良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『ローグ・ワン』(2016)イウォークの二の舞を避けよ!スターウォーズのスピンオフ再始動!

 結局、ぼくら映画マニアは製作サイドに良いようにあしらわれてしまうようで、年末の忙しい時期ではあるものの無理矢理に休みを取って、近くのシネコンにやって来ました。  お目当てはスターウォーズ・シリーズ第4弾のスピンオフとなる『ローグ・ワン』です。第4弾?そうです。TV映画ではありますが、『イウォーク・アドベンチャー』『エンドア/魔空の妖精』『スターウォーズ・ホリデー・スペシャル』という黒歴史スターウォーズにはあります。  イウォークがらみの二作品はビデオでも発売されていましたが、ホリデー・スペシャルはいまだにお蔵入りしています。ただYouTube等の動画チャンネルでも視聴は可能ですので、たっぷりと時間があり、体力がある方はご覧ください。  今回の『ローグ・ワン』はかなり前から劇場の予告編で上映されていたので知らないわけではありませんでしたが、心のなかでは「なんでもありだなあ…」「『イウォーク・アドベンチャー』の惨劇を忘れたのか!?」などのネガティブな感情を抱きつつの鑑賞になりました。
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 時間軸的にはプリークウェル最終章である『スターウォーズ エピソードⅢ/シスの復讐』とオリジナル『スターウォーズ』、つまり今ではエピソードⅣと呼ばれるわれらの映画の間ですからベイダー卿が誕生してからルークらが反乱軍に加わる頃までをカバーする感じでしょうか。  もっともエピソード3.5というよりはエピソード3.1から3.89くらいの時間軸でしょうか。予告編を観ていた限りではベイダー卿やストーム・トゥルーパー、AT-ACT(輸送型)、AT-STなども登場していたので限りなくエピソード4に近いのでしょう。  今回の主人公もエピソード7と同じく女性キャラになっていますが、フェミニズム目線を気にしているようなハリウッドの相変わらずのゴマスリにウンザリします。  戦争やゲリラを描くのだから、じっさいに戦場に出る男たちを描くべきであり、迎合する必要性はあまりないのではないか。それともいつまでもSFから卒業できないぼくらボンクラ中年が嫁や彼女から「いいトシをしていつまでマンガ見ているの(怒)」とお叱りを受けたときでも、「いやいや。主人公は女だし、単純なSFではない!!」と逃げを打つときに必要だから、その出汁に使うためか。
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 そんなこんなを考えつつ、ロビーでチケットを購入しようとしていたら、受付のおねえちゃんが「誕生月ではありませんか?」と声を掛けてくれたので、「今月ですよ。」と答えたところ、誕生月割引になるとのことでかなり格安になりました。  お昼に食事したときも「映画のチケットはありませんか?」と聞かれ、「ありますよ。」と答えると割引になりました。ショッピング・モール万歳ですね。  色々考えたり、ちょっと得しながら、上映を待っているとルーカス・フィルムのロゴと“FAR FAR AWAY”の字幕が出てきて、気持ち的には「よし!集中するぞ!」と力んだ次の瞬間、すぐに入れた力のやり場に困りました。  なんと、ジョン・ウィリアムスのオリジナル・テーマが掛からず、いきなりストーリーが始まってしまったのです。どうなっているのだという不安が出てきましたが、映画は僕らの感情など気にも留めずにどんどん進んでいきます。
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 ストーリー展開はマニアを黙らせるだけの検証を行っているのは明らかで、繋がりに破綻はありません。また登場するキャラクターにもマニアを喜ばせるスポットがいくつもあります。さすがは分かっている監督、ギャレス・エドワーズです。彼はゴジラのハリウッド版も撮った人ですから、期待できます。  エピソードⅣに出てくるドクター・エヴァザン(ルークに「おれは12の星系から死刑を言い渡されているんだぞ!」と凄むエイリアン)とポンダ・バーバ(セイウチみたいな方。)が輩みたいにウロウロしていたのは笑ってしまいました。  モフ・ターキン(ピーター・カッシング。死んだはずだよ、ピーターさん。CG?)、レイア(キャリー・フィッシャー。若い。CG?なんか気持ち悪い!)、オーガナ将軍、モン・モスマなどは初期三部作を見た人ならば、ニヤリとするでしょう。C-3POとR2-D2の凸凹コンビも登場します。ベイダーの声はどうやったのだろう?  ストーリーとしてはエピソードⅣの作戦会議時に「この設計図を得るために多くの犠牲があった…」とモン・モスマが悲しむ台詞がありますが、彼女のセリフを広げに広げて作り上げたのをはっきりと理解出来るでしょう。すべてはこのセリフに繋がっていきます。
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 映像としては帝国軍基地に侵入した反乱軍の特攻志願部隊である“ローグ・ワン”の面々が自らの死と引き換えにデス・スターの設計図データを艦隊に送信し、ディスクにコピーしたものをベイダー卿の手に渡らないように手渡しリレーを行う。  反乱軍旗艦に乗り移る時の白兵戦で、真っ暗な艦内で、帝国軍ストーム・トゥルーパーたちの陣頭に立ち、真っ赤なライトセーバーをブンブン振り回しつつ、反乱軍ゲリラをぶった切り、暗黒面を使ってブン投げまくるド迫力の殺陣はさすがは我らがベイダー卿(基本的に仰角かつ暗闇で蠢く!)ですので、在りし日の姿を目に焼き付けるべく、マニアならば映画館で観るべきです。  そして最終的にCG?レイアの乗る宇宙船に届けていくまでを描く。映画館でアップで写る姿は最初は後姿でしたが、まさかの顔面アップがあり、表情が不自然で、かなり薄気味悪い。  モン・モスマの言うようにこの作戦に参加したデス・スターの設計責任者ゲイレン・アーソ(マッツ・ミケルセン)の娘で主人公のジン(フェリシティ・ジョーンズ)を始め、彼女を助けるディエゴ・ルナ座頭市みたいな中国人(ドニー・イェン座頭市をやるなら、日本人俳優を使えよ!)、ドロイドK-2SOなど全員が玉砕します。  こういうのは最近の娯楽作品ではなかなかお目にかかれないので、演出としては大人向けです。ジンとディエゴはデス・スターの設計図ファイルの暗号“スターダスト”を読み解き、パイロット(ボーディ・ルック)の協力を得てデータを送信しますが、帝国軍との戦いで重傷を負い、抱き合いながら、デス・スターの攻撃による衝撃波で光の中に飲み込まれて果てます。
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 出来上がりは期待していたよりもかなり素晴らしく、十分に見る価値があります。とりあえずは『ファントム・メナス』のような失望はありません。観客は平日お昼で60%程度埋まっていたので、まあまあの滑り出しではないか。  メカで気になったのは帝国軍兵器が見掛け倒しで弱すぎるのではというのと同じく、戦艦であるはずのスター・デストロイヤーがチャチに見えるのは何故だろうということです。  殺陣のシーンで疑問だったのが、盲目のジェダイ信者(つまりジェダイではない。)ドニ―の使い方で、ジェダイならとにかく、そうではない彼がジェダイの呪文を唱えながら特攻を仕掛けていくと、無能で何も考えていないトゥルーパーの弾がまったく当たらないという下りには萎えてしまう。  ゴチャゴチャ言わずにマニアならば、映画館に急ごう!間違いなく、『ファントム・メナス』よりは良いから。ただ、残念ながら、ヒロインはナタリー・ポートマンの方が数倍以上に綺麗です。 総合評価 75点