良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(2019)怪獣バトルロイヤル開幕!

 マイケル・ドハティという監督は知りませんでしたが、出来上がった作品を見れば、はっきり理解できるのが彼の東宝ゴジラ・シリーズへの愛情の深さです。脚本がその要因ではありますが、昭和シリーズだけではなく、平成シリーズもしっかりと観続けてきたのかなあという日本のマニアならばニヤニヤする構図がやたらと多い。  オリジナルの『ゴジラ』『空の大怪獣 ラドン』『モスラ』『三大怪獣 地球最大の作戦』『怪獣大戦争』『ゴジラ対エビラ 南海の大決闘』『ゴジラデストロイア』『ゴジラキングギドラ』『ゴジラモスラ』などのアイデアがあちこちに出てきますので、多くのG映画を見てきた人には楽しめる内容です。ただそれはあくまでも特撮シーンに関してのことです。  あまりにもオマージュが多く、すべてを把握するのはDVDが発売されてからになるでしょうが、劇場で観ていると大画面に映し出される東宝怪獣たちに胸が熱くなります。ただ今回の作品は夜間や深海での登場シーンが多いので、かなり暗闇で蠢くので、家で見ると小さすぎて解りづらいかもしれません。
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 キングギドラのコードネームがモンスターゼロというだけで嬉しくなってしまうゴジラ好きとしては本編部分の出来がしっかりと作り込まれていたならば、さらに高く評価したいところです。それでも日本のゴジラファンならば、細かいことは気にせずに特撮を大いに楽しみたい。  どうせなら、次回はキングギドラを送り込んできた宇宙人、もちろんX星人を登場させてもらい、ユニフォームもあの当時のクラシック系ユニフォームを復活させてほしい。  さて、問題なのがタイタンたちを引き立てるために必要な本編部分です。ここがしっかりしていると作品は締まり、名作が誕生しやすくなります。主な出演者と本編の軸はカイル・チャンドラーヴェラ・ファーミガの夫婦及び娘役のミリー・ボビー・ブラウンです。この作品での最大のモンスターは母親でマッド・サイエンティスト役のヴェラ・ファーミガでしょう。
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 ハリウッド映画なので、安っぽい家族愛を描くのは構わないが、彼女の意味不明の理屈を利用した環境テロリスト役のチャールズ・ダンス一味のために目覚めたタイタン(怪獣のことです。モンスターと言うより、こっちのほうがカッコイイ!)の本能に任せた動きによって、軍人さんはじめ、多くの人命が犠牲となり、地球は世界規模で危機に瀕してしまいます。  前半で別離する家族でしたが、後半では取ってつけたような家族愛(?)の復活が描かれるが、彼らの自己満足の裏で、地球規模で資産が破壊され、瓦礫の山が出来上がる。その瓦礫の下には当然ながら、多くの逃げ遅れた人々の遺体があるわけですから、見えない部分にも注目すべきでしょう。
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 ゴジラ映画としては『シン・ゴジラ』(2016)以来ですので3年ぶりとなります。ただし、パラレル・ワールドである、ハリウッド映画版としてならば、ギャレス・エドワーズが監督した『GODZILLA ゴジラ』が今回の映画世界なので2014年以来です。  さらに『キングコング:髑髏島の巨神』(2017)のエンドロール後に東宝系怪獣たちの勇姿をチラッと姿を見せてくれたきりでしたので特撮ファンにとっては満を持しての登場ではあります。  相変わらず、不必要な中国系キャストがわんさかと無意味に出て来る様に閉口させられますが、英語をきちんと喋ることが出来ない日本人俳優にも大いに問題があります。映画全体を見回すと中国人とオスプレイばかりが目立っています。オスプレイを多数着艦させられる大飛行空母の登場はマニアには喜ばしいが、ぜひとも名称はスーパーXにしてほしい。
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 今回ガッカリさせられたのは唯一の日本人として重要な役柄を任された渡辺謙海底遺跡で無駄に死なせてしまったことでしょう。あの場面で誰か一人を決死隊(雨上がりではない。宮迫も現在、危機一髪っぽい。)として選ぶに際し、なんの脈絡もなく、軍人ではない彼を当てる意味が分かりません。誰も手を挙げない中国人や軍人の沈黙には普通に疑問が生まれます。  まあ、オリジナルの芹沢博士もゴジラに向かって、独りで特攻していき、始末をつける役柄でしたので、映画的には良い役なのかもしれません。  あれだけたくさん中国人がいるのだから、チャン・ツィイー(彼女は双子の姉妹の設定なのだから、どっちかが特攻すればいい!)でも良いじゃないか。また地球規模の災難を巻き起こした科学者一家の原因となったオバハンはキングギドラの反重力光線を浴びて車ごと吹き飛ばされているのに何故か生き残っているように見える。
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 めちゃくちゃです。そもそも、あれだけボコボコにゴジラキングギドラの攻撃を受けたボストンの街なかを車で走り回るのは無理でしょうし、雨中、キングギドラに踏み潰されたはずのオルカを日曜大工みたいに速攻で修理するのも難しい。そんなに簡単ならば、すぐにコピーできるでしょう。中国人もたくさんいるしね!  今回のゴジラの造形はえらくムキムキで首が異常に太く、総合格闘技向きのベストな体型のハイブリッドな感じのゴジラに仕上がっています。好き好きあるでしょうが、文句は言うまい。  ヴェラは科学者として重大な災厄を招いた主犯なので、銃殺刑か、懲役2800年くらいが相応しい。ラスト・シーンも噴飯物で、キングギドラを倒して、ゼェゼェ言っているゴジラの前にクモンガやら巨大なマンモスみたいな地球怪獣(タイタン)たちが集まってきて恭順の意思を示すという、まるでライオン・キングのお披露目みたいでした。
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 思わず「ディズニーかよ!」と館内の座席からズリ落ちそうになるか、無駄に高い3Dメガネがずり下がりそうになる展開が待っていました。エンドロールではタイタンたちが如何に地球環境に良い変化をもたらすかという取ってつけたような記述が続きます。  そして最後には暗躍するチャールズ・ダンスらの環境テロリスト一味がゴジラに倒されたキングギドラの死骸の首を買い取るところで幕が降ろされます。昭和のころ、ギドラの首には各々おそ松くんみたいに名前が付けられていて、一郎、次郎、三郎(だったかな?)の操演を別々の人がしていたそうですが、今回のはCGなのでしょう。
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 まだまだ続編をたくさん作るよというメッセージが映画製作者の意志として示されます。どんどんご都合主義が蔓延して映画は終わりました。渡辺謙がいなくなり、日本のスターはゴジラキングギドララドンモスラたちのみの出演になりそうです。  都合が良いのは彼らは本編の俳優と違って、離婚もしないし、薬物乱用しても捕まらない。また英語を喋れなくとも問題がないことでしょうが、いずれスパイダーマンか、アベンジャーズのアライグマとX星で共演するかもしれません。まあ、ゴジラ映画のない未来より、ゴジラ映画のある未来のほうが良いので文句は言うまい。  次回のサマー・ファイト・シリーズではおそらくアメリカン・スターのキングコングとの戦いになるのでしょうが、コングになんらかのドーピングを施さないとパワーが桁違いなので、たぶんテロリスト一味が一服盛るのは間違いないでしょう。 総合評価 62点