良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『血に飢えた白い砂浜』(1981)昔見た時には“ギャルまるかじり!”の副題もついていた。

 誰でも多感だった中高生の頃、テレビで何気なく見た映画で何だか知らないし、タイトルもはっきりと覚えてはいないが妙にインパクトが強く、何十年経っても脳裏に焼き付いている作品があるのではないか。  昔の12チャン映画はそういった得体が知れない、一癖も二癖もある作品ばかりでした。今回の記事にした『ブラッド・ビーチ』もそうした作品の一つです。  1200円程度のマニア向け廉価DVDを世に送り出す販売会社として支持を受けるフォワードがこの作品をリリースしたときにはすぐに買おうかなとも思いましたが、TSUTAYAさんやGEOがたぶん在庫してくれると信じ、購入を保留していました。  が、いつまで経っても、店舗に入荷しませんでしたので、今回の記事に合わせて、Amazonで取り寄せました。すぐに買わなかった理由の大部分を占めるのはこのフォワード社が販売してくるDVDの映像クオリティが希少価値はあるものの、あまりにも低すぎるからです。
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 1980年代末のCD黎明期にあちこちの会社がデジタルリマスターなど何もせずにただレコードを録音した、音がこもって、解像度が最低な廉価CDを出していたころのあの感じが映像で甦ります。  例えて言うと、ぼくらが大昔にエアチェックしたり、ダビングしたビデオを無理やりにDVD化する感じのレベルです。一応、アナログマスター使用と記載されてはいますので問題なしとしましょう。それでもぼくらには十分ありがたいのですから。  ビデオデッキをすでに捨ててしまった人も多いでしょうから、この会社がぼくらに代わってビデオをダビングしてくれているというのをイメージすれば良い。この感じでぜひともホラー映画の幻の名作、『シェラデコブレの幽霊』やら『ミュータント・フリークス』などもリリースしてほしいなあと思っています。  それはともあれ、この映画『ブラッドビーチ』を見たのは12チャンではなく、その他の曜日の洋画劇場枠(ゴールデン洋画劇場とか。)だったのではないかと記憶しています。放送時に録画して、あとでゆっくりと見るという発想自体が斬新で、ビデオですら持っている家庭が半分以下だったのが1980年代初頭でした。
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 放送当時はその番組の放送時間に一本一本の映画とは真剣に向き合わなければいけない時代でしたので、クズに当たったときの脱力感は今以上でした。そのため、少しでも良いところを探そうという鑑賞姿勢を醸成するには良い環境だったとも言えます。  そんなこんなを書いてきましたが、この作品のオリジナル・タイトルだけを聞いても、なんのことだか分からない人が大半でしょう。これならどうでしょうか。『血に飢えた白い砂浜』もしくは『謎の巨大生物!ギャルまるかじり!』、これが放送当時に付けられた邦題と副題です。
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 なんだこりゃ!?一気にいかがわしく成り果てるこのネーミング・センスのアホらしさにぼくら中二病患者は釣られてしまい、しっかりとテレビの前で未だ見ぬ強豪を待ち構えるのでした。  間違いなく、たった一回だけ、テレビの洋画劇場で見ただけなのになぜ30年以上も記憶に残っているのだろうか。あらためて今回は約三十年ぶりに『謎の巨大生物!ギャルまるかじり!』を見ました。
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 できればこういう作品は偉そうなDVDではなく、バカでかく、学校参考書のような重みがあるVHSビデオが最高なのですが、贅沢は言うまい。当時のぼくらはギャルまるかじりという言霊に惹かれ、ギャルまるかじり⇒水着シーンがいっぱい⇒おっぱいのサービスショットがあるに違いないという思春期的おバカ発想しかなかったと確信しています。  で、結果としてこのホラーでは6人の犠牲者が出ます(台詞では13人分のバラバラ死体がありますという鑑識の言葉があります。)が、内訳は婆さんひとり、オネエチャンふたり(うち一人は重傷、彼女をイメージしたのがジャケット。)、オッサン三人(そのうちひとりは強姦魔で彼はシンボルを喰われます。)、ラストシーンでの子供の失踪、そして犬一匹とギャルでかじられたのは二人だけだったのです。
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 お色気シーンとしては惨劇が起こる前の主人公カップルの部屋での夜の営みと脇役カップルの彼女が強姦されそうになる過程でのおっぱいポロリくらいです。せっかくの夏の砂浜を舞台にしているのにあまりにもお色気シーンが少ないのがB級にしては不満が残る。  この作品の素晴らしいところは低予算を逆手に取り、ギリギリまで砂浜を恐怖に陥れる怪物を出さずに、砂浜の一部がアリ地獄のように徐々に侵食されていく様子や怪物が腹いっぱいに喰らったあとの食べかす(つまりバラバラ死体)だけで怪物を表現したアイデアの効果を最大限に活かしたところでしょう。
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 実際に怪物が出てくるのはクライマックスの数分のみでその姿形はビオランテかマンモスフラワーみたいな植物でした。退治の仕方も適当で、ダイナマイトでドカンとやらかすだけで強制終了されます。  ただ爆発時に胞子が大量に吹き出していくので、たぶん終わらないのだろうなあと思っていると、案の定、あちこちのビーチで砂浜がサラサラと陥没していき、ラストシーンでは母親の問いかけを無視していた子供が行方不明になります。  怪物に関しては途中で一度、叫び声を上げながら、オッサンに襲いかかるシーンがあるのですが、あれはどこから発声していたのだろうかと冷静に振り返りましたが、当時はまったく気がつかなかった。  このてのホラー映画を観ていて、必ず不思議に思うのはこれだけの大惨事が地元の何もないローカルな地域で起こっている真っ最中なのにどうして地元のバカップルは人気のないところでセックスしたがったり、ひとりで危険そうな地域を探索したりするのかということです。
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 お約束なのでしょうが、ドリフのコントを見るような気持ちにさせられます。まあ、その辺も含めて、“あるべき”シーンをしっかり盛り込まないと映画マニアは納得しないだろうということなのでしょう。  薄暗い廃屋や夜中のビーチのシーンを多用するのは照明の問題やら、撮影許可やら、人気のない方が撮影に集中しやすそうなのだろうとか大人の事情があってのことでしょうが、低予算映画での怪物の撮り方が理に適っているので納得して見ていられます。  無意味でチープな特撮映像を無理やりにハメ込んでいくよりも見せ方に工夫を凝らして製作すれば、無限に可能性が広がることを示してくれる好事例ではないか。もっとも今の目で見ると凡庸に感じますが、当時はこれでも十分に楽しく見ていられました。
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 ちなみに出演者の中には『ロッキー』に出ていたバート・ヤングと『燃えよドラゴン』に出ていたジョン・サクソンが刑事役で出てきます。バート・ヤングはいつも通りの皮肉屋で上司の指示を無視してダイナマイトでドカンとやらかすのも彼でした。  ジョン・サクソンについては最初は気づかなかったのですが、どっかで見た顔だなあと思い出していましたが、ブルース・リーと出ていた奴だと気づくと急に親近感が湧いてきました。 総合評価 70点
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