良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『エンロン』(2005)対岸の火事ではなく、また起こることにどう備えるか。ASK WHY?

 われわれ日本人にとって、エンロンという会社名はなじみがないでしょう。ニュースでチラッと見たくらいで、今となっては「なんだっけ?」という感じでしょう。それはいわゆるリーマン・ショックも同じで、名前だけは知っているし、株価が暴落しただけだろうから、株なんか買っていない自分には関係ないだろうという漠然とした思いでしょうか。  世界の株価や証券価格が大暴落するというほどのインパクトを引き起こしたリーマン・ブラザースやエンロンについて何も学ばないというのは非常に危険なのではないだろうか。高学歴の証券会社のトレーダーや金融界の主流派である投資銀行がなぜ危険な取引を行い、結果として国家の厄介、つまりわれわれ納税者の税金を使い、公的資金などという誤魔化しの言い方で迷惑をかけ続けても存続していくことに疑問を感じないのでしょうか。  サラリーマンでも多くの方は現在は確定拠出年金制度に加入させられているでしょうから、いやでも投資信託に向き合わざるを得ないか、または買いたくもないのに自社株買いを選択しなければならない状況になっています。  ご存じない方に説明すると確定拠出年金制度とは確定給付型年金とは違い、企業ではなく、サラリーマン一人一人が自己責任を持ち、資金を管理をして、60歳以降に備えていくという厳しい制度です。だいたいパターンとしては①国内株式②先進国株式③新興国株式④国内債券⑤海外債券⑥元本保証型商品などから毎月の掛け金を分散して運用していくという結構面倒くさいことをしなければいけません。  メリットとしては自分の運用が上手く行った場合、掛け金以上のリターンが得られるというもので、デメリットは当然ですが、元本割れという最悪の事態です。もっともインフレが進んでいった場合、円貨自体が毀損しますので、何にもしないというのも賢くはない。  単純に考えても、去年は1ドルで100円程度だったのが、現在では120円近辺と二割以上も資産価値が減じています。関係ないわではなく、輸入品などが高くなってきており、多くの商品の売価が高騰しつつあるのは生活実感として感じているのでしょう。
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 ではどう分配すればいいのでしょうか。個人個人で判断するしかありませんが、一つの商品に全額投資をしてしまうとその資産クラスが毀損してしまったときに紙くずになってしまう。自社株大量購入の恐ろしさはご理解いただけるでしょう。  そもそもエンロンはテキサスの天然ガスビジネスの会社で、レーガン大統領任期時の規制緩和に伴い、ガスの国内パイプライン網を買収により構築し、ガスという商品を証券化し、次々に電力などのエネルギーインフラを買い占め、利益貢献に結び付ける。  利益の最大化のためにはカリフォルニアで大規模な火災が発生して、一般国民がどれだけ苦しんでいようが、報酬を最大化させることを優先し、わざと“計画的”に停電させ、インフラを麻痺させて、エネルギー価格を高騰させて、被害が甚大になるのを恐れるカリフォルニア州から大金を引き出させる。  わが国でも規制緩和が叫ばれるが、やってくるのは金の亡者であるグローバル(アメリカ)企業と同じく金に魂を売った中国企業とそれに便宜を図る国内の国賊代議士なので、導入するのであれば、とてつもなく重い刑罰をかけられるようにしておきたいし、そもそもTPPなどは不必要でしょう。  巨大企業しか残らないのであれば、競争がなくなるわけですので、市場占有率を50パーセントを超えた場合、自動的に二社に分割させるとか、重加算税をかけて、国民負担を減らす方向に進むべきではないか。  インフラを握ったエンロンの会計操作のやり口はホリエモンライブドアと同じで、いわゆる粉飾決算です。世界中あちこちにビジネスを展開させ、儲かってもいないのに会計操作で架空利益を計上し、株価を釣り上げていきます。  実体がないのにペーパー上は優良企業になっていき、最盛期には全米7位にまで登りつめますが、どこで利益を得ているかの実態がまるでないのにただ株価だけが独り歩きして、どんどん上昇していく。会計操作としては幹部のファストウがタックスヘブンに資金洗浄会社を登記し、負債や経費などの負の資産を会計処理を施してまとめていき、株価に都合が悪いものは覆い隠していきます。
