良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『メカゴジラの逆襲』(1975)新スターの大人気を最大限に利用せよ!

 前年の1974年に悪役スターとして新登場させたメカゴジラのカッコ良さが大好評だったためか、翌年の新作では続編となる『メカゴジラの逆襲』が公開されました。この作品の監督を務めた本多猪四郎にとっては遺作となってしまった訳ですが、これで良かったのだろうか。  今回、記事にするため久しぶりに見ましたが、オープニングで前作である『ゴジラ対メカゴジラ』のハイライトシーンがおそらく前年のメカゴジラの活躍を忘れてしまったであろうチビッ子のためにしっかり気味に流されます。
画像
 これを観ていて、ふと気付いたのはなんと前作でゴジラとタッグを組んでいたはずのブサイク怪獣キング・シーサーが全く写っていないということです。  本当に伊福部音楽が鳴り響く中、中野昭慶の大爆発が元気よく炸裂する中、ただのワンカットも彼は写っておらず、戦いはゴジラメカゴジラの一対一だったような印象を与える。つまりキング・シーサーはなかったことにしたいという東宝による思惑、もしくはミスディレクションだろうか。  出演者たちの一部は前作と重なっていて、平田昭彦大門正明、睦五郎、佐原健二らは前回同様、重要な役回りを演じています。こういうところをいい加減だと取るか、本多組最後の舞台と取るか。黒澤映画にも出演していた沢村いき雄が扮する使用人がとっても良い味を出しています。
画像
 これまでずっとゴジラ映画は量産されてきましたが、それらは対戦モノとしての興行が主流で、正式(?)な続編ははじめてでしょう。平成版ゴジラ1984年の『ゴジラ』から『ゴジラデストロイア』までが繋がっています。  メカゴジラはそれだけ期待されていたのでしょう。今回はコントロール室を破壊されてしまったことで指揮系統を失ったブラックホール第三惑星人も教訓を得たのか、ヒロイン藍とも子の成れの果てであるアンドロイドの体内にコントロール機能を有しています。藍とも子がメカゴジラを操縦するときに目が光る演出は薄気味悪く、なかなかイイ味を出しています。
画像
 機動性には優れていますし、まさか彼女が重要なユニットであるとは誰も想像できないという盲点ですので前回のような襲撃からは退避できます。その代わり、人の心を持ち、恋する心を佐々木勝彦に抱いた藍とも子は人間らしさを取り戻し、自決を選択する。  また前回はプライドが邪魔したためか、1対2のハンデキャップ戦でしたが、チタノサウルスという地味なパートナーとともに来日しました。ゴジラは孤立無援で戦うが防衛軍が屁のツッパリのような援護を行う。  見所は前回よりもパワーアップした全門一斉射撃とフォルムのデザイン変更、そして首狩りの儀式です。ただ新品ではなく、前回KOされて海中に沈んだメカゴジラをサルベージして、修理しただけです。それでも火力が増しているためか、一斉射撃時にはゴジラの背鰭に火が付き、燃え盛ります。捕まった佐々木も前回と同じく、ギリギリと縄を切り、コントロールルームを破壊する。
画像
 うん!?つまり前と同じで、前回新鮮だった全門一斉射撃などの見どころもすでにお約束になってしまい、驚きは薄れてしまいました。見たいものを見せるのは基本ですので致し方ないでしょうが、どこかモヤモヤが残ります。唯一オッと唸らせてくれたのは首をちぎられてもメカが攻撃を続行し、ゴジラと敵対するシーンです。  また新怪獣として登場するチタノサウルスはかなり地味で尻尾をブンブンと振り回すだけでとくに大技がない。なんだか天才バカボンに出てくるウナギイヌそっくりで笑ってしまう。
画像
 唯一の男の子たちの集中ポイントはアンドロイド藍とも子の修理シーンでのおっぱいポロリ(もちろん偽乳!)でしょうか。  ストーリーは人間とアンドロイドの悲恋など、前よりも大人っぽいくだりもあるのに、まとまりはいまいちで残念です。この作品以降、映画にメカゴジラが登場してくるまでに20年以上も待たなければいけませんでした。平成版では防衛軍側の最新兵器として登場し、対G兵器の代名詞のようになり、釈由美子が操縦することもありました。  ラストシーンでは一人寂しく、夕暮れの海に消えていくゴジラの後姿が何とも言えず物悲しい。まるで自分の時代が終わりを告げたのかを悟ったかのように伊福部昭の寂しい雰囲気の調べとともにスクリーンから去って行きます。綺麗なラストシーンなので、目に焼き付けておきたい。 総合評価 55点