良い映画を褒める会since2005

他ブログで映画記事や音楽記事も書いておりました。評価基準は演出20点演技20点脚本20点音楽10点環境10点印象20点の合計100点です。

『知られざる大陸』(1957)知られざる特撮映画。実は拾い物!

 特撮映画は好きなので、かなり見てきましたが、当たり前ですが、知らないものも多数あります。先日、Googleの画像検索で特撮画像をいろいろ見ていたところ、「おや!?これは見たことないなあ…」と気になるモノクロ画像がありました。  興味が出てきたので探っていくと製作は1957年で、タイトルは『The Land Unknown』でした。邦訳も直球の『知られざる大陸』と同じでした。タイトル共々あまり知られていない作品に興味が沸き、Amazonで在庫していることが分かったので、ついつい衝動買いをしました。  似たようなタイトルで、1948年製作の『Unknown Island』というのがあり、邦題は『ジュラシック・アイランド』という身も蓋もない、というかプライドもない便乗としか思えない情けないタイトルで発売されています。中身は知りませんが、機会があれば見てみたい。  ついでに言うと今回、購入した『知られざる大陸』の裏ジャケットにはなぜか“ジュラシック・アイランド”というフレーズが印刷されていました。全く意味が分かりませんでしたが、発売側は客が間違えて買うことを希望していたのでしょうか。
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 お話の中身としてはいわゆる秘境モノで、あまり詳しくは知られていないというか、ほとんど誰も行っていなかった頃の冒険の地であった南極の未開の奥地には実は火山に囲まれた温暖なオアシスがあり、そこを調査していくとまさかのジュラシック・ワールドが存在していたという特撮映画の王道のネタフリが楽しい。  ただ製作は1957年なので、上空を翼竜が楽しそうに飛んでいたり、20メートル以上の大きさの恐竜たちが大きな歩幅で闊歩していれば、さすがに発見されているでしょう。  冒頭に南極を探検したアムンゼンの偉業を讃えたり、当時のフィルムを流したりするのは歴史にも触れていて、仮想現実世界にリアルさを加える部分などは良く出来ています。  探検に行った4人(ひとりはブロンド美人?)の隊員たちの葛藤やラブロマンス、先に消息を絶ったはずの科学者が孤独にサバイバルを行い、生き延びていたりするくだりがあり、作品世界の説明に彼を上手く使っています。
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 ちょっとずつ影や動きで出てくる恐竜たちやヒロインの背後から忍び寄ってくるトリフィドやワイアール星人のような怪奇植物に嬉しくなってきます。志村けんがお化けコントに挑むときの客席からの「しむら!うしろ~!」という声援を思い出します。  映画としての出来は良く、モノクロ独特の光と影のバランスが映画を盛り上げる。ちょこちょこピアノ線が映りこんでいますが、そういうのもご愛敬だと割り切って見ましょう。  観客が見たいものを焦らしながら少しずつ見せていく、いわゆるサスペンス手法は現在では時代遅れと言われるでしょうが、何でも過激にサービスてんこ盛りで見せつけられても、こちらはすぐに飽きてくるし、慣れてしまう。そのへんは製作が1950年代なので、王道の見せ方をしています。  この映画に登場する恐竜はティラノサウルス(着ぐるみ)、水棲首長恐竜(伝説の怪獣オゴポゴみたいです!出来が良く、一番薄気味悪い。実際の特撮部分では彼が主役)、移動する怪奇植物(トリフィドみたい)、翼竜(操作性の問題なのか、あまり活躍しない)、そして合成映像で使用されたイグアナ(巨大生物の島みたい)とさまざまな特撮でのクリーチャーの表現が試されていてとても興味深い。
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 ティラノサウルスの出来はゴジラに比べると艶めかしさはなく、バランスを保ちながら、なんとか歩いている感じなのですが、口がしっかりと開いたり、目もちゃんとまばたきしたりと精いっぱいやっているのは理解出来るし、良い仕事をしてくれています。  人間を追いかけるにしても、一応は恐竜と人間の視線のアングルを意識したような構図になっていますし、合成も良く出来ている方ですので、そう不満を持つ人もいないでしょう。  動かし方にも工夫があり、最大の見せ場の一つである水棲恐竜との戦いはスリリングで、ボートに乗っていると水面に泡がブクブク漂ってきたのちに、大きな首が水中から顔を出してくる様子はけっこう恐い。  一度目と二度目は人間が突き出してくる火への恐れから引っ込んでいくが、三度目の戦いでは火を避けるようにボートの真下に潜り込み、ボートを転覆させるという知恵を示す。
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 意外に活躍する怪奇植物は女好きなのか、物語をつなぐために困った時の動かしやすさからでしょうが、何度もヒロインを食べようとしますが、自力で逃げたり、男どもが助けたり、メガネザルが犠牲になったりします。  人間たちに狩猟用の根っこだか、触手だかよく分からない器官を切り刻まれたりしながらも性懲りもなく、襲撃を繰り返す映りたがりのキャラクターでした。  着ぐるみだけでなく、本物のイグアナ同士が戦っている様子(一匹がやられるまでやりますが、どうやったのだろう?)と人間たちを合成して同じ空間に存在するように構成しています。イグアナが演技しているように見えるのがなかなか楽しい。  今後も知られざる佳作を追いかけて行きたい。まだまだ埋もれている(ただ自分が知らないだけww)モノもあるようですので、終わりのない旅になるでしょう。 総合評価 70点
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