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 それらの架空会社にはデス・スターとかチューイとか、ふざけた名前が付けられ、会長は皇帝、CEOはダースベイダーとかあだ名がつけられていたようです。そんな会社が長生きできるほど、世の中は甘くはなく、内部告発から一気に崩れていきます。  エンロンの現場の工事関連社員の多くは先ほど述べた年金運用商品に自社株を購入していたためにほぼ全額を失いました。その頃、自社株は絶対大丈夫だとにこやかにテレビで発表していたエンロンの会長ケン・レイやCEOだったジェフ・スキリング、その他の幹部社員たちは最高値で自社株を売り抜け、数十億円を稼ぎ出しています。  いわゆるインサイダー取引ですので経営破たん後にほとんどの幹部は逮捕され、10年以上も収監されたり、獄中死しています。そんななかでもインサイダーというか、マネーロンダリングの中枢にいた幹部は司法取引により、刑の減刑が行われています。
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 ただエンロンだったり、リーマン・ブラザースという会社の経営体質が悪かっただけではなく、それが投資適格であるというお墨付きを与える会計監査会社や投資格付け会社ムーディーズなど)、資金を調達していたモルガンなどの投資銀行、法的な準備を手伝った弁護士事務所も広告収入や手数料など自分たちの利益のみを重視し、エンロンやリーマンに与える格付けを大甘につけて、投資家に誤った情報を流し続けた罪は重い。  そもそも格付け会社自体が営利団体である以上、当然ですが恣意的である。このへんの機微も含め、元社員がリーマンの内幕を描いた『金融大狂乱』は出色の出来ですので、金融界で当時何が行われていたのかと知るには素晴らしいテキストになっていますし、分からない物には手を出すなという投資の鉄則を再確認するにも最適です。  一般投資家が彼らの手口、派手なデコレーションを見抜き、マネー雑誌や経済紙、はてはテレビ番組でも囃し立て、新時代ビジネスの騎手などと持ち上げられているような会社ほど警戒していかねばならない。  斬新なビジネスモデルを持った新興勢力の会社や経営者には脚光が浴びせられ、上場でもしようものならば、期待も込めた異常な高値で株式が取引される。しかし人材や会計などの財務体制、設備投資などの実態が伴っているはずのない会社にPER50倍とかついていたりするのにグングン株価が上がっている状況は続くわけがない。  PER50倍なら、単純に言うと50年分の利益を反映しているのが現在株価ということなので、冷静に考えると投機対象にもならない、賭博対象でしかないと理解できます。株式をやるにしても、チャート図の上がり下がりだけを見て売買を決定するテクニカル分析で相場に向かう人も多いようですが、永続的に勝ち続けるのは不可能です。
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 「1年で1億円稼いだ!」とかいう書籍が並んでいたりしますが、その一人が勝った裏には数百人の負け組が存在し、しかもそういった人の「私は3か月で自己破産した(貯金がなくなった)!」という書籍は発売されにくい。  これはビジネスでもそうで、中国に参入していくと大々的に宣伝した会社が数年後にはこそっと店じまいして、国内に戻っていることもかなり多い。しかしそういったことはあまり大きく報道されることもない。  株式投資をする場合、最低でも決算書を読み込み、負債額の推移だったり、業績予想から毎年ずれていないか、自己資本比率はどうか、1株当たりの純資産と現在株価の乖離はどの程度あるか、配当利回りはリスクの少ない資産(一般には国債の配当率)と比べてどうか、何をしている会社でどういうビジネスに向かおうとしているのか。  東証であったり、アメリカ市場などの相場自体の動向などを考えた後、ようやく最近の株価動向を見るためにチャートを見て、自分が応援したい会社ならばはじめて株式を購入するという流れを取ります。つまりそうとう面倒くさいのですが、大事な自己資金を投入するのですから真剣に向き合うべきなのです。  そうやって、10社(各業種に分散。できれば日本株だけではなく、アメリカ株にも分ける。)程度に投資したとしても6社でプラスを出せればオッケーかなというレベルです。安い時に買い、高くなったら売却というのが株式売買の基本ですから、底値で買えば負けることはありませんが、投資の神様でもない限り、そんなことは不可能なので、難しいと思ったら、個別株には手を出さずに日経平均インデックスのETFなどを購入した方が無難でしょう。  ただこの場合、相場そのものを買うことになるので下がれば損益に直結します。その点、個別株であれば、ある程度相場が下がっても、業績が良い会社の株は下がりにくいので日経平均が下がったから自分が持っている株も下がっているわけではありません。  またご褒美として年1~2回は配当があるので購入額の2~4%程度の金額が振り込まれてきます。これはけっこううれしい。また最近は株主優待も充実しているのでそこを目当てに株式購入している人も増えているようです。
