『北京原人の逆襲』(1977)キングコングの便乗映画だったが、本家ギラーミンより楽しかった!
先日、韓国映画『大怪獣ヨンガリ』を記事にしたので今回は北朝鮮の金正日時代に製作された『プルサガリ 伝説の大怪獣』にするか、『北京原人の逆襲』にするかで迷い、後者を選びました。
お盆休みののんびりしているときには何も考えなくとも楽しめるこういう作品がぴったりです。夏バテの影響か、それともオリンピックで深夜までテレビを見ているの影響か翌朝は目覚めてもなんだか疲れていますし、夕方くらいに特に眠たくなってきます。
せっかく休みなのだからどこかに行ったり、アクティブに過ごすのも良いのでしょうが、まとまった休みは近場の温泉や自宅でゴロゴロすることのほうが贅沢な時間の使い方なのではないかと思うようになっています。
旅行に行く度に帰ってくる移動時間にグッタリしまい、なんだか疲れに行ったみたいで、自宅でのんびりしたときに「家が一番良いわ!!」となってしまいます。
そのため、今年は家から一時間程度で行ける県内の温泉にしようと思い立ち、車も使わずに地元駅から15分程度で着く信貴山にある温泉を選びました。
緑の山々が眺められる部屋か、大阪の夜景が見られる部屋があったようですが、別にビルや街並みの明かりなど見たくもないので、迷わずにゆったりとした山の景色を楽しめる部屋にしました。
昼時は油蝉、つくつくぼうしや小鳥、夕暮れと朝方には蜩が鳴いていて、とてものんびりとリラックスできます。畳敷きの部屋で新しい畳の香りも楽しみつつ、早朝・朝食後・夕方・晩御飯後・寝る前と身体がふやけそうになるまで温泉に入り倒しました。
普段とは違う時間を過ごしたいのでテレビをつけたくはなかったのですが、卓球の愛ちゃんや佳純ちゃんが出てくるのでついついオリンピックを見ていました。
メダルが取れてホッとしている彼女たちやメダリストを追い回すテレビ局には毎回違和感と嫌悪感が沸き上がります。一日何度も繰り返しVTRが流され、インタビューが流されるので、何をどう言うかも覚えてしまいます。
普段まったく注目することなどないのにこういう時だけにわか応援団化して知った風な感じ
で馴れ馴れしくアスリートに接する様子は気味が悪い。
各競技の日本選手権なども含めたマイナー・スポーツでもしっかりと放送するNHKやCSは良いとして、民放各局はスポーツを応援するならば、国内戦や海外戦などにも放送時間を割くべきでしょう。
だらだらしたときにはだらだらした映画が一番だろうとの結論に達して、温泉から帰ってきて、今だらだら見ているのが『北京原人の逆襲』です。
キングコングにインスパイアされた亜流映画は数あれど、じっさいに気軽に楽しめるのは少ないのではないか。クエンティン・タランティーノもこよなく愛する作品だそうですが、あの人は相当な変わり者なので万人受けする作品とは言い難い。
特撮映画が大好きなぼくは楽しく見ることが出来ましたが、こういうジャンルをバカにする人からすれば、ただの物好きにしか見えまい。ストーリー展開など関係ないとばかりにおバカなつながりで進んでいきます。
とにかく自分勝手で無茶苦茶な川口浩探検隊(昭和世代で水曜スペシャルを毎週見ていた人しか分かるまい。)のようで僕らを楽しませてくれる。
無責任なお金しか眼中にない中国人らしく、怪我をして動けなくなった現地人は問答無用で射殺し、主人公(ダニー・リー。こいつが一番アホで無責任。)はオッパイが発達した金髪原始ギャル(イヴリン・クラフト。幼少期に飛行機の墜落事故に遭い、アワン(北京原人)に育てられたのになぜか中国語をしゃべる。ヌード・シーンあり。)をすぐに食べてしまい、彼女の肉体を支配し、巨大な原人を見世物にするために言いなりに香港に連れてこさせる。
ご都合主義は徹底されていて、街に戻れば弟に寝取られた彼女と寄りを戻し、ほったらかしにされた原始ギャルをレイプしようとした興行師に怒りを大爆発させた北京原人に大暴れされ、多大な被害を与える元凶となる。
ストーリーが破綻してしまった後ではありますが、それらの不始末は円谷プロの派遣した有川貞昌や川北絋一ら優秀な特撮部隊が片を付け、非常に迫力がある都市破壊シーンを構築していきます。
前半からのストーリー展開の破綻は力業の特撮シークエンスによって救われる。無茶苦茶なのに勘所をしっかり押さえているために奇跡的に楽しい作品になっています。
ストーリー展開はいい加減ですし、無駄に(いやいや不可欠です!)お色気シーンが多いのもB級映画らしいし、都市破壊などの特撮シーンの素晴らしさは円谷スタッフが出向いているためよく出来ています。
都市破壊シーンの出来は渾身の仕上がりで、特撮映画が寂れていた当時の日本ではなかなか実力を発揮しずらい状況だったので特撮班は作品に集中できたのではないでしょうか。
ハチャメチャな展開が中盤まで続き、特撮部隊が頑張ったクライマックスになだれ込む中で、前半をすべて忘れてしまい、キングコングのお話、つまり高層ビルシークエンスに進み、お約束通りの集中砲火と転落があり、ヒロインを抱きかかえたまま、呆然と立ち尽くすむ無責任な主人公の引き画で終わる。
走馬灯のように思い出すのはアワン(大猿)の表情豊かな顔とイヴリンとは絶対に結ばれることはないが、常に彼女を思う深い心。良い男だぜ、アワン!
いいんだろうか、これで?
いいんです!
総合評価 60点