良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『マッドマックス 怒りのデスロード』(2015)30年ぶりに映画館で蘇るマックス(脇役)!?

 『マッドマックス/サンダードーム』が公開されたのは1985年で、ぼくはその頃高校生でした。バース・掛布・岡田がホームランを連発し、生まれてからはじめて阪神タイガースが優勝したのがこの年であり、アントニオ猪木が前年のハルク・ホーガンとの不可解な決着に続き、なんだか変な勝ち方でアンドレ・ザ・ジャイアントを下してIWGPを連覇し、尾崎豊の『17歳の地図』をみんなが聴いていたころでした。  この年は春に『砂の惑星/DUNE』、梅雨時に『ターミネーター』が公開され、両方とも観に行きました。そして夏ごろにこのマッド・マックスの続編が公開され、当時は当たり前だった同時上映作品になぜか『ポリス・アカデミー4』が組み合わされていたのを別段不思議に感じながらも、両方の作品を楽しんで観ていました。
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 あれから30年!なんだか綾小路公麿みたいですが、『北斗の拳』などにも強烈な影響を与えたであろうマッド・マックスの第4弾が遂に劇場に戻ってきました。残念ながら、初代マックスであるメル・ギブソンの再登板はなく、価値は激減してしまったのは大いに減点対象ではありますが、二代目マックスのトム・ハーディもそこそこ頑張っています。  ただ全編を通して見ていくと、監督のジョージ・ミラーもマックス役であるトムの弱さを認識しているからか、あえて女戦士のリーダーであるシャーリーズ・セロン丸刈りにした美女というのもなかなかイイもんです。)の活躍にフォーカスを当てていて、女戦士モノ、つまりフェミニズム映画(なのかな。)としての色彩が濃いように感じました。
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 すべての作品をテレビや映画館で観てきたファンとしては敵のラスボス役で、第一弾の『マッドマックス』では凶悪な暴走族幹部であるトーカッターを演じていたヒュー・キース=バーンがイモータン・ジョーとして復活している点は大きい。  ついでにジャイロ・キャプテンだったブルース・スペンスあたりもチョイ役(第三弾でも出演しています。)でもいいので出ていてくれたら、さらに興味深く楽しめたかもしれません。その他にはXメン・シリーズにエンジェル役で出ていたゾーイ・クラヴィッツとビースト役のニコラス・ホルトがいて、Xメンも好きな僕はなんだかうれしい。
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 今日から公開の『マッドマックス 怒りのデスロード』でジョージ・ミラーが何よりもぼくらに見せたかったのはド迫力のカー・チェイスだったのでしょう。マックス・マニア(まさにマッド・マックス)にはお馴染みのV8インターセプターを始動させるスーパー・チャージャー起動のアップを冒頭にかましてきます。  第二弾同様に物語世界の象徴的存在であるはずのV8ですが、今回も呆気なくやられてしまい、妙な形の改造車になってしまいます。すべての始まりである第一弾でのマックス・ロカタンスキーによる復讐劇の大活躍を知るファンからすると残念ではあります。
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 クライマックスのカー・チェイスで砂埃を巻き上げながら、逃亡する巨大トレーラーと彼らを追跡する武装集団の車列の引き画の構図は懐かしく、幸福感を観客に与えてくれます。 弾が不発なのを承知でブラフを効かせるくだりもいつか見たシーンです。  カー・マニアではないぼくでもこれほど盛り上がってしまうのですから、バイク・マニアや車が好きな人が見れば、さらに楽しめるのでしょうね。実際、シャーリーズ・セロンが目指した緑の大地の住人の生き残りたちは“鉄馬の女たち”と呼ばれていますので、この辺の言い回しはバイク・ファンの心をとらえて離さないのではないか。
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 車にはない風を切る感覚や空気や湿気、暑さ寒さをもろに身体に受ける感触、嫌なことがあっても、二輪にまたがり、風で洗い流せば、すべてが上手くいく。バイクでも自転車でも原付でも囲われていないあの感覚を忘れてしまった人にも見て欲しい。  さらに素晴らしいなと感じたのは驚くほどセリフが少なく、映像で物語を語る正統派の“映画”として製作されている点です。ジョージ・ミラー自身も製作時に意識していたのはアルフレッド・ヒッチコックの「日本人が字幕なしで理解できる映画を目指している。」という言葉だったそうで、サイレント映画に近い分かりやすさを心掛けていたようです。
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 実際、カットの素早さは疾風怒濤であり、しかも理解しやすい工夫があるので、彼の試みはぼくら日本人の感性に響くのではないか。ほとんどのシーンが砂漠が舞台であり、スタッフ・ロールではケープタウンシドニーでの撮影クルーに分かれているようです。  砂漠以外のシーンとして存在するのはジョーの砦くらいです。生命の源である水があるのはイモータン・ジョーが支配する高台のみで、彼はここで資源を独り占めし、おこぼれを貧民が奪い合う。きれいな女は子供を産ませるために拉致し、産めなくなった女は搾乳機をつけられて母乳を高たんぱくドリンク製造機として使われる。人権など何もない世界です。
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 撮影は4か月程度で終了したようですが、紆余曲折があり、異常気象の影響でオーストラリアでの撮影が行き詰まり、実際に使われたのはナミビア共和国の砂漠地帯でした。雄大というよりは荒涼とした終末的なディストピアな世界観は今回も健在でした。  ほぼ二作目と三作目(マスター・ブラスターの設定を思い出してニヤついてしまうかもしれません。)の焼き直しですので、そこらへんを捕らえて、二番煎じに過ぎないと酷評する方もいるでしょう。しかしぼくらはマックス・シリーズの公開をリアルタイムで観てきた世代ですので、今回の新作公開は素直に嬉しい。
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 ゴジラ映画もそうですが、たとえ貶されても、ゴジラの新作がない世界よりも、毎年裏切られるかもという予想を立てつつも、東宝系列の劇場に駆けつける世界が良い。  マックスもそういう気持ちで接しているので、たとえメル・ギブソンが出ていないという致命的な欠点があるにせよ、いつまでもショーン・コネリーの幻影を追い求めない007マニアのように大人の鑑賞姿勢を持ち続けていたい。
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 観に行けば、間違いなくスカッとするアクション映画です。CGなどを極力使用しない、爆薬使 い放題の伝統的なオーストラリア映画の矜持を讃えましょう。カースタントでは一切CGを使っていないそうで、2台同時に横転するシーンなどは最近のアクション映画ではすべて特撮で処理されてしまうようなので、ハリウッドにはない生の迫力を楽しみましょう。  戦いを終えたマックスはいつものように束の間の仲間たちに別れも告げずに去って行く。あいかわらずクールな姿に痺れます。するとここまで見てきた観客はあることに気づくでしょう。 「あれ?マックスはトムで良いじゃないか!」、これが最後の感想です。つまり彼がマックスで正解だったということです。 総合評価 80点