良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『真夜中の処刑ゲーム』(1982)見た記憶はあったが、タイトルが思い出せなかった映画。

 本日は有休を取ったので、のんびりと映画でも観に行こうかと地元映画館のスケジュールをチェックしていましたが、ちょっと興味があったのは『マイ・インターン』『ミケランジェロ・プロジェクト』のみでした。  明日から九条シネヌーヴォで集中上映がスタートするヴェルナー・ヘルツォーク特集にも気持ちが向いていますが、九条まで観に行ける時間があるかどうかは分からない。せめて『ヴォイチェック』だけでも観たいなあ。  それでもせっかく週末をゆったり過ごせるわけですから、TSUTAYAの新入荷コーナーを見てきました。今月の発掘作品DVDコーナーにはちょうど新しいのが入荷してきていて、そのなかの数本を借りてきました。  借りてきたのは見たかったジョン・カーペンターダーク・スター』(なんと劇場オリジナル版とディレクターズ・カット版が一本に入っているマニア御用達にピッタリの一本。)となんだかよくわからないが、関西の深夜枠で見たような記憶がある『真夜中の処刑ゲーム』です。『ダーク・スター』はDVDを購入しようかと迷っていたところでしたので、ラッキーでした。
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 もともとはジョン・カーペンター目当てで借りてきたのですが、もう一本の『真夜中の処刑ゲーム』のほうを見た興奮が収まりません。なぜなら、うろ覚えなためにタイトルが思い出せなかった映画の一つだったからです。  見始めて何となく見た記憶があるなあと思いながら眺めていましたが、ゲイバーでの虐殺場面で「そうだ、これだ!」と一気に記憶がよみがえりました。  昨夜遅くの二時頃に見終った感想を書く前に、まずは最近よく行っているコーヒーショップに出向き、家飲み用に買ってきた一番お気に入りのケニアAAをいただいています。  ぼくはもともとコーヒー好きで、朝起きがけに一杯、会社に着いて一杯、お昼に一杯、夕方に一杯、そして夕食後に一杯と多い日には一日6杯くらいコーヒーを飲みます。  そんなに飲んで、夜に寝られますかと言われるが、カフェインの興奮効果よりも、ほっこりするリラックス効果の方が優位になるようで、全く問題ない。
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 好みとしてはどっしりした深みがあり、苦味と酸味がバランスが良いコロムビア・スプレモやコクがあって華やかで芳醇な味わいのグァテマラ・アンティグアが大好きです。  そんな僕でしたが、好きなタイプを知っていてくれるコーヒーショップでお店のお薦めということで最近はケニアの最高級ランクというAAをよくいただいております。  このコーヒーはコロムビアのような深煎りに耐えられるどっしりとしたガッツのあるボディを持ち、ほろ苦いなかに深い甘みと果実の香りを感じさせる素晴らしい味わいのコーヒーです。  近所というわけでもないので週に一回程度しか通えませんが、出来るだけ行くようにしています。三つ向こうの駅から移転してきていて、前よりは通いやすい。今日はこれもお薦めのインド産アラビカ・コーヒーのエメラルド・ハニーというのをいただきました。  これもかなり美味しいコーヒーです。最近はコンビニの脅威から店を守るため、コーヒー店も生き残りをかけて、いわゆるサード・ウェイヴと呼ばれる品種や産地、製法に徹底的にこだわった素晴らしいコーヒーを探し求めているようです。
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 どの業界にも金に物言わせて他業種の小さな市場に殴り込んでくる新自由主義規制緩和、株主の権利を言い立てて労働者を食い物にする輩(なんちゃらファンドとか、パ〇ナとか、楽〇のオーナーとかが消費者のためなどと出鱈目な嘘で我利をむさぼろうとごり押しする金の亡者。)が跋扈する嫌な世の中になってきています。  嫌な輩を横目に睨みながら、ゆったりしたあとはのんびりと平城京跡を歩き、近くのTSUTAYAさんまで何を借りようか思案しつつ、ウォーキングを楽しんでいました。  さて、『真夜中の処刑ゲーム』はどんな映画だったろうか。一言で表すと日ごろは気にもしていない治安と安全のありがたみをしみじみ味わう映画と言うことでしょうか。治安のありがたみということでは安保で騒ぎ立てる輩がなぜ中共の侵略行為にはなんのアクションも起こさないのかに大いなる疑問を持っています。  舞台はカナダで現場の警察官が一斉にストライキに入ったため、パトロールその他すべての警察活動(捜査できない管理者だけが署内に残っているのみで役に立たない。)が中断してしまい、住民たちは無法地帯と化した都会の中で不安な一夜を明かすというものです。
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 舞台装置は変わらないので分類上は現代劇ではありますが、警察がストでお休みという日本では考えにくい仮想世界でもあるのでバイオレンスSFに分類しても良いのかもしれない。ただし外国では彼らも労働者という括りのため、ストライキはあるようです。恐いなあ。  じっさい、ショートショート(短編小説)の第一人者で今は亡き星新一さんの作品にもたしか警察が無くなったらという仮想世界のお話がありました。すべての職業のありがたみを理解するために年一回休みがあり、たとえば警察の日ならば、その日はすべての国民は警察を当てにできない状態で、安全は自分で守り通さねばならないという趣旨のお話があったと記憶しています。  映画では警察が動かなくなった途端、治安は一気に悪化していく。日ごろは常識的には手を出せない人たちへの暴力行為がエスカレートしていきます。そこへ登場するのは自警団“NO(NEW ORDER)”を自称する知的レベルが低そうな30歳くらいの粗暴なおっさんたち(ジェフ・パスティル、リチャード・コリンズら。)です。  彼らはゲイバーへ乗り込んでいく前に家で準備をしていますが、何かまたよからぬことをしでかしそうなだんなを諫める奥さんに家庭内暴力を振るうシーンがあり、彼女が大切にしている陶磁器などをゲバ棒で殴りつけていく様子は暴力的で厭な感じです。
