良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『愚者の歓喜』(1939)名曲『踊るリッツの夜』を歌うゲーブル、踊るゲーブル。

 『愚者の歓喜』は1939年公開のミュージカル風音楽映画です。アメリカとの決戦を控えていた我が国では敵性国家の文化である楽しげなエンターテインメント作品は当然のように一般公開されていません。  今でもじっさいに仮想敵国の文化はシャットアウトするという尻の穴が小さい大きな国や中途半端な国がありますが、お互いの文化を解放すれば、価値観の違いなどへの理解と和解が促進されるはずです。  それを拒絶するのは自分たちの既得権だけを守ろうとする薄汚い支配層にとって都合が良いからだろう。他国との緊張関係があって、はじめて成り立つのが独裁国家なのでしょうか。
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 ハリウッドの老舗MGMが会社創設記念として製作した映画『ザッツ・エンターテインメント』をDVD鑑賞したときにどこかで聞いたことのある懐かしいテイストの歌が掛かり出しました。  それが『踊るリッツの夜』です。ぼくらに馴染み深いのはTACOが唄ったカバーで、発売されたときはドーナッツ盤を購入して何度も聴いていました。 If you're blue and you don't know where to go to why don't you go where fashion sits Puttin' on the Ritz
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 オリジナルは誰だったのだろうかと調べていくとその課程で『ブルー・スカイ』でのフレッド・アステアのテイクを見つけました。しかし彼でもなく、どうやら稀代の二枚目俳優、クラーク・ゲーブルが歌っているモノクロ映画(『ザッツ・エンターテインメント』でも掛かっている。)の方がより古そうな印象を与えてくれます。  その映画のタイトルが『愚者の歓喜』です。しかしこの映画の存在はほとんど知られていない。日本語字幕版ビデオテープの販売もなかったようです。数年探し回りましたが、ついに手に入れられませんでした。
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 そんな折り、オリジナルタイトルが『IDIOT'S DELIGHT』ということがわかりましたのでAmazonでさっそく検索してみました。すると日本語字幕版はまだ出ていませんでした。  海外版ビデオならば出品されていましたが、14000円というあまりにも高価な設定だったのでパスしました。それ以外ではDVDが出ているようです。ただし北米版なのでリージョン1仕様となり、日本では再生不能の可能性が強い。  海外版DVDでも普通に再生できるものも多いのですが、それは買ってみなければ分からない。自宅での鑑賞スタイルとしてはほとんどというか、すべてがBlu-rayレコーダーでの再生なので、PCのリージョン設定をリージョン1にしてしまっても問題はないのかもしれない。
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 変えてしまった場合のトラブルは何かあるのだろうか。考えられるのはPCでDVDを焼く場合にリージョン設定を変えられなかったときに、変更後に作成したDVDがすべて無駄になるかもしれないという可能性でしょうか。  しかしこれもDVD作成時にNTSCだかなんだかの再生方式にしてリージョン2を選べば問題はないでしょう。だったら変更してもオッケーなのかなあと思いながらも、何か別のトラブルが発生したら嫌だなあと躊躇します。  他に手段はないかなあと考えると後は海外赴任者が必需品として買っていくリージョン・フリーのDVDプレイヤー、通称フリフリかなあ。自宅にある海外版DVDで起動しなかったのは『わが青春のマリアンヌ』『イット・ケイム・フロム・アウタースペース』『センチネル』などでこれらも旧式のWindowsXPでは通常再生が可能です。
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 ただしWindows8.1を入れたPCを使用した場合、メディアプレイヤーがサービス・パックに入っているので国内版DVDは問題なく再生されますが、海外版DVDは再生できなくなってしまいました。PCが進化していくのは良いのですが、これまで出来たことが出来なくなるのは迷惑です。迷った末に購入し、DVDをプレイヤーに放り込むとなんとか引っかかったようで、起動が始まり、再生可能でしたので一安心です。  それらは置いといて。  本人歌唱かどうなのかは解りかねますが、クラーク・ゲーブルが唄いながら踊る映画は珍しいのではないか。と言っても当時のミュージカルや音楽映画についてはまったくの門外漢なので頓珍漢なことを書いているかもしれません。  またクラーク・ゲーブル自体があまり好きな俳優さんというわけではないのでなおさらです。それでも妙に記憶に残り続けている彼の歌声はもしかすると魅力的だったのでしょうか。
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 内容はジャケットの派手さやゲーブルのスター性からか、当たり障りのないのんきな作風なのかと思われがちですが、全編に不景気や失業問題、第二次大戦開戦で始まる大混乱への不安が1939年製作ということもあり、映画でも隠し切れない。しょっちゅう空襲警報が鳴り響き、軍用機が敵地へ飛び立っていく。  かつて出会った男女がいったんは立場が逆転して武器商人の妻に収まり、贅沢の限りを尽くすものの、開戦により夫が拘束されてしまうなど激動が一般庶民や富裕層にも一気に押し寄せてくる恐ろしさなども描かれているのでビターなテイストが色濃い。  ゲーブルが歌い踊る『踊るリッツの夜』は後半に差し掛かるころに流れます。そしてこの曲を境目に戦争は欧州全土を巻き込んでいく。ラスト・シーンでは平和だったアルプスの山奥にも空軍による爆撃が敢行され、多くの人命が失われていく。
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 業火に包まれ、空軍同士の壮絶な戦いが彼らを覆う死の間際でもピアノに合わせて二人で歌う様子がとても悲しく、力強い。猛烈な爆撃が心を込めて歌っていると徐々に終わっていく様子は一日も早く、平和な時が訪れてほしいと願っていたハリウッドの人々、そして世界中の人々の本心だったのでしょう。  隠れた佳作ですので、ぜひとも日本初のソフト化を実現していただきたいものです。そんなに権利が高いとも思えませんので、需要がないと思われているのかもしれない。『風と共に去りぬ』の何十周年かの記念で、ゲーブルの主演作のリリースがあれば、一緒に日本語字幕版を観たいなあ。 総合評価 70点
Puttin' on the Ritz
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