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 しかしながら、注意しておきたいのは優待目当てで購入する前に考えて欲しいこともあります。2000~3000円程度の優待(商品券や自社商品詰め合わせが多い。)を受け取るために10~20万円分以上の資金を拘束されてしまい、しかもその資金は高値で購入した場合、下がってしまい、結果として損になることが多いでしょう。  その下がり方はものにもよりますが、たとえば20%下がった場合、20万円購入の株ならば、4万円下落したことになります。2000円受け取るために40000円を失うのはばかげています。近くの金券ショップに行けば、金券などは安くで買えますので、即決で株式購入を決めずに冷静になった方が無駄なお金を損しません。  話がだいぶんと外れていきましたが、言いたいのはよくわからない会社に雰囲気や感情で投資しない方がいいということにつきます。昔からある株式でもなかなかプラスを出すのが難しいのに劣後債、優先出資証券、サブプライムローンCDSなどのカタカナ商品、新興国通貨建ての商品、信託報酬年率3%以上の投資信託、ハイイールド債、社債などには近づかないようにしたい。  そもそもそんなに儲かるのであれば、そんな商品は他人には勧めずに自分でこそっと購入するはずです。道連れが欲しいから、それを売れば手数料やノルマを稼げる販売側が儲かるから、僕らに薦めてくるのでしょう。儲けたいと思っていて、周りにカモになる人が発見できない場合、自分がカモなのだと理解すれば、おおかたの詐欺や損話(儲け話はない。)から逃げられるのではないか。  そういうことを思い浮かべながら、真剣に見ていました。金融専門用語が多いので、とっつきにくいかもしれませんが、騙されないうちに観ておきたい秀逸なドキュメンタリー作品です。ちなみにブッシュ大統領親子も登場し、彼らもエンロンと非常に関係が深く、グル(?)だったのが理解出来るでしょう。カリフォルニアを守っていた知事(ブッシュの政敵)を失脚させ、代わりに知事に着任したのがアーノルド・シュワルツェネッガーというのも馬鹿げた動きです。  新興勢力が台頭するには彼らを後押しする国家権力、もしくは国家権力に顔が効く人物が必要で、経営者ケン・レイ(ブッシュ親子は彼をケニー・ボーイと呼ぶ。)にとっては共和党の利権親子との出会いが成功への近道だったのでしょう。
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 エンロンは破たんしました。多くの社員はキャリアを棒に振りましたし、幹部の一部はピストル自殺を遂げ、会長も死を遂げる。またストック・オプション契約での報酬体系だった多くの社員や一般従事者たちのなけなしの年金や一般投資家の資金もすべて失われました。しかし一方で幹部の多くは数十億円の巨額の富を手にしたまま逃げ切りました。  悪の戦闘員だったトレーダーたちは最先端の金融工学商品を理解していることもあり、リーマン・ブラザースをはじめ、ウォール・ストリートに散らばっていき、自己資産の数十倍もの掛け率で、無責任にもリバレッジをかけまくった末に自社のみならず、市場を破滅させてしまったリーマン・ショックを引き起こす媒体として復活していったのでしょうね。  ということはリーマンも破たんしてからすでに6年以上は経っており、彼らはまた新たな大儲けを狙い、聞き慣れない仕組みの危険な金融商品を日々開発し、カモがネギしょってくるのを待ち受け、パリッとした仕立ての良いスーツに身を包み、多くの人生を狂わせる死の運び屋として、屍を積み上げて、自分だけは悠々自適の人生を送るのでしょう。  カリフォルニアが困り切っている当時の現場トレーダーたちの倫理観や基本的人権などを全く顧みない無慈悲な会話に背筋が凍ります。そんな奴らの世界基準とやらの権利を認めてしまうと地獄を見るのは我々日本の高齢者や病気の人々です。  若い人たちも選挙に行かないなどという子供じみた態度を取るのではなく、労働者党とか、r