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 ここだけでなく、とにかく生理的にエグい描写の多い作品です。タバコをぷかぷか吹かして、吸い終わったら芝生でもどこでもお構いなしにポイ捨てします。いかにもと思われるような安酒(日本なら酎ハイとかなんでしょうね。)をあおりつつ、思い思いに武装しながら、スノッブな雰囲気のゲイバーに殴り込んでいく。  同性愛者たちをさんざんいたぶった挙句、誤ってバーテンダーを殺してしまった成功者とは思えないような服装の(つまりなんでも他人のせいにする欲求不満で低レベルの地元民のおっさん。)おっさんたちは自分たちの責任問題にうろたえて、彼らのボスに連絡を取る。  残った同性愛者たちを拘束した彼ら(どういうわけか、的確に身動きと声を封じている。これはのちに理由が分かる。)のもとへボス(ダグ・レノックス)が現われる。  彼は周りに大きな音(銃声)が漏れないようにクッションを消音に利用して、同性愛者たちを一撃で始末していくが、一人の青年に逃げられてしまう。手下たち4人に後を追わせるものの青年はなかなかに素早く、運動不足のオッサンたちは逃げ切られそうになるが、逃げ込んだ先を突き止めて、このゲイの青年(テリー=デヴィッド・デプレ)の引き渡しを求める。
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 逃げ込んだ先は盲人たちを保護している施設で、住人は主人公のトム・ナディーニと彼女のブレンダ・バジネット、そして隣室に住んでいるオタク青年のダリル・ハネイらです。暴力に怯えながらも青年を匿った彼らは結果として完全武装したNOの標的となってしまい、犠牲者も出してしまう。  ここで大活躍するのがオタク青年ダリルで彼は手製の武器や家電や薬品を駆使しながら、油断しきっているプロ的なマイルド・ヤンキーたちをひとりずつ撃退していく。ある者(オープニングで奥さんにDV行為をやってのけるおっさん。)はドアノブで感電死させられる。  ある者は洗面所の鏡の仕掛けを見抜けずに顔を出したとたんにスプレーで顔を焼かれ、ボーガンで喉元を撃ち抜かれて絶命する。ここで活躍するのが意外にも盲人で目が見えないジャック・ブラムです。不安に駆られた侵入者たちは同士討ちさえしてしまうほどの混乱に陥る。  赤外線センサーが使えるNO側ですが、もともと視力はないが、そのぶん聴覚が研ぎ澄まされているジャックがソナーの役目を果たし、部外者が何人で、どこから侵入してきているかを逐一報告するので、どんどん先回りして退治していくシーンは爽快です。
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 また彼ら住人を手前のビルから赤外線センサーつきのライフルで狙撃していた者はパイプに粘土とくぎや火薬を詰めて作られた自家製ロケット弾の攻撃を受け、顔や足など身体中に突起物が刺さり、瀕死の重傷を負う。  普通ならここで映画は朝日を迎えて、スト中止とともにめでたしめでたしとなり、黒幕だったボスが実は警察の偉いさんだったりするというところでオチがついて終わりそうですが、そうはなりません。  侵入者たちを全員(と住人たちは思っているので、一気に弛緩していきます。)倒したと安堵していると、あと一人残っていたボスが逆襲してきて、オタク青年(ダリル・ハネイ)を殺害し、彼女(ブレンダ・バジネット)も生着替えを覗かれた上にあやうく殺害されそうになる。  大活躍だったジャックも腹に銃弾を撃ち込まれ、重傷を負う。住人側リーダーのトム・ナビーニは意を決してボスがいる二階へ仕掛けていく。ブレンダもナイフを持っているので後からついていくが、トムとは別の部屋を探し出す。消したはずのアンプのボタンがついていることでボスの存在を確信した彼女はカーテンの後ろに隠れているボスを刺す。
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 あっけなく彼女にやられたボスの横では主人公と彼女が抱き合っているが、まだ死んではいなかったボスは最後の力を振り絞って隠し持っていた拳銃で狙いをつける。  そこへ今まで全く何もしなかったゲイの青年が辻褄合わせのように鉈で攻撃してボスを倒す。そもそもこいつが部屋に逃げ込んでこなかったら、何人も死ななくて済んだのにこいつのせいで部屋もボロボロですし、アパート中が死体だらけになっています。  夜が明け、悲惨な事態も収束に向かう。公園では目が見えない少女と若い母親がボール遊びをしている。ボールが飛んで行った先には警官がいて、彼らにボールを投げ返す。ただ彼の顔には何かが刺さったような傷跡がいっぱいなのです。
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 つまり、住人たちを狙撃していたのはスト決行中の警察官たちで、日ごろ快く思っていなかった同性愛者たちを襲っていたのは私服に着替えた警官だったという厭なオチがついてこの映画は終わります。  久しぶりに見ましたが、エグ味は健在で、厭な感じを味わえます。調べてみると放送したのは関西の深夜枠と関東ではわれらが相棒の東京12チャンネルでした。もうこのころは1982年ですから、テレビ東京という名前に変わっているのでしょうけど、さすがは12チャンと言えるセンスのある映画だと思います。  TSUTAYAさんの発掘映画コーナーに行ってみよう。何か見たかったら、このコーナーの作品群のどれかを取ってレジに並びましょう。一回見たら忘れないインパクトのある作品が多いので、若い人ほど必見ですよ。 総合評価 90点
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