されるハッピー・エンドとなる。
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 もしかすると青白い光の生命体が住む星から、幼いいたずらっ子が勝手に隕石型宇宙船に乗って、間違って地球行きのボタンを押してしまったのだろう。名前はチョビン、大人には見えないから、青白い影だけが映っていたのかもしれない。  重機同士の対決シーンはちょっと前ならば、フジテレビの人気番組だったが、ヤラセが発覚して放送休止に追い込まれてしまった「ほこXたて」を思い出させてくれる。しかしながら、どこが記憶に残っていたのか、何に心が惹かれて、数十年も覚えていたのかは今もって不明な作品です。
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 あまりにも捻りがなく、あまりにもくだらなすぎて強烈な印象を残したのだろうか。もちろん日本版DVDは出ていません。  小さい頃のジョディ・フォスターが主演していた『別れのこだま』が画質最悪ながらも無事にソフト化されていますので、こちらもついでにレンタルに並べて欲しい。
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 まあ、買うほどの価値はないと個人的には思いますので、無駄遣いをせずにレンタルを気長に待ちましょう。見なくとも後悔することはありませんが、ダメ映画を見ると、次に見る作品が標準レベルでも良作に思えますので、試しに映画ドーピングをするのも楽しい。 総合評価 50点
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2013-12-03

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