良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『レナードの朝』(1990)デ・ニーロとロビン・ウィリアムスの二大俳優共演作はもう見られない。

 亡くなったロビン・ウィリアムスが出演していた作品群のなかで、もっとも心に残っている作品のひとつがこの『レナードの朝』です。  大学生時代に公開されたときはロバート・デ・ニーロの大ファンだった友人と映画館まで観に行きました。ただそのときはあくまでもロバート・デ・ニーロを見るのが目的でした。
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 作品全体のシリアスさはもちろん、つかの間の奇跡と待ち構える悲惨な運命に翻弄されるデ・ニーロは圧巻でしたが、個人的にもっとも印象深かったのは医師役で重要な役割を演じたロビン・ウィリアムスだったのです。  それ以来、彼に注目するようになり、抜群の安定感を持つ彼が出演しているのならば、脚本や演出が多少不味くとも、ある程度までの水準までは彼が引き上げてくれるだろうと思いながら観てきました。
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 ロビン・ウィリアムスの訃報をきっかけに久しぶりにこの作品を見ようとTSUTAYAやGEOなどのレンタル屋さんに探しに行きましたが、『グッドウィル・ハンティング』『パッチ・アダムス』『ガープの世界』、そして『レナードの朝』などの代表作はすべて見事に貸し出し中になっていました。まあ、急きょ出来た追悼コーナーのためでもあります。  公開当時に映画館まで観に行きましたし、ビデオやスカパーでも何回も繰り返し観た作品ではありますが、さすがに最後に見たのは10年以上も前のCS放送でしたので細部のチェックが出来ないので困っています。
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 もちろん、見所としてはロバート・デ・ニーロの超絶技巧の演技力とふだんとはひと味違う抑え気味のロビン・ウィリアムスの演技の妙ではあります。しかしながら、それだけでは映画は成り立ちません。  彼らを上手くサポートしたヒロインのポーラを演じた(ペネロープ・アン・ミラー)の貢献度がもっとも重要だったのではないか。役者バカ一代のデ・ニーロを前に怯まずに自分が持つ能力を発揮した彼女あってこその作品でしょう。
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 再び壊れていくデ・ニーロを見つめる元患者たちの不安な様子は彼と同じく、せっかく取り戻した通常の生活を取り上げられてしまう絶望に満ちています。いわゆる普通の暮らしを送りながらも、日々グダグダと不平不満の言葉を吐き続ける人々こそ見るべき作品です。  贅沢ばかり言わないようにしたい。自分で起きて、食べて、会話を交わし、仕事に追われ、休みの日にはゆっくりして、たまに外食したり、友人とお酒を飲めて、夜にしっかりと眠りにつく。これだけ出来れば十分なのだと察すれば良いのかもしれない。
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 映画の大まかなあらすじはクリフ・ロバートソンの『まごころを君に』、つまり『アルジャーノンに花束を』とそっくりな感じになっています。  単純に比較した場合、映画的には『まごころを君に』は衝撃的でしたが、『レナードの朝』の悲惨さも負けてはいない。
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 自意識を持ったまま、ふたたび全く動きが取れなくなってしまうレナードが感じる恐怖感は本人にとってはより深刻でしょう。事故などで身体がまったく不随になった場合の絶望感や恐怖は本人以外には理解できません。  生命の尊厳という重いテーマ、しかも地味な作品を旬の俳優で映画化し、普通に上映できていた頃はまだ映画会社に良心が残っていたということでしょうか。宣伝と資金回収だけに集中している現在の姿勢ではたぶん企画が通らないのかもしれない。  抗パーキンソン病薬を試験的に投入し、ロバート・デ・ニーロが数十年ぶりに目覚め、清々しげに笑みを浮かべながら、ロビン・ウィリアムスと会話を交わすシーンと患者への寄付を呼び掛けるビデオに出演して生きることへの喜びを語る素晴らしさ。
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 せっかく恋が芽生えたものの再び壊れていく自分の姿を見せたくないためにあえて酷い態度を取って、彼女との関係を絶つシーン。雪の中、とぼとぼと家路へ向かう彼女の後姿に涙するデ・ニーロの絶望的な表情は忘れられない。  最後にロビンが見守るなかで動けなくなり、オムツを替えてもらうシーンの無念さなどシリアスな見せ場が数多い。しかし、もうデ・ニーロとロビンの競演を見ることは不可能です。  彼の新作をもう見ることが出来ないのは非常に残念です。彼が出世した姿を見た僕ら世代ではありますが、円熟味を増していく様子を僕らも年齢を重ねながら観ていきたかったと思う映画ファンは多いのではないだろうか。  総合評価 85点
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