良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『ゴジラ対メカゴジラ』(1974)後期昭和ゴジラ映画が生み出した新たなる希望、メカゴジラ!

 沖縄の伝統衣装を身に纏うベルベラ・リーンが踊っている最中に予知夢(白昼夢!?)で見たイメージは何故か紙芝居風にどこかの都会を破壊して火の海にするキングギドラでした。  はて?この作品には最後まで観ても、日本特撮界最大の悪役スター、黄金に輝くキングギドラは出てこないので、今でもなぜこんな夢なのかが分かりません。それはともかく、期待を裏切られ続けたゴジラ映画ファンの期待感が広がるのが爆発とともに浮かび上がってくるタイトルです。  アンギラスとなぜか血みどろの戦いを繰り広げるゴジラ(ちょっとだけアンギラスの攻撃によりキラリと光る。)に違和感がありましたが、最初はなんでこんなに顔がデカイんだということによるビジュアルへの不満でした。
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 見ていくうちにこれは偽者であり、この偽ゴジラこそがメタリックに輝く、昭和後期G映画のスター、メカゴジラだからどこか違うのだと言い聞かせました。しかしゴジラ同士の戦いが始まるとどっちも大顔だったのでガッカリしました。  G同士の対戦中に片方の皮膚が剥がれると白銀の中身が顔を出してきます。本編では沖縄返還後すぐだったためか、やたらと反日なジイサンが出てきて、ゴジラに本土を襲うようけしかけるが、いざ自分たちのテリトリーが侵されると、途端に来るなと騒ぎ立てる節操のなさが情けない。  シーサーの置物を巡って繰り広げられる睦五郎と岸田森という昭和の怪優同士が盛り上げる怪しげなスパイ大作戦のような設定が印象深い。
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 夜明け前の暗がりのフェリーのデッキで音もなく大門正明田島令子を襲撃し、岸田森に狙撃されてゴリラ(獣人ゴリラ男みたい。)のような正体を晒して果てるさまは強烈な印象が残っています。ついでにヒロインとして登場する田島令子はとても綺麗で、エイリアンの基地で高温サウナで汗だくで悶える様子は色っぽい。  またもうひとりのヒロインであるベルベラ・リーンについても触れねばなりません。ジェット・ジャガー、ミニラ、ガバラとともに昭和ゴジラ映画で忌み嫌われるキャラクターであるキング・シーサーと惰眠を貪る彼を無理矢理に起こすために披露される歌謡曲『ミヤラビの祈り』のグダグダの破壊力により、この映画の完成度はかなり下押しされてしまっている。  せっかくスマッシュ・ヒットと言えるイケメンなニュー・スターであるメカゴジラを登場させているのになんてことなのだろう。せっかくヘドラ以来の強力なライバルが現れて、電磁波を身に纏う妖術を使えるようになるなど必死に対策を考えて決戦に挑むゴジラがいるのになんということだろう。
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 せっかく様式美としか言いようがないほどテレジェニックメカゴジラの全門一斉射撃がぶちかまされるのにどうしたものだろう。前にゴジラ、後ろにキングシーサーと逆方向に敵と対面しても、首を真後ろに回せる機械仕掛けのメカゴジラは両面作戦が取れるという驚異的な対応を見せてくれます。このシーンは子供のころ見た時も印象的でした。  キング・シーサーと「しーさー! しーさー! しーさー! きんぐぅしーさあー」となぜか大昔からの伝承されたはずの歌なのに英語であるキングが入っている不可思議の前ではメカゴジラのカッコ良さも色褪せてしまい、全門一斉射撃を持ってしても、ストーリー展開のデタラメさを吹き飛ばすまでには行きません。
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 特撮は中野昭慶が取り仕切り、川北絋一が手助けしているのであちこちで大爆発が起こり、特撮ファンとしては楽しく見れますし、光学処理をビシビシ気持ち良く使いまくるメカゴジラの集中砲火が霞んでしまうダサダサなキャラクターを出すのは意味不明ですが、東宝スタッフの沖縄観光巡りは歴史的な資料としては有意義だと言えます。  首をクルクル回してバリアを張る斬新さ、昭和ゴジラ映画で唯一首をもがれる悪役としての最期のクライマックスは美しい。背後に回ったゴジラにギリギリと首を捻じ曲げられて、最終的に首を落とされるという残酷な破壊のされ方は子供向きとは言えない。
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 映画はゴジラが主役ではありますが、人気が沸騰したのは悪役スターのメカゴジラであり、その証拠として翌年の1975年には『メカゴジラの逆襲』という悪役が主役とも思えるタイトル作品が製作される。  平成になっても何本もメカゴジラ映画が製作される訳ですから、待望の新スター誕生だったのは間違いない。ぼくも小さいころメカゴジラの塩ビ人形を持っていました。ついでに一番好きだったキングギドラも。子供はカッコいいものをしっかりと見抜きます。
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総合評価 65点