『パワープレイ』(1978)ピーター・オトゥール出演の骨太クーデター映画。絶品です!
今回、TSUTAYAさんで借りてきた中でピカイチの作品でした。ぼくが見てきたピーター・オトゥールは『アラビアのロレンス』のイメージがあまりにも強すぎる。何を見ても、ロレンスを思い出してしまうので、正当に評価できない俳優さんです。
毎月、TSUTAYAさんの発掘コーナーを楽しみにしていて、最近ではアレハンドロ・ホドロフスキー監督のカルト作品群やイングマール・ベルイマン特集をやっていたりして、若い映画ファンを啓蒙していこうとしているのか、はたまた団塊世代にとっての懐かしの映画特集を組んで迎合しようとしているのかは分かりかねますが、結果として幅広いファン層の目に留まるのは良いことだと思います。
選ぶときは「ああ、ロレンスが出てるんだ~。」程度の興味しかない作品でしたが、作りがとても重厚で、正反対な作品ではありますが、ブロンソンが出ていた『特攻サンダーボルト作戦』を思い出しました。1970年代までの映画って、作り手の熱い思いがひしひしと伝わってくる隠れた一品が結構な割合で12チャンのお昼や深夜にやっていたものでしたが、今回の『パワープレイ』ももし放送していたら、間違いなく釘付けにされたであろう傑作映画です。
デヴィッド・ヘミングスが政権の腐敗に憤り、作戦立案する教授役のバリー・モースや戦車隊長のピーター・オトゥールらの同志たちと密かにクーデターを計画していく中で増えていく同志の数や憤りの高まり、周りで増えていく秘密警察による摘発と犠牲者への拷問を前半で描き、いざ実行していくうえでもしっかりと計画遂行の要点を淡々と押さえていく実行力の正確さに驚かされます。
素晴らしいのはクーデターに至るまでの秘密警察との暗闘や諜報戦の様子です。室内に仕掛けられた盗聴装置や電話回線の盗聴、反乱軍の中心人物と思われる教授の妻とオトゥールの密会の様子をカメラで捕え、それを教授に見せることで反乱分子を離間させようと謀る秘密警察の暗躍など細部にこだわりがあるのでリアルさが増していきます。
ただドンパチを始めるだけではなく、どの部隊のどの将校とどの幹線道路や空港を押さえ、どのメディアを占拠すれば、スムーズに作戦を進行させられるかをチェスの駒を配置していくように冷静に指示していく様子が臨場感があります。
さらにこれら盛り上がるシーンに説得力を持たせるのが本物のカナダ軍が全面協力をして描かれた市街戦と首都制圧のシーンの圧倒的な迫力です。見るべきシーンですし、ミリタリー・マニアならば、涙を流して喜びそうなシーンの連打です。
われらがピーターの役回りは反乱軍側の中心となる将校で、クライマックスの首相官邸襲撃までを一気に見せきります。そして最終局面では意外な結末が用意されています。砕氷船のテーゼを地で行く狡猾さと抜け目のなさはロレンスとは別人です。
刑場の露と消えるかつての上官や同志たちを尻目に自らは最高指導者の地位に駆け上がっていく様子は革命の本質を言い当てているように思えます。綺麗ごとを言ってはいても、しょせんは内部の権力闘争と自己保身及び野心が最重要なのだということが示されます。
おそらくB級映画として製作されたであろう今作品ではあります。大きな映画賞の栄誉を受けることはもちろんなく、DVD化が一段落着いた今日この頃になって、ようやく日の目を見たようです。40年以上、ひたすら映画を観てきたぼくらにもまだまだ見ていない傑作があることを教えてくれる良作です。
今年はあと何回、こういう楽しい思いをさせてくれる作品と巡り合えるだろうか。今後もTSUTAYAさんには期待していきたい。
来月は誰の映画を復刻させてくれるのか楽しみにTSUTAYA巡りを続けていきたい。まあ、サイトに行くと来月何かは分かるのですが、あえてそんなものは見ないで、行ったときに驚くが楽しいのです。
総合評価 88点