良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『SING』(2017)お話の内容よりもサントラが素晴らしい。!?

 『SING』はユニバーサル製作(ピクサーだと思っていましたので、オープニングに地球一回転のユニバーサルの曲がかかったのでビックリ)の音楽満載のアニメで個人的な感想としては話題だったミュージカル『ラ・ラ・ランド』よりも楽しめました。  まあ、ミュージカルが苦手なので良い悪いではありません。今回の吹替え版では長澤まさみMISIA(頑張りすぎ!!)らが頑張っているようですが、基本的に字幕版を見るので今回もそちらを選択するつもりでした。  しかしながら、家族客に的を絞る姑息な戦略のためか、どこも字幕版を上映していないので吹き替え版の鑑賞になりました。たぶん心理学に詳しい人が見るならば、動物ごとにキャラクターの意味などを述べられるのでしょうが、ぼくらはあまりそちら方面は解らないので素直に楽しみましょう。  熊は慎重、雄牛は強気、ブタは貪欲という意味がありますが、ここではどうなのだろう。雰囲気的にはロック・ミュージカルの名作『ブルース・ブラザース』の楽しさをマイルドにした感じか、『ダンボ』的なコンプレックス昇華ムービー、もしくはみんなで協力すればなんでもできるさ的な無責任ポジティブ型でしょうか。
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 コアラ支配人(マシュー・マコノヒ―)が主役のようですが、キャラクターに深みがないのは残念でした。日頃の主婦生活から解放されたリース・ウィザースプーンのブタの主婦やゴリラギャング団のジョニー、長澤まさみちゃんやスカーレット・ヨハンソンが声を当てたアッシュなど掘り下げれば魅力が出そうなキャラクターは他にもいましたが、まるでダンボの象の少女(ミーナ。日本版はMISIA)だけが目立っています。  名曲揃いの歌のラインナップで誤魔化されそうになりますが、表層的な取り上げ方はもったいない。エンドロールではさっそく続編が製作されることを宣伝していましたが、キャラクターの深堀りがないと厳しいかもしれない。  先月末から仕事が忙しく、なかなか更新できませんでしたが、ようやく一息つけそうなので、しばらく来れなかった映画館に再び通えそうです。『SING』と『キングコング髑髏島の巨神』の2本を見たかったので上映スケジュールを調べ、無理矢理に遣り繰りしています。  吹き替え版はやっていても、3Dはやっていても、僕が観たいのは通常字幕版なのです。これがなかなか上映されず、キワモノとしか思わない3Dとオリジナルの良さを多くの場合で損なう吹き替え版しかやっていない。
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 今回は吹き替え版も悪くはなかったのですが、せっかくオリジナルキャストが歌っている英語ナンバーを無理やりに邦訳した歌詞を歌わせるのは好きではない。  これだったら、DVDが出るまで待っても良いかなあとも感じる。しかし、これまで声優としても活躍してきたまさみちゃんがやるのならば大丈夫だろうと思い、映画館までやってきました。  知り合いの女の子が吹き替え版を観てきたそうで、「観に行きました?」と尋ねられましたが、「まだだよ。」と答えると行くべきだとプッシュされました。  お話の展開としては引っ込み思案の象の少女のコンプレックスやハリネズミの少女の失恋の痛みを歌の才能で昇華していく王道の展開ですのでファミリー層が安心して観に行ける観客動員狙いの作品で、ソーセージとホットドッグ満載の下ネタアニメ映画『ソーセージ・パーティ』とはかなり目指すところは違います。  どっちが楽しいかと言われれば、ソーセージですし、じっさいホットドッグを食べてからの鑑賞ですが、そこらへんは気にせずに劇場でホットドッグを頬張りながら、まさみちゃんの声を聴いていました。
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 劇中に掛かるポップ・ミュージックが優れていましたが、そっちの力の方が映像の力よりも強い印象がありました。言わずと知れたビートルズ『ゴールデン・スランバー(オープニングとラストに掛かる)』『キャリー・ザット・ウェイト』に繋がるアビー・ロードのメドレーには選曲の良さに唸りました。  リース・ウィザースプーンとニック・クロールが歌うテイラー・スウィフトの『シェイク・イット・オフ(家庭教師のトライのCMで有名)』、ニック・クロールがオーディションで歌うレディ・ガガの『バッド・ロマンス』も楽しい。  今では渡辺直美の曲(まるで布袋の『スリル』が江頭のテーマになってしまったような感じ)のようなビヨンセ『クレイジー・イン・ラヴ』、CMでもよく使われているカーリー・レイ・ジェプセンの『コール・ミー・メイビー』、ヴァン・ヘイレン『ジャンプ(メンバー同士が仲違いして分裂してしまうおまけ付きwww)』には笑うしかない。  スーパーのBGMでかかるシンディ・ローパーの『トゥルー・カラー』に覚醒してから、ブタの主婦ロザーナが吹っ切れたように踊り出すジプシー・キングス『バンボレイヨ』、シナトラみたいなねずみマイク(どうせなら、フランキーで良いのに)の『マイ・ウェイ』や『テイク・ファイブ』、懐かしの『ギブ・サム・ラヴィング』も良い味出しています。
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 突然入ってくる、ねこちゃんたちのきゃりーぱみゅぱみゅ『きらきら・キラー』や『にんじゃりばんばん』『こいこいこい』も楽しい映像です。最近クイーンとデヴィッド・ボウイがコラボした『アンダー・プレッシャー』も聴く機会が多い。  歌唱シーンで一番盛り上がるのはさきほどの『シェイク・イット・オフ』、ミーナのバラード、そしてピアノをステージの中央に置いてゴリラギャングのジョニーが熱唱するエルトン・ジョンの1983年のスマッシュ・ヒット『アイム・スティル・スタンディング』(歌うのはタロン・エガートン)でした。  このナンバーは発売された時にはそれほど大ヒットしたわけではありませんでしたが、エルトン・ジョンは今でもライブで歌うナンバーです。  映画オリジナル楽曲の『セット・イット・オール・フリー』を歌うスカーレット・ヨハンソン(日本語版では長澤まさみ。両者ともに上手くてビックリします!)などかなり楽しく聴いていました。  ジャズの名曲やヴィヴァルディの『四季』などクラシックまで幅広くフューチャーした楽曲は合計で80曲以上に及ぶほどなので、すべてが分かる人は少ないでしょう。
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 主な声優はマシュー・マコノヒー(コアラのバスター・ムーン キートンかい!)、リース・ウィザースプーン(ブタの主婦ロジータ)、セス・マクファーレン(ねずみのマイク)、スカーレット・ヨハンソンハリネズミのアッシュ 日本版は長澤まさみ)、ジョン・C・ライリー(キングコングにも出ていたねえ。 エディ)です。  たぶん続編が作られるほどですから、ユニーバーサル・スタジオにグッズが溢れる日も近いでしょう。もちろんアトラクションとして観客参加ののど自慢大会が盛大に行われるはずだ。夏は特に納涼のど自慢大会を開き、浴衣を着てきたら、二割引きとかやれば、受けるでしょう。  お話の内容自体は浅く、先が読める展開ですが、映画を彩る音楽が魅力たっぷりですので、洋楽ファンならば楽しめます。海外DVDはすでに発売されていますので、フリフリをお持ちの方は見られるでしょう。  映画の見どころとしては予算がないコアラ支配人のイカたちを発光させてステージ演出に使うというアイデアとそれが原因で起こる劇場崩壊シーンでの猛烈な水槽決壊シーンでしょう。発光イカはエンディングでも用いられ、なかなかにファンキーな仕上がりになっています。 総合評価